第8章 優しく整体します?

生徒出席率50パーセント。それがこの学校の生徒である。正直、この世界でこの出席率は高いほうなのだが、僕にはガラガラに空いてるようにみえる。

そしてミランダ先生の魔法史はいつも眠くなる。

なぜかは、わからない、だけども微睡む。

「魔法剣士アークは、こうしてシェーダを倒し、新世界をもたらしました」

アークさんぱねっす、という言葉を聞いたまま僕は気を失う。やっぱり、魔法は実技がいいです、と腕まくらしたまま目を閉じている。会長は、こんな授業のようなことは全部掌握してそうだ。

「はーい、じゃあ。机とキスしてるユウ君」

やべ……寝てるのばれた。

「は、はい!」

「私とも親密な関係になってね。それじゃ、魔法剣士アークはどんな魔法でシェーダーを倒しましたか」

満面の笑みでミランダ先生は僕を睨みつけられてる様だ。

「ら、落雷魔法ですよね」

「そうです、落雷魔法ショートに気を狂わせて自害した、とされてます、寝てるようで聞いてるのね」

いえ、隣の席のアーシアが小声で囁いて教えてくれたとはいえない。

「アーシア、ありがとう」

「ううん、でもいつかお返ししてね」

アーシアはウィンクして言ってくる。

「はは、ほどほどにね」

「んー、たっぷりサービスしてほしいですね」

ここ、最近でだいぶ、女性に構いすぎな気がする。

僕の身体は悲鳴をあげていた。腰あたりに。

まだ、おじいちゃんじゃないんだけどな。

それだけ、会長が僕に無茶ぶりをしてくるってことなんだよな。

整体魔法の店ってのが確か、 商店街にあったから行ってみるかな。この若さで整体とかいくものなのか。


放課後に、ベール商店街を訪れた。

この商店街は50店舗を超えるお店が乱立している。つまりデカい。

魔法植物、魔法ペットショップ、魔法道場、魔法占い、魔法靴屋、魔法ほうき屋、あげてたらキリがない。職人気質な人達が多い街らしい。ここの人達は、この人類滅亡の危機でさえ、変わらず営業している。素晴らしい職人魂だ。

魔法整体店はどこだーっと、歩き見渡すと魔法喫茶ミリスの隣にあった。魔法整体店ハピナス。

人だかりができるほど混んでるけど、予約済みだから問題なくお店に入る。

「いらっしゃいませ、ご予約のかたですか」

軽やかでにこやかな声でそれだけでヒーリング効果があるんじゃないかって思う白い装束に身を包む整体師さんだった。

髪を後ろに束ね、胸は大きい、ミルル以上に大きいんじゃないのか。それでいて、くびれてお尻も大きい、素晴らしいラインです。この人にこれから整体されちゃうのか。

「ユウです」

「はい、ユウ=ニコールさんですね、お待ちしていましたよ」

はい、僕もあなたと会えることを待っていましたよ、とわけのわからないことを呟く。

「施術室までどうぞ」

と言われ、優しく奥に導かれていく。

特殊な魔法が施されているのか、もう商店街の賑やかな音は聞こえなくなっていた。

施術室は、木のベッドが置かれていた。

「このベッドは、きりに加工魔法をかけられてるのでふわふわしますよ、ごろんとしてください」

施術師さんの柔らかい声に導かれて寝かされる。導かれすぎだが、この整体師さんが

あまりに導き上手なので仕方ない。気が付けばすでに癒されてる感じがする、施術前なのに。この整体師さん素晴らしい。

「あの、整体師さん、お名前は?」

「ユーリカ=エクテンフロスといいます」

「ユーリカさんかぁ、いい名前ですね」

「ふふ、ありがとうございます、うつ伏せになってくださいね」

ユーリカさんは、にこやかな表情でまたがる。

そして、僕の肩を優しくマッサージする。

「あ、あの、ここって整体なんじゃ」

「もちろん、そうですよ。でも魔法整体は、血管に魔法を注入するんです」

肩のさすり方やユーリカさんのリラックスのさせ方が妙に、くすぐったいような

それでいて気持ちいいような感覚になってくる。

ユーリカさんは、僕の肩を撫で回し、ちゅぷという音を立ててキスをする。

「くうっ」

変な声がでてしまい慌ててごめんと謝る。

「あ、大丈夫ですよ。皆さん気持ちよくなると声が出るのは普通なので」

僕は振り向きながらユーリカさんにいったときにうっとりした顔で蕩けた目をしていて、エッチなことをまた考えてしまう。

というかさっきから、足の部分がユーリカさんの柔らかい太ももと擦れて、ユーリカさんの感触が伝わってくる。

だけどどこか、血管が温かくなって気分が良くなってくる気がする。

うまく伝えられないけど、心の中に日光が差し込んだような感じもある。

「ふふ、効いてきましたね、でもまだまだ序の口ですよ」

ユーリカさんの表情や空気が変わった気がする。

これは、何かがくる!?

「マジックロープで縛りまーす、少し音が鳴りますけど大丈夫ですよー」

なるほど、魔法の強弱でロープで整体するんですねって

「いたたたたたたたたた」

「どうしても骨格を戻すから痛くなっちゃうの、ごめんね」

ぺろりとユーリカさんは自分の上唇を舐めた。

あれ、清楚でエンジェル風なユーリカさんだったのに、今はちょっとデビルな雰囲気が漂いつつありますよ。こっちが本性なんですか!

というかミシミシいってる、ミシミシ。

「あ、あの。これ、大丈夫、ですか?」

痛くて声を発するのもしんどい。

「はい、安心してください。安全のための魔法なので」

にこやかなスマイルがドエス発言に聞こえてくる。

だが、あえて、しかし。これは人によってはご褒美というやつではないか?

これはご褒美だ、ご褒美だ。そう思うことで苦痛から解放されるに違いない。

「痛いのは最初だけです。だんだんと気持ち良くなってきますよ」

ユーリカさんは声に合わせて、僕の腰と背中に手を当ててくる。

次の瞬間、ンボギギギギギギギギという音とともに、僕は解放された。

いろんなものから、万物すべての理を悟り、人はどうして生きるのか、その理由が

わかってしまった。

「終わりましたよー」

そういって背中をさすってくるユーリカさん。結構えっちな身体をしてるはずなのに、今は心も悟っている。

「あ、ありがとうございました」

そういって僕は立ち上がると、駆け巡る血行の快感に

「うおおお」

と声をあげてしまう。

身体が軽く、腰の痛みが終わるどころではない、重力が弱くなった空間にいるような感じになる。

「ふふふ、効いたみたいですね」

「はい!とてもいい感じです!」

これはいい。また来たくなる。

「これはサービスです」

首筋に温かい息となにかが触れる感覚が伝わる。

こ、これは、キスだ。

「マークがついている間は効果がありますからね」

ユーリカさん……惚れてしまいそうなくらいにいいです。

「あ、ありがとうございます」

「いえいえ、とんでもないです。このハピネス魔法整体店の合言葉は、予想外のサービスです」

「あ、サービスなんですね、これ」

「ふふふ」

ユーリカさんは「小声で違います、ユウ様だけです」とちょっとだけ恥ずかしそうに

言った。

僕はそれにドキドキしながらハピネスを去った。






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