第9話 報告したい症候群

昨日の整体のおかげで今日の寝起きは最高だった。

その流れもあり、久々に、生徒会室で一人モーニング。コーヒー片手に、勉強をしていた。

もうこの流れも標準装備だなと思っていたら、

ドアがギィイイイドタンという強い音を立てたので驚いた。このドアの開け方は、ヒカリだ。

ちなみに、会長は、静かに正確にドアを開け閉めするという感じ。

「どうしたの?こんな朝早くから」

「あー朝からティータイムずるいですー。私にもくださいよー」

僕の質問スルーされたああああ。

「お湯なら沸いてるよ」

「ユウさん、いれてくださいよ」

ちょっと面倒だな、と正直思ったけど、ヒカリと話す機会もないし、たまにはいいか。

「あ、いま面倒くさいなーって思ったでしょ、わかるんですからねー!」

「そ、そんなこと思ってないよ、思うはずがないじゃないか」

「本当かなー」

僕の顔をじぃっとうかがってくるヒカリ。

こうしてみると、容姿は可愛いんだけどなー、口を開くと残念だなと思う。あなたの周りにもこんな人いるよね……って僕は一人で何をいってるんだか。

「ほら、僕のいれたコーヒー。会長が会費で買ってきてるからわりといい豆だと思うよ」

「ああああああ」

いきなり大声をあげるヒカリ。

「かいちょ、会長はどこにいるかわかります?」

「いま思い出したのかよ。いや、きてないよ。まだこんな時間だし」

「ああそうですかー、いや約束してたんですよ。ちょっと頼まれごとをしてまして」

ヒカリに頼むということは、大体極秘クラスの情報だ。彼女のネットワークは凄まじい。追跡系魔法を極めてるのか聞いたことがあるけど秘密らしい。

「会長がヒカリに頼むってことは野暮なんだろうね」

「それはいつものことですよ」

ヒカリは身体を揺らしていきなり落ち着かなくなってきた。

「ちょ、ちょどうしたの」

「依頼人に早く情報伝えないと落ち着かないんですよ、あああああ」

ヒカリはいきなり奇声をあげる。

「いや、いつもヒカリは落ち着きないぞ」

「あああ、落ち着かない」

椅子の上で 腰を振ってるようにみえる。

「ちょっとヒカリ。その動きはやばいだろ」

「やばいってなんですかああああ」

ヒカリは椅子の上でガタガタギシギシと音を鳴らす。

「いや落ち着けよ」

「無理ですー、職業病なんですー、ユウさんが止めてくださいよー」

いや、止めるっていったって。

仕方ないから、さすってみるか。

「ちょっと背中あたりさわるぞ」

「はい、おねがいしますー」

背後からみると、お尻がうごいててさらに凄いなこれ。黄色のパンツが丸見えだった。

それを見ない様にして、ヒカリの背中をさする。

さすさすさすさす。

「ううん、あまり効果ないですううう、前もさすってくださいー」

そういってヒカリは僕のほうに身体をむける。

腰は相変わらずグラインドしたままだ。

「前って……どこ?」

ヒカリが胸やら腰やらを揺らしてる中、どこをさするのが正解なんだ?

「お、お腹あたり……」

「お、お腹ね、よしわかった」

手を伸ばしてお腹に触ろうとして胸を掴んでしまう。むにゅうという感触が右手に伝わる。

「あんっ」

ヒカリの身体が跳ねた。

「わわ、ごめん」

「ちょっと、どこ触ってるのよ」

は、早く会長きてくれー。

「き、気を取り直して、今度こそお腹触るよ」

すりすりさすさすとヒカリのお腹をさする。

「ああ、ああああっ」

ヒカリは目を潤ませて喘ぐ。

胸触ってるのと変わらない気がするぞ。

「あーんはあっ、落ち着くぅ」

「落ち着いてる人の声じゃねえよ! 変な声だしてるじゃないか」

マジレスでツッコミをいれてしまう。

「はあっはあっ」

ヒカリは汗を流しながら顔を赤くしてる。

これはもしかして、会長の陰謀なのでは?

ふと僕は感じた。

気づかれてしまったか、その通りだよ。

拘束される紅い鎖が現れ、その先に会長はいた。

「ご苦労様、ユウ書記」

「か、かいちょお」

僕は情けない声を出して会長にこの状況を伝える。

ヒカリは、疲れてるのか肩で息をして、床にへたれこんでいる。

「いやー、すまないね、二人とも。私としたことが遅刻してしまうとは。思ったよりも収穫があってな。とりあえずヒカリとの用事をすませてしまおうか」

「はい、会長。ユウさんがいますけどよろしいのですか」

まだ、ヒカリはおぼつかない足取りで立ち上がる。

「ああ。構わないよ。どうせいつか知られることだしな」

「そうですかー!では気合いれて報告します!」

スイッチの入ったいつものヒカリだ。

「うむ」

「ナバーゾは生きてます。ユウさんにかけたのは記憶系の魔法ではなく、何か全く別のもの、といいますか」

「なんだ、魔法じゃないのか? となると魔法薬か、なにかの衝撃で頭をうったとか」

「そういった類でもなく、わかった事は、この世、この星のものではない何かです」

「それは何かの謎なぞなのか。興味深いな」

「ユウさんとナバーゾが抗争したと思われる場所、

謎の物質が付着していて解析した結果、魔法でも行き来不可能な観測惑星の物質らしいんです」

「じゃあユウが戦っていたのは魔法使いじゃないということか」

「その可能性が高いですね」

元のユウはとんでもない化け物と戦っていたらしい。ユウが撃退する前に僕がこの世界に来ていたら死んでたんじゃないだろうか。そう思うと恐ろしい。さ、サンキューだ、ユウ。願わくば僕の世界で楽しくやっていてほしい。

「しかし、魔法使いでないから魔法を使えないとは限らないだろう? こうしてユウが記憶喪失になっているのに、でなければこのユウの状態はなんというのか」

「しかし、魔法が使える条件は感情を持っている事で、あえて魔法を使わないという理由もこの世界の人間であればありえない話です」

「確かにそうなのだが、何かあるな」

「引き続き調査はします!それでは私はそろそろいきますー!」

すっかりヒカリはいつものヒカリに戻ったようで、走って生徒会室を出て行った。

「会長ー知ってたんですか?」

「なにをだい?」

「とぼけないでくださいよー、ヒカリのあの癖ですよ」

「ああ、勿論知っていたよ、おかげでデーターがとれたよ」

「またテストしてたんですか」

「確認が必要だったからだよ」

「どうせまた羞恥魔法とか使ったんでしょ」

「いいや、今回は使ってないんだ」

「んーそれはつまりどういうことでしょうか」

「一度、私はなぜ魔法終末期を迎えてしまったのか。と考えたことがあるんだ。

そのときに私は魔法のなんらかの作用で脳が退化した結果、生殖面に異常を及ぼしたと考えていたんだ」

「それはつまり、ヒカリは元からある羞恥の部分が今回は出たから、人類は脳が退化して生殖のやる気を無くしたわけではないということですか?」

「察しがよくて助かる。今回の場合ヒカリは、本能の羞恥で起きたことだ。

つまりわざわざ羞恥魔法をかけるリスクも必要ないかもしれない」

「んーでも、この世界の人類全体相手にどうしろっていうんですか」

「ユウはすぐ催促するんじゃない。その話はまた今度だ。学校の行事が近づいてるのは知ってるのか」

「ああっ!忘れてました。ここは学校でしたね」

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