第94話 選択肢


 フィンフが用意した舞台はオーストセレス王国首都シュテートの広場の時と似たような舞台だった。


 俺は階段を登ると眼下には治療を終えたドワーフ達が集まりその周りに騎士達が配置されていた。


 舞台の周りには奴隷達と隷婢達が並び、フィンフは俺の一歩後ろで待機していた。

 人形一号と失礼女姉妹は隷婢達の一歩後ろに立っていた。

 人形一号はともかく、失礼女姉妹も生きていたんだな。


「よく集まった……混乱している奴もいるだろうが黙って聞け」


 魔王である俺は媚びなど売らない。

 礼儀知らずな態度で続ける。


「お前達には選択肢が二つある。一つはこの荒れ果てた村に留まること。もう一つは俺のモノとなってオーストセレス王国の新たなる地で一から始めることだ」


 ざわざわと騒ぐが聞こえて来るが、アインスがドンッと槍の突き立てる音を鳴らすと「黙りなさい!」と怒鳴った。

 ドワーフ達は一瞬で静かになりこれ以上喋ったら殺させるという思いが襲った。


「一つ目を選んでもいいが……新たな刺客が送り込まれる可能性は高いぞ。そうなったら次は皆殺しだろうな」


「もう一つの選択肢を選べばお前達の命はオーストセレス王国女性であるフィンフが保証してくれる……そうだな?」


「はい。魔王様の御命令とあればドワーフ達の命と生活を保証致しましょう」


「一晩やるからじっくりと考えるんだな。ただこれだけ言っておくぞ。魔王である俺のモノになったあとは繁栄こそあれ衰退などありえない!」


 俺は言い終えると舞台から降り、アインス達を連れて宿に戻った。


 俺達が泊まっていた宿は運良く魔物からの被害を受けずに残っていた。

 というわけではなく人形一号に守らせていた。

 ちゃんと役目を果たしたようだ。


 ドワーフ達の家は壊れたところもあるが、そんなことはフィンフが何とかしてくれるだろう。

 俺が気にすることじゃない。


 俺のモノになるかも分からない奴らのためにしてやる事ことはない。

 ドワーフを助けたのヤヨイの心を動かすためだ。

 ドワーフは鍛治や建築に優れているのはこの世界でも一緒だから色々と役に立つだろう。

 見た目が好きじゃないから奴隷に欲しいとは思わないけどな。


 俺はリビングに用意したソファーに腰掛けた。

 元々ソファーなんてなかったが、三人ぐらい並んで座れる場所が欲しいのでムキツ達に頼んでドワーフの奴らの物を貰った。

 念のために水魔法と光魔法で除菌などして新品同様にしてある。


 いつものようにツヴァイと人形一号が紅茶とお菓子の準備をする。


 俺の左隣にはムキツが体を密着させてくる。

 キサラギは俺の左脚に抱きつく。


 ドライは机を挟んで俺の正面に座りお菓子が出てくるのを待っていた。


「貴方達は何をしているの?」


 フィーアが驚いてるような複雑そうな顔をしていた。


「ツヴァイはいつも通りですが、ムキツとキサラギは何をしているのですか?」


 アインスも同じで状況が良く分かっていないようだ。


「見て分かりませんか?魔王様に私を使って奉仕させてもらっているのです」


 ムキツは俺の肩に手を乗せて更に密着度を増して来る。


「王子様に気持ちよくなってもらうのは当然」


 キサラギもさらに密着して膝に頭を乗せた。


「成程……皆さんこうして魔王様に奉仕していたのですね」


 アインス達の後ろには何故かフィンフがいた。


「おい、女王としての務めはいいのか?」


「それは騎士団長ギャラルに任せました。それよりも1秒でも長く魔王様のお側にいることの方が重要です」


「確かにその通りだ」


 フィンフは何も間違っていない。

 俺への奉仕は何よりも優先されることだ。


「それでは失礼します」


 アインスとフィーアの間を抜けて俺の右隣に座ると体を寄せて俺の肩に頭を乗せてきた。


 その行動一つ一つが前よりも洗礼されていて美しさを増していた。

