閑話

 なんか、今日は疲れたな。

 僕の狭い家の中でなんとなく思った。

 あの後トリアドールは、そういえば帰り道が分からないと言い出して、僕は周りを気にしながら市場まで案内してやった。

 人が遠くに見えるようになってから、案内はここまでしかできないと言うと不思議な顔をされた。

——どうして? 確かに帰り道はもう分かるけれど、まだそこまで人はいないわよ?

——人に見られるの、あんまりよくないから。

——ふうん。じゃあしょうがないのかしら。またね、イフリート!

 レンガの敷き詰められた道を、綺麗な靴がコツコツと軽快な音を立てる。人通りの多くなる方に走って行きながらトリアドールは手を振ってくれた。僕は何もせずに見送っていたけれど、すぐに踵を返して僕の家に向かった。もうすぐ日が暮れそうだった。

——……だあれ……ま………リー……じゅう……じゃ………

「イフ、リー……ト……」

 その名前をどこかで聞いたことがあるような気がするのは気のせいかな。

 ……それにしても本当に太陽みたいな子だった。

 存在が大きくて、近づこうとすれば跡形もなく消されてしまいそうなくらいに強烈で、遠く遠く離れたところでないとその恩恵を受けられない、そもそも直接見ることすらできないような。

 そんな、太陽に。

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