第5話 おさげの女の子

日が暮れ始める頃、虹太郎は図書室を後にした


初日ということもあり本は借りなかったが、蔵書数や参考書の種類などを確認し、収穫はそれなりにあったようだ


「さて…」


外履きに変えて家路に就こうとしたときだった


ポン…ポン…


「…ん?」


何かがぶつかるような音が規則的に聞こえて来るのに気が付く


耳を澄まさないと聞こえない音だったが、聞こえてしまうとそれはそれで気になるものだ


虹太郎は何気なしに音のする方角へ足を向けた


そこには


虹太郎「…第3グラウンド?」


フェンスに囲われたその入り口には、錆びたプレートで目的地の場所が書かれていた


峰応学園の高等部にはグラウンドが『3つ』ある


第1グラウンドは陸上のトラック


第2グラウンドはサッカーとテニスのコートがある


しかし、第3グラウンドはグラウンドというより空き地に近く、雑草が生い茂り、運動に適した場所とは言えなかった


虹太郎「ここ、だよな?」


先程よりも謎の音が大きく聞こえているので、目的地はここで間違いないようだ


多少疑問を抱きながらも、意を決して入り口をくぐる


そこには、女の子が1人いた


緑髪のおさげの女の子がボール片手に壁に向かっていた


左手にグローブをつけているので野球経験者なのだろう


しかし、虹太郎を驚かせたのはそれだけではなかった


虹太郎「(アンダースロー?)」


右手に握られた白球は、肩の上からではなく膝より下から放たれ、壁へと向かっていった


女の子はその後も何度か球を拾っては投げ返すが、ほとんど同じ場所へ当てていた


女の子でピッチャー、そしてアンダースロー


珍しい要素の女の子との出会い


これが虹太郎の高校生活を大きく変えていく

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