第97話 貧相な村


 ドワーフの村から馬車で十数日後、ヴェストニア法国領に入ることが出来た。


 途中何度か盗賊や魔物に襲われたが、皆殺しにしてやったので問題はなかった。

 おかげで盗賊が持っていた宝を頂いて俺のアイテムボックスの中が潤った。


「すみません。ご主人様」


「どうした?」


 俺はフィーアに膝枕させたまま寝ながら答えた。


「道の真ん中に人が集まっていまして」


「盗賊なら殺せ」


「いえ……見窄らしい格好なので物乞いかと思われます」


 アインスが気になるようなので、馬車を止めて起き上がってやった。

 馬車から降りるとアインスが言う通り見窄らしい格好をした老人が十数人、子供は数人程度いた。

 2か30ぐらいの歳の男は一人で、女は三人だけだった。

 近くに村があるのか知らないが、これで全員だとしたら小規模すぎる。


「旅のお方……どうか私達に食料か衣服などを分けては頂けないでしょうか?」


 村長とおもしき老婆が集団の中から前に出て来た。


「何故俺が得体の知らないお前達のために物を与えてやらないといけないんだ」


 俺は上から目線で言ってやった。

 相手はお願いしている立場だ。

 一緒の目線で話す理由がない。


「私達は見た通り今日食べる物さえやっとの者達です……どうか子供達の為に恵んでいただけないでしょうか?」


 老人達の後ろには数人の子供達も両手を合わせて祈るポーズをとった。

 何回も同じことをやっていたのか、一連の流れがスムーズだった。


 周りに誰か隠れているかもと思ったが、敵意を感じなかったので、油断させて襲撃するわけじゃなさそうだ。


「断る……お前達が生きようが死のうが俺には関係ない」


「そうですか、来なさいケーナ」


 子供達の中から10代前半ぐらいの娘が前に出て来た。


「この子はまだ幼いが将来は村一番の美人に育つだろう。この娘を売るから代わりに食料などを貰えないか?」


 ケーナと呼ばれた少女の手や脚は痩せ細っているが、身体付きは良さそうだ。

 胸のサイズはアインスは勿論、ドライよりもあった。

 顔は整っていて将来美人になるのは嘘ではなさそうだ。

 髪は手入れが行き届いていないせいでボロボロだが、背中まで伸びた長い白髪だ。


「若旦那様……どうか私を買って下さい」


 ケーナは膝をついて頭を下げた。


「お前達はいいのか……村のものである娘を売ることに抵抗はないのか?」


「無いと言えば嘘になりますが……この村にいるよりは貴方のような優しそうで歳の近いお方に買われた方がこの娘も幸せになるだろう」


「あの子達に何か食べされるためなら構いません!どうかお願いします!」


 さて、どうするか?

 美人系少女か。

 何か気になるし、モノにしてもいいんだよな。


「お前は俺の為に何が出来る?」


「え⁉︎」


「お前が出来ることだ。俺は気に入ればたとえ無能だろうが奴隷してやっている。お前が俺の為に出来ることを教えろ」


「えっと……料理は、多少の覚えがあります……子供達の世話もしてましたので、家事もできます……それと……」


「もういい、お前のステータスを見せろ」


「え!えっと……」


 何か隠したいことでもあるのか?


「それは……その……」


「出来ないなら話は終わりだ」


「待って下さい!すみませんでした……お願いします」


 これはまた面倒そうなことになりそうだ。

 欲しいと思うことはないし、無能に近いステータスだ。


 振り向くとアインス達が何かしてあげたいという顔をしていた。


 面倒だがしょうがないか。


「分かった。こいつの料金分の食料と衣類を与えてやる」


 俺はアイテムボックスから魔物を取り出して、ツヴァイとドライとフィーアに料理の準備をさせた。

 盗賊が持っていた装備や着替えが入っていた箱をそのまま渡してやった。

 一応アイテムボックスに入れておいて良かった。

 自分で使う気は全くないが、こういう時には役に立つ。

 いらないモノの整理が出来た。


「取り敢えず全員に食わせてやるから待ってろ」


 作るのは胃に優しいスープだ。

 何日も空腹の腹にいきなり重たい物を食わせたら危ないからな。

 奴隷達はよく考えていやがる。


 俺はアインスと一緒に馬車の中で少女の話を聞く。


「それで……お前の目的はなんだ?」


「そんなもの私には……」


「あんなもので俺を騙せると思うなよ。俺を利用するなら命を掛けろ」


 俺は少女を脅すように覇気を飛ばす。

 少女は涙目になり後ずさる。


「なぁアインス……もし俺を騙そうとしたり利用しようとした奴がいたらどうする?」


「ご主人様に害を与える者は殺します」


 アインスも少女に殺意を向ける。


「もうお前は俺のモノなんだ。それを理解しろよ」


 少女は俺達と目を合わせられず、左右交互に目を向ける。

 外の奴等は食事に夢中だ。

 誰も助けなんて来ない。

 例え助けようとする奴が現れても共犯と判断して殺すつもりだ。


「どうするんだ?黙ってたって何も進まないぞ。正直に喋るか、殺されるか……そうだなぁ……彼奴等も俺を騙し利用した存在として全員殺してやろうか?」


「え⁉︎」


「当たり前だろ。俺の害となる奴は全員殺す」


 少女は目を瞑って考える。

 ここで待っててやる俺は優しいな。

 悪い人だったら見せしめに何にか殺しているぞ。

 俺はなんて優しい魔王なんだ。


「わかり……ました」


「聞こえねぇ!」


「喋ります!だからはあの子達を殺さないで!」


 少女は涙を流して叫ぶ。


「最初からそうしていればいいんだよ。魔人ってのは面倒な種族だな」





 名前:ケーナ

 レベル:10

 年齢:13歳

 性別:女

 種族:人間(魔人)

 魔法:なし

 スキル:〈料理LV2〉〈人化〉〈隠蔽〉

 称号:なし



 

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