第10話 魔女召喚祭1
「そうだ、曲がりなりにも学校だからな。生徒が学校ボイコットしていようがな」
「お祭り騒ぎが好きな連中は、この時期学校に帰ってきますもんね」
「そうだな、アイツももしかしたら帰ってくるかもしれない」
「アイツ……?」
「ああ、いやなんでもない」
「それで今年はどうするんですか、魔女召喚祭は」
「勿論、やるとも。この魔法学校の先代の偉大な方を敬意を示したお祭りだぞ、私の死後、あの世で責め立てられては困る」
大魔女召喚祭とは、歴代の偉大な魔女を一時的に蘇らせるお祭りで、五大魔女がお祭りを盛り上げてくれるものだ。なんでも学校の守り神なんだっけか。
「あの人たち、なんか苦手なんですよね」
「ユウ書記は気に入られてたじゃないか」
「勘弁してくださいよ、魅了魔法でイタズラされただけです。今年は、なにか僕が魔法をかけられても、会長が守ってくださいよ」
去年は、その魔法でレーニア=スカーレットが僕を……。ああ、考えたくもない。
「ふふ、勿論だよ」
「ほんと、まじで頼みますよ」
「本当に本気で頼まれよう、私でなんとかなる話ならな。なにせ、この学校を危機から救った五大魔女だからな」
「いやあ、死ぬ気で守ってくださいよ。拘束魔法で
僕をどこかにワープさせてください」
「偉大な方々の前で、そんな不躾なこともできない」
歴史上では、五大魔女が魔法獣から救ったとされているが、この学校にその面影はない。
入り口に銅像が飾られているだけで、あとは教科書に少し載っている程度だけなのだ。
あとはこの召喚祭でお会いする程度のはずで、接点はないはずなのに、
いきなり目をつけられるとは。もしかして、僕がユウではないことが見抜かれてるのかな。いや、まさかな。
「まあ、ユウ書記がこの生徒会の書記だということで可愛がられているのだろう」
「可愛がるというより揶揄って楽しんでるようにしかみえないんですが」
「ふふふ、高貴な魔女は
「遠まわしに自賛してきましたね?」
「ふふ、さてね」
「というか、書記書記っていつも僕のこと役職名で呼びますよね」
「それは君が会長と呼ぶのだから私が君を書記というのは自然だろう」
「……そう言われるとそうなんですけど!」
「じゃあ恋人の様にユウくんっとでも呼んでほしいのか。小さいつがあるのがポイントだ」
「それいいですね、呼ばれたいです」
「それなら私の名前も呼び捨てしてもらわないとな、リリスと」
「あーうううう……」
もどかしくて声にでない声がでた。
「ほら、言ってみるがいいリリスと、リリス=クラヴィアでも良いぞ」
「リ……リリ……ス会長」
「ふふ、会長とつけたら意味がないだろう。リリスと呼ぶんだ」
「り、リリス……さん……さんづけで勘弁してください」
「ま、それぐらいが限界か、じゃ私はユウくんと呼ぶか」
「そ、それは嬉しいような恥ずかしいような」
「冗談だ、ユウ。これからもよろしくな」
「は、はい。リリス……会長」
「ははは、まだ慣れないな」
余裕なリリス会長に僕はかないっこない。
人生を運よくやり直ししている僕にそんな余裕はない。
「それで、召喚祭の段取りはどうなってるんですか」
「私が五大魔女を召喚する、それだけだが」
「特別ななにかは必要ないんですか?」
「ユウは何も気にしなくていい、歴代の会長が代々受け取ってきたバレッタは魔力を増幅する性質があってな、多少の無茶はきくものなんだ」
「へえ、でもよく誰かに盗まれたりしなかったですね。歴代魔女五人を召喚できるほどの魔力って」
「いわくつき、だからかもな」
「い、いわくとは?」
「付けた者は懐妊する、と言われてる」
「懐妊って……子供を産む……でしたっけ」
「そうだな」
「えええ、呪いのアイテムじゃないですか、どんな子供を身ごもるんですか」
「さあ、わからん。だが噂のようなものだ」
「会長は信じてないんですか」
「そんな噂のようなもの信じないよ」
「そうですか」
「だが、産めなくなってしまうかもな、そのときは、ユウに責任をとってもらおう」
「えええ、それは困りますよ」
「バカだな、冗談にきまってるだろ。ユウはすぐに引っかかるから面白いな」
そういってリリス会長は僕の顎をなぞる。
会長の子供とか絶対恐ろしいイメージしかわかないぞ。僕は子供にもいじられてしまうのだろうか。
「とはいっても当日はサポート頼むぞ。私の魔力にも限界がある」
「僕に頼むより、他の生徒会役員に頼んだほうがいいですよ」
「三名欠員に、諜報役のヒカリに頼むわけにはいかない。それにユウの力は評価しているよ、書記という役職以上にな」
「会長……」
僕のことはどう思っているのだろう。
「例年通り、魔女召喚祭を明日の日没行う。雨天決行だからな」
当日、やっぱり学校は賑わっていた。
普段学校に来ないやつも、お祭りテンションで、みんなスマイル。不登校組も無欠席組もワイワイ騒ぐ。
「ユウくん、ユウくん」
隣から声かけてくるのは、やはりハイテンションの二宮アーシアだった。
「に、二宮さん何かな」
「アーシアって呼んでよ。前みたいに」
「じゃ、じゃあアーシアは僕に何か用?」
「あの、召喚祭は誰かと過ごすとか決まってます?」
「ううん、生徒会の仕事なら入るかもしれないけど」
「あのですねー、あのですねー。召喚祭の最中に、恋の魔法使いヴィヴィの祀られた社で一緒にお参りしてほしいんです」
「え、ヴィヴィ本人がいないのに?」
「ヴィヴィは召喚祭中、祠に化粧水を置いていくそうです。その化粧水をふりかけると、どんな相手とでもお付き合いできるらしいです」
確かにヴィヴィは恋紅の魔法使いと言われてるぐらいだからご利益はありそうだけど。
「そんな勝手なことしてヴィヴィは怒らないのかな」
「どうでしょう。召喚祭で受かれてるから気づかないらしいです」
まあ、確かに狭い祠に祀られてたらたまには羽を伸ばしに外に出たいと思うのかもしれないけど。
女の子が恋愛の言い伝えを好きなのは知ってたけど、まぁ予定もない……しいいか。ふと思わぬ人達が出てくるかもしれないと思ったけど、気にしないようにしよう。
「じゃあいいよ」
「わーい、よかった」
アーシアのキャラクターが壊れてる気がするけど
、最初のあの控えめの性格とは雲泥の差だ。
自信をつけたという事で、これはこれでいいのかな。
僕はこれでいいのか?
他の女の子に誘われたらどうするんだ?
ミルルに誘われたら、会長に誘われたら?
……断れるのか? 断れない気がする。
そして放課後、僕は明日の準備の為、学校の校庭に召喚印を書く仕事を手伝われた。滅茶苦茶しんどかった。やっぱり会長は魔女だ。
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