第2話 それは大切な日々の1ページ

「ねえねえ〜 奏、今日の部活行く?」

終礼も終わり、放課後の始まりを告げるチャイムがなったとほぼ同タイミングで

話しかけてきた。

「ああ、今日は行くよ。」

「おけおけーじゃあ教室出たとこで待ってるねー」


彼女は僕と同じ読書部の部員の長野真衣《ながのまい》さん。

読書部と言っても長野さんと二人だけだ。

彼女も僕と同じく、

「静かな場所で本が読みたい」

と言う細やかな願いをもっていたこともあり、読書部を作ることになった。


「ごめん、遅くなった。」

「大丈夫だよー あ、部室の鍵借りてこなくちゃ」

「待たせちゃったの悪いし僕が借りに行くよ。」

「お、センキュー」

そんな会話をしていると、


「あの二人、絶対付き合ってるよねーw」

クラスの隅の方から僕たちを指差して言ってきた。

(ほんとに付き合ってないんだけど、、、)

僕が心の中でそう思った時、

「違うよーだ! ね、奏!」

長野さん、それ多分あんまり信憑性ないよ、、、

「まあ、付き合ってるとかじゃないね。はは、」

とりあえず愛想は振りまいてみたけど、、僕、笑い声乾きすぎだろ、、

「ま、そう言うことだから変な噂とか流すなよーー!」

「分かったよ真衣。ごめんねー」

彼女がクラスの友達と一連の会話をすませ、こっちに来て、一言こう言った。


「いこっか!」


彼女のその満面の笑みが僕にはとても眩しく思えた。


そして僕たちは部室に着き、今日もお互いたいして会話をするでもない、

時計の秒針が刻まれる音だけが響く部室で、静かに本を読むのだった。

こんな何気ない日常にこそ、僕は価値があるのだと、そう思った。





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