15話 新たな発見

 僕が図書館に行くと本の散乱が凄まじかった。

まあ、図書館なんてリリスぐらいしか使ってないから人はいないし問題ないんだろうけど。

「ここだー、ユウ」

50mくらい先の方から声がきこえてきた。

遠っ! 一体どれだけの時間、リリスは研究しているんだろう。崩壊した本の山々を通り過ぎるとリリスが地べたに座りながら本を読んでいた。

「きたか、遅いぞ」

リリスは振り返る事なく僕に言った。

この人は背中に目でもついているのか。

本棚は……魔法植物コーナーと書いてあった。

「すみません、遅れました」

「ああ、聞いてくれよ。魔法で促進できないなら、食物でできないかと考えたんだ」

「なるほど、そのほうが副作用を気にしないですむかもしれませんね」

……怪しい草とか薬じゃなければいいけど。

この世界の人は麻薬を知らないのかな。そういえばこの世界で一度もそういった話は聞いたことがない。

「ただ、やはり羞恥に関する植物は見つからなかった」

「じゃあ、なんで僕を呼んだんですか」

「それはこの前の続きを……ではなく、おい!なぜ後ずさりをする!」

「い、いえ。まさか図書館でいたすとは思っておりませんよ? 続きをどうぞ」

「品種改良だ。そして、植物部の生徒を呼んである」

「呼んであるってまだ来てないですよ」

「召喚魔法で呼ぶって話をつけてある。では呼ぶぞ」

そんないきなりでいいのかな、と思ったけどどうなんだろう。

呪文短縮であっさり召喚するリリス。

突然、煙が巻き上がり、僕はむせる。

「な、なんだこの匂い。土くさい?」

その煙が消えたら、エプロン姿の少女が現れた。金髪の三つ編みに、エメラルドグリーンの目で、土が顔に少しかかっているのすら可愛く見えた。

「もーリリスさん。呼ぶときはテレパシーするっていったじゃないですか」

「そういうな、ガーベラ。文句があるならこのユウに言え」

「どうして、僕が文句を受け持つんですか」

「この方はユユユユユウさんとおっしゃるので?」

「はい、ユウ=ニコールと申します。宜しくお願いします」

「あ、あの私……。ガーベラ=ヴァーナントと申します。こ、これ」

そういってガーベラさんはどぎまぎしながら花を僕の前に出す。

「こ、これは?」

「が、ガーベラです。私と同じ名前なので是非受け取ってください!」

「あっ、は、はい。ありがとうございます」

なんだろうこのドキドキ。今までのとは違うドキドキだ。

「は、花言葉は友愛なんですよ、

ガーベラさんは顔を紅くしながらも笑顔で土まみれの顔を見せる。

「ひまわり、みたいですね」

「ひまわり!? ああっユウさん」

ガーベラさんはその場で倒れ込み、身震いしてる。

「あの、僕何かいいました?」

「ユウ、なんてことを。見損なったぞ!」

「ちょ、え? 僕なんかしました?」

ガーベラさんはまだ、座り込んだままだし、リリスは怒り出すしわけがわからない。

「ひまわりだよ!」

リリスはお笑い芸人のようなキレ方をする。

「ひまわり? ガーベラさんはひまわりみたいですね……って普通じゃありません?」

「全く、庭師に向かってひまわりだねっていったら、今日は月が綺麗ですねって言うのと同じだぞ」

「今日は月が綺麗ですね……ってええ!?僕そんな出会い頭に告白なんてしないですよ」

「お前がそのつもりがないとか関係ない。今目の前で、ガーベラが告白されたというのが事実だ」

「そ、そんな。僕どうしたら……取り消してもらうほうが」

「それは止めろ。ガーベラが今後協力してくれなくなったら困る」

「僕に嘘をつき続けろと?」

「見ての通りガーベラは乙女なんだ。私の数少ない友達を傷つけたらユウを許さないぞ」

「マジですか……」

「ああ、本気だ」

いきなり大変なことに巻き込まれてしまったぞ。ガーベラさんが可愛いことは抜きにしても、いきなり不本意な告白をした事にしてしまって大丈夫なのか、今後……。

ほら、声かけてやれ、とリリスの目が訴えてくる。

「ガーベラさん」

「は、はひっ。ユウ様」

僕は驚いているガーベラさんの手を握る。

「失礼しますね」

ガーベラさんを起こしてあげると

小さく会釈して「ありがとうございます」と言った。

ガーベラさんが紅潮した顔でぼーっと僕の顔を見ている……何か気まずい。

「リリス会長、これからどうするんですか」

気まずい空気なので早く話を進めたいと思いリリスに話題を振ると、

一瞬だけほくそ笑んでいたずらっぽい顔をする。

早くどうにかしてくれと言いたげな僕の困っている顔を見て、納得したのか

リリスは口を開いた。

「ガーベラには、これから魔法植物を創ってもらう。もちろん、羞恥心を煽る植物だ」

「それは羞恥魔法とは違うんですか」

「魔法と違って自然由来だから副作用の危険が少ない」

「毒はないんですか」

「そのために専門家のガーベラを呼んだんだ」

「はいっ、私に任せてください、ユウ様、ガーベラと呼んでください」

様呼びは固定なんだ……。

「わかった、ガーベラ。いやでも、さすがに羞恥を煽る植物なんてないんじゃ……」

「それがですね、なくはないんですわ、ユウ様。

なんでも昔、媚薬を作ろうと研究した魔法使いが、トロケ花というのを燻して作ったという伝説がありまして」

「伝説……ですか。なんか臭いますね」

「え! 私匂います? 土臭いですか! おかしいな、肥料撒きは今日してないしドクダミを摘んでもいないですし」

「いやいや、そうじゃなくて、伝説というところに反応したんですよ。うさんくさいなって」

「あーよかった」

「それに、ガーベラからは甘くていい匂いがするよ」

「あっ……」

ガーベラは顔を赤らめて突然黙るようにみえる。

「それじゃあ二択だな。そのノロケ花を入手しにいくか、作るか」

「伝説なのに探しにいってそんな見つかるもんなんですか」

「その道はさすがに君たちも大変だろうと思って、ガーベラに作ってもらおうって話だ」

「……そうですね、さすがに無いですよ。

途方もない有るのかないのかわからない花を探して、気がつけばおじいちゃんとかおばあちゃんですよ」

「ああ、おじいちゃんとおばあちゃんになるまで一緒になれるんですか、ばたんきゅー」

ガーベラが倒れてしまった。ライフがゼロなのかな。

「ガーベラ、大丈夫ですか?」

「……そっとしておいてやれ。こんなやつだが、植物魔法学校から来たエリートなんだ。あの学校は希少な植物の情報から、植物の掛け合わせによる品種改良の情報から、将来誕生する植物もわかる未来植物機関のような役割があってな、ガーベラは首席なんだよ」

「それはすごい」

「ただし、非常に純粋で乙女で繊細だ。男子も少ない学校なので男には不慣れだしな。幼馴染としてはちょうどいい機会だと思ったんだが。この状態じゃ無理か」

「大丈夫よ、リリー! 私に任せて。お花のことなら私がユウさんに教えるから」

「それで僕は何をしたらいいんですか」

「ああ、それはだな……」























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