第95話 彼女達の願い


「魔王様……今のは何でしょうか?」


 俺に体を預けているフィンフが尋ねた。


「そうか、フィンフは見るの初めてだったな。これは俺が最近隷婢達にやらせている楽しみの一つだ」


「なるほど……そうですか……」


 フィンフの顔は笑っていない。

 ムキツ達を見つめて何かを考えているようだ。

 さすがに女王として許容範囲外だったか? 

 だからといって止めるつもりはないけどな。


「アインス達もやっているのですか?」


「ツヴァイとフィーアにはやさせた事があるが、ムキツが一番多いな」


「彼女ですか……」


 フィンフがムキツを睨む。

 ムキツは大きさなら負けていない豊満な胸を張っていて、相手が女王でも気持ちで負けないようにしていた。


「魔王様はあういうのがお好みなのですか?」


「ムキツはスタイルがるいいからな。見ていて全く飽きない」


「魔王様……私もいつ魔王様からのお呼びがかかっても寵愛を受ける準備は出来ています。それはを今お見せしましょう」


 フィンフは立ち上がるとムキツ達のいた場所の少し前に立つ。

 雰囲気に飲まれたのか、ムキツ達は自然と数歩後ろに下がり場所を開けた。


「私の方が魔王様を楽しませることが出来ます」


 フィンフは高級な服を脱いでいった。

 それは一流のストリッパーでさえ、怖気付くような華やかなさや妖艶さが感じられ、もう俺の知っている言葉では表しきれない美しさがあった。


 裸のフィンフを久しぶりに見たが、前よりも美しさが増しているように感じた。


 今この場には数多くの美少女達がいるが、ダントツでフィンフが一番だ。


「すみません魔王様、私は彼女達のような芸は出来ませんが、殿方が喜ぶ方法をいくつか学びました。今からそれを試されては貰えませんか?」


 フィンフは両手を膝の上に乗せ、前屈みなり満面の笑みを浮かべた。

 それによって豊満な胸部が寄せられて、深い谷間を作った。

 つい目がそちらにいって手を伸ばしたくなる。


「お前と久しぶりに楽しむのいいが、折角奴隷と隷婢が全員揃ったんだ」


 俺は立ち上がと、脚に抱きついているツヴァイとキサラギを蹴っ飛ばした。

 二人ともそんな嬉しそうな顔をしないで欲しい。


 右手でフィンフを、左手でヤヨイを抱き寄せた。


「全員で楽しもうじゃないか。ついて来い!」


 フィンフは驚きはしたが、すぐに体を寄せて歩調を合わせた。

 ヤヨイはえっ⁉︎と混乱している。


「ドライはどうしますか?」


「寝かしておけ……人形一号、こいつが起きたら適当に飯を与えてやれ。今日は人助けして働いたから豪華にしな」


「承知いたしました」


「あの……魔王様……私はどうすればいいですか?」


 失礼女の姉の方が尋ねた。


 魔王様ね。

 俺を様付けで呼ぶようになったか。


「お前は外で見張りをしていろ。俺の楽しみを邪魔する奴は殺してでも止めろ……分かったな?」


「……はい。かしこまりました!」


 失礼女の姉は妹を連れて外に出た。

 羊の獣人であるあいつにも多少の興味はあるが、モノの順位でいったらビリなので別にどうでもよかった。


「人形一号もだ。絶対に俺の邪魔をするな」


「はい!」


 こいつらにも変化があったようだが、聞きたい程の興味は湧かないな。

 俺のモノとして自覚が出てきたのなら、それだけで十分だ。


「最高に俺を楽しませろよ」


「「「「「「「はい!」」」」」」」







 結果から言うと最高に楽しかったが、後悔もあった。


 7人の美少女達を一度に相手にするんじゃなかった。

 2人や3人でも大丈夫なら7人でも大丈夫だろうと考えていたが、そんなことはなかった。


 7人もいればそれぞれ性癖や性欲も違ってくる。

 俺とずっと抱き付いているのが好きな奴も入れば、俺に色々と触って欲しがる奴もいた。

 中には踏まれたり蹴られたい奴もいた。


 その全てに対応するなんてのは無理だ。

 だから奴等の願いなど蹴っ飛ばして、俺の自由にやらせてもらった。

 途中食事や入浴を挟んで休憩を取っていたが、日が登る前に7人全員がダウンして俺の勝利で終わった。


 自然回復スキルがある俺は体力はすぐに回復する。

 だから奴等に負けることなんて有り得ないし、魔王として奴隷と隷婢には負けるわけにはいかなかった。






 日が完全に昇って俺は目覚めた。


 右手にフィンフ、左手にヤヨイ、左脚にキサラギ、右脚にツヴァイと俺の四肢は奴隷と隷婢達によって占領せれていた。


 頭をちょっとだけ起こすと天使達の周りには鬼達がいた。