 アインスとフィーアもつい見惚れてしまって、ハッと気がついた時には隣を取られていた。


 残るのは右脚だが、二人とも葛藤していた。

 多分キサラギと一緒にされるのが嫌なのだろう。


「ゼント様の前でただ立っているだけなんて、ゼント様と離れている間に気持ちが薄れてしまったのですか?」


 ツヴァイが人形一号を連れてお茶とお菓子を机に用意すると、何の躊躇いもなく俺の右脚に抱きついた。


「ゼント様に奉仕出来るのであれば場所など関係ありません」


 俺の右脚にギューッと力が込められて豊満という言葉で済ませられない魅力的な胸で包み込んだ。

 キサラギとは全く違う感触が伝わってくる。


 さすが抱き枕として優秀だけあるな。


 両手両脚に別々の感触や香りがあって、最高の気分にさせらる。


「フィンフ女王様まで……貴方達はいつもこんな事をしているの?」


「ヤヨイまでここにいる必要はないのですよ。隣の宿で休んでいたらどうですか?」


「それともまた魔王様に失礼をするつもりですか?そうだとしたら今度こそ殺しますよ」


 アインスとフィーアが敵意剥き出しにヤヨイを睨む。


「それについては謝るわ。多くの人々を救った彼こそ我が主と呼ぶべき人だと感じたわ」


 ヤヨイは二人に向かって頭を下げた。


「ようやく魔王様の素晴らしさの一端を知ったのですね」


「えぇ、でも何故我が主は勇者ではなく魔王を名乗っているの?」


「やはり勇者を信仰するような過ちはすぐに正さなくてならないようね。勇者の子孫である貴方達にこそ、世界が堕落した真の理由を知らなくてならないわ」


 フィンフは立ち上がると隷婢達に勇者こそが悪の権化であり、魔王こそこの世界を高天に導く存在だと長ったらしく説明し始めた。


 アインスとフィーアもこれまでの俺の活躍を説明し始めた。


 隷婢達は自分の先祖が馬鹿にされているのに、なるほど〜みたいな反応だ。

 ムキツはフィンフの話をちゃんと聞く為に「すみません」と言って俺から離れたが、

 キサラギは一応耳を傾けているようだが、どうでもいいやと言った感じで俺の脚に夢中だ。


 それでいいのか?


 人形一号と失礼女姉妹も一緒に話を聞いていた。

 失礼女姉妹は何を思ってここいるのか知らないが、居心地が悪そうにしていた。


 フィンフとムキツが離れたせいで左右の腕が空いた。

 これでやっとお茶に手をつけられる。


 少し冷めてしまった紅茶とドライに半分以上食べられたお菓子に手をつける。


 人形一号は意外にもお菓子作りが得意だった。

 俺が他にはどんなのが出来るんだと聞いていると、ツヴァイが教えて欲しいと言って来た。

 それで最近は一緒に台所に立つようになっていた。


 甘すぎないクッキーが紅茶に合う。


 俺はアイテムボックスから本を取り出して読み始めた。

 アインスがこちらに気付いて移動しようとするが、俺が手を軽く挙げてそのままでいいと指示した。


 フィンフ達の声はそんなに大きくはないので邪魔になることはない。

 話しかけてきて邪魔するようなら移動してもらうがな。




 二時間ぐらい経って、フィンフの『魔王様の素晴らしさ講座』が終了した。


「これで貴方達も自分達の先祖がいかに愚かな行いをしたか、そして魔王ゼント様がどれだけ素晴らしいお方かを理解出来たでしょう」


 フィンフは豊満な胸を張って何か気持ち良さそうな顔をしている。


 今までは魔王を信仰しているなんて表で言えなかっただろうからな。

 それを布教出来るなんて相当嬉しいんだろう。


「魔王様が今までそんなにも多くの人々を救っていたなんて……どうして私は最初に助けて頂いた時に魔王様の素晴らしさに気付けなかったのでしょう」


「王子様の活躍……もっと見たかった」


「私は本当に罪深いですね。勇者の子孫ということに誇りを持っていたなんて……今では絶対に口にしたくありません。我が主の隷婢と名乗れることがどれだけ光栄なことかようやく理解することが出来ました」 