「おはようございますご主人様」


「おはようアインス」


「早速ですが、ご主人様の目覚めを邪魔するモノ達の排除をしてもよろしいでしょうか?」


「そうだな……頼むフィーア」


「魔王様のご命令を速やかに遂行致します」


 ムキツは笑っているが、その笑顔の奥に鬼がいる気がする。


 アインスはツヴァイを、フィーアはキサラギを、ムキツはヤヨイをベッドから落とした。

 フィンフだけはドライが優しくゆすって起こした。


 ムキツがヤヨイを躊躇なく引っ張って落としたのはビックリだ。

 尊敬していた姉なのにこんな事するようになったか。


「ヤヨイ姉様、魔王様よりも遅く起きるなんて……また罪を重ねてしまいましたね」


「む、つき……え、えっと……これは……」


 寝起きのヤヨイは状況が飲み込めず混乱していた。


「魔王様よりも早く起きて奉仕することは魔王様の隷婢として当然のことですよ」


「ツヴァイも最初のころに教えたことを忘れてしまったのですか?ならもう一度ご主人様の奴隷というのがどういう事なのか教えてあげましょう」


「忘れてなどいませんよ。私は睡眠のお供として奴隷で一番ですから……なので魔王様が目覚めるまで側にいることは当然です」


 ツヴァイは腕を組んで最大の武器を持ち上げた。

 下着しか着ていないツヴァイの胸についつい視線が寄ってしまう。


 アインスは言い返そうとしているが、それが自分をさらに虚しくさせるだけだと知っているために何も言えなかった。


「キサラギもだわ。いつまでもそのままではいけないわよ」


「王子様がよかった」


 会話が成り立っていない。

 おそらくベッドから落とされるなら、フィーアではなく俺の方が良かったということなのだろう。

 これを分かってしまっている自分がなんか悲しくなってくる。


「おはようございます魔王様……昨夜はありがとうございました。久しぶり魔王様を感じられて嬉しいです」


 ドライに優しく起こされたフィンフは半目のまま俺にもたれかかった。

 昨夜も存分に味わったフィンフの柔らかさや香りが俺をその気にさせてくる。


 流石に今から始めるのは駄目だな。


 俺はフィンフの肩を押して無理矢理引き剥がした。


 ベッドから立ち上がるとアインスとフィーアとムキツがそれぞれ服をタオルを持って着替えさせてくれた。


 フィーアがまず体を拭いて、アインスが上、ムキツが下から服を着せる。


「飯にするからお前達も早く準備しろ」


 俺のせいで遅くなったのかもしれないが、そんな事は魔王である俺が気にすることじゃない。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「お前達に重大な話がある」


 食事後の紅茶を一口飲んだあと俺は重く口を開いた。


 空気が変わったことにアインス達の目が真剣になる。

 フィンフはさすがに騎士団のところに戻った。

 国のトップになると色々と大変だな。

 俺は絶対やりたくない。


「ムキツ、キサラギ、ヤヨイ、お前達には重要な任務を二つ与える。一つはミッテミルガン共和国の現代表についての情報を集めろ」


「代表のですか?」


「あいつは俺よりも強い……俺の最大の敵になるだろう。どんな小さな情報でも構わない、レベル、スキル、戦闘方法、就寝時間、嫌いな食べ物、どんな小さな情報でも構わないから調べろ」


「ラサーイ代表はあまり表舞台に出て来ません。警戒心が強く顔を知らない国民も多いです」


 ヤヨイが答えてくれた。

 ミッテミルガンの首都シュテートに住んでいるからな。

 もう一人は机の下を移動してそっと俺の右脚に抱き付いていた。

 俺はもう片方の脚で蹴って踏みつけてやった。

 アインス達が不思議がって机の下を覗いたが無視した。


「そんなんでよく王様やってるな」


「代表がもたらした奴隷による娯楽文化に満足している人が多いですから……男性は勿論ですし、失業者が大幅に減り食べ物に困る人がいなくなったことが主な理由ですね」


 成程な。

 富裕層は新たな娯楽を得て、その日の食事も悩む貧乏人は働き口と食べ物を得たということか。


 業種はともかく文句を言う奴なんていないのか。


「前の代表は違ったのか?」


「以前は色んな意味で実力主義だったと聞いています。その頃は失業者も多くいたらしいです。相談所もございましたがどんな業種いも一定以上の実力が必要だったようです」


 前の代表がどんな奴だろうが俺には関係ないや。

 政治に口出すつもりはない。

 そんな雑事は奴隷にやらせればいいんだ。

 俺は好きなことしかやりたくない。


 あ、そうだ!