 フィンフの講座を聞き終えた奴等がそれぞれ目を輝かせて浸っていた。

 それは隷婢達だけでなく、後ろの人形一号と失礼女姉妹もだった。


 俺も片耳で聞く程度だったが、色々と脚色があった気がするが、まぁいっかと気にするのをやめた。


 気になるのが二時間の間ツヴァイは俺の脚に抱きついたままということだ。

 紅茶とお菓子のおかわりの時だけ離れるが、それ以外の時間はずっと俺の脚に夢中だ。

 顔をスリスリしたり、思いっきり抱きしめたり、俺の脚の何がいいのか本当に分からない。

 隣の席が空いているのにわざわざ脚を選択するなんて変態になったな。


 ドライはお菓子でお腹いっぱいになって寝てしまった。

 フィンフ達の話なんて全く聞く気がないようだった。


「お待たせして申し訳ございませんでした。これで彼らも魔王様のことを心の底から慕うようになるでしょう」


 フィンフは俺の右隣に座り直し体を預けて来た。


「相当楽しめたようだし、今度は俺を楽しませてもらおうか……ヤヨイ」


「何でしょうか我が主」


「あの時出来なかったことをもう一度言う。俺を楽しませろ。やり方は分かるな?」


「あ!……はい!お任せ下さい!」


 ヤヨイは俺の前に立った。

 指名されなかった奴等は邪魔にならないように距離を取った。


 

 ヤヨイが服を一枚ずつ脱いでいく。

 恥ずかしさがあるのか、少しゆっくりだ。

 下着姿になったところで顔が真っ赤に染まり手が止まってしまう。


「ムキツとキサラギも手伝ってやれ」


 ムキツは「分かりました」と服を脱いで裸になるとヤヨイの上の下着を手に掛けた。

 キサラギは俺が蹴っ飛ばすと嬉しそうな顔をしながらヤヨイの下の下着に手を掛けた。

 打ち合わせしたかのように一気に脱がせて、ヤヨイは全裸になった。


 下着が脱げた時にムキツ程じゃないが手で抑えきれない胸が上下に揺れた。

 ヤヨイは胸と股間を手で抑えた。

 まだ羞恥心は消えていないようだ。

 俺が声を掛ける前にムキツとキサラギがヤヨイの両手を掴んで無理矢理開かせた。


 自分で脱いでいく姿を見るのもいいが、無理矢理脱がされる姿を見るのも楽しいな。


「その続きも分かっているな」


 俺がそう言うと三人にコソコソと話始めた。

 何を踊るのか話あってるのだろう。


 相談が終わると三人横並びで立った。


 左からムキツ、ヤヨイ、キサラギと胸のサイズ順に並ぶ。

 こう見るとムキツとキサラギの差が凄いな。

 アインス達も合わせて並ばせると面白いそうだ。


 三人の体を見比べてると、隷婢達の後ろで座っている人形一号と失礼女姉妹がいつの間にか用意していた楽器で演奏し始めた。


 人形一号が三味線、失礼女姉妹が笛を吹いていた。

 へぇー和楽器なんてものが異世界にあるんだな。

 俺と同じようなどこかの転生者が広めたんだろうか?


 音楽に合わせてヤヨイから踊り始め、キサラギ、ムキツと続く。

 三人がそれぞれ動く時もあれば、一緒のタイミングでポーズを決めたりしている。

 前世ではこういう舞台を見たことなんてなかったから新鮮でいいな。


 ヤヨイの踊りは初めて見たが、三人の中で一番上手かった。

 裸である事で最初はぎこちなかったが、横の二人があまりに普通に踊っていて、途中から吹っ切れたようでぎこちなさは無くなっていた。


 こういうは何て言うんだ?

 ミュージカルでもなく、歌舞伎でもない。

 演舞?

 よく分からないが裸の少女達が踊っているのを見るのは楽しいな。


 踊りは7分程で終了した。


 ムキツ達の踊りは何度見ても飽きないな。

 それが今後見れなくなるのが残念だ。

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