「前代表の娘が生きているかも調べてくれ。もし生きているなら全力で保護しろ」


 前代表の娘が美女らしいからな。

 もし生きているなら手に入れたい。


「前代表の娘……そういう事ですか!流石は我が主です」


 ヤヨイが何かに気付いたようだが、何が流石なんだ?


「現代表の討伐だけでなく、その後の政治についてまでお考えとは流石は救世の魔王様です」


 ムキツも感動していた。

 俺は政治に手を出すつもりはないぞ。

 それと変な名前をつけるな。

 そんなのを名乗るつもりはない。


「当然です……ご主人様はこの世界を高天へ導いてくださる存在なのですから」


「ゼント様はこの大陸全てを救ってくださるのです」


 フィーア、それは言い過ぎだ。

 俺は自分から助けようと思ったことは少ないと思うぞ。


「我が主がそこまでお考えだったとは感服致しました……もう一つ使命とは何ですか?」


「エルフ国のズュートラニカ国の情勢と双子の王女について調べてくれ」


「ズュートラニカ国の王女達をですか?」


「あぁ、ヴェストニア法国の次はそっち行くつもりだからな。その前にお前達に調べてもらう」


「非才の身の私では我が主の深いお考えを全て理解する事は出来ませんが、我が主のことを私は信じると決めました!その任務、全力でやらせていただきます!」


「私も魔王様による救世の役に立つために頑張ります」


「……王子様のため……やります」


 机の下俺に踏まれている笑顔のキサラギもやる気になってくれた。


「でも……王子様と離れるのやだ」


 キサラギは踏まれた状態のまま無理矢理俺の脚に抱き付いた。


「それは駄目だ……もし有益な情報を持って来たらお前達の願いを何でも叶えてやるよ」


「本当ですか⁉︎」


 ドン‼︎


 キサラギが俺の脚をどけて急に立ち上がろうとするから机に頭ぶつけた。

 けっこう痛そう音だったな。

 紅茶が溢れなくて良かった。

 お菓子はドライが全部食べていたのでそっちは問題なかった。


 俺は両手で頭を押さえているキサラギを抱き上げて膝の上に乗せた。

 奴隷達の目つきが変わったが無視した。


「お前はそんなに何か欲しい物があるのか?」


「王子様の子供が欲しい!」


 キサラギは俺の首に手を回して力一杯抱きしめた。

 最初の頃と比べるとこうも人は変われるのかと驚く。

 あんな無感情に喋っていたキサラギが笑顔で抱きしめて来たんだ。

 嬉しくあるが、願いの内容が最初と変わっていない。


「またそれか……まぁ、二つの任務を完璧にこなしたら俺の子供を産ませてやるよ」


「「「「「!!!!!」」」」」


 アインス達が目を見開いて驚いていた。

 今までなんやかんや避けていたが、ちゃんと俺のモノとして使命を果たしたら願いを叶えてやらないとな。


「我が主!それは私にも我が主の子供を宿す権利をいただけるという事でしょうか⁉︎」


「私も魔王様の子供が欲しいです!どうかこの身に魔王様との愛の結晶をお与え下さい」


 ヤヨイとムキツが目をキラキラさせて左右の手を握って来た。


 どうしたんだよコイツらは?

 何でそんなに俺の子供が欲しいんだ?

 女心や母性本能など俺には分からない。


「ご主人様……それは私にも与えていただけるのでしょうか⁉︎」


「ゼント様の子供を私も産みたいです!」


「是非!ゼント様の子供を!」


「ドライもー」


 奴隷達まで何なんだよ。

 あと、ガキが子供を欲しいとか言うな。

 前世で小学生が妊娠する映画を観たことがあるが、お前はまず大人になることから考えろ。


「お前達には俺の側で色々とやってもらいたいことが山ほどある……まぁ、それらが終わったら子供を産ませてやるよ」


「「「「ありがとうございます!!」」」」


 四人が嬉しそうに返事をした。

 ドライ、お前は別だ。


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