第92話 シュラティール戦


 俺はまず、再生する箇所は首だけなのか確かめる。


 シュラティールは3つの頭からそれぞれ雷を放って来た。

 スピードもあり不規則な流れは避けづらい。


 しかも打ち切りではなく、30秒以上は雷を放ちながら移動してくる。


 だが、動きは俺より遅い。


 俺は風魔法と光魔法でスピードを上げて、シュラティールの背中側に周り込んだ。


 今度は火魔法を刀シュヴェルトリーゼに纏わせて右側の羽を切断した。

 飛行能力を失ったシュラティールは地面へと墜落した。

 シュラティールは残った羽と足を器用に使って起き上がろうとする。


 俺は続いてシュラティールの両足を水魔法を纏わせた刀シュヴェルトリーゼで切り裂くいた。


 足は首以上に太くて切断まではいかなかったが、シュラティールは起き上がろうとしたところに足の踏ん張りが効かなくなり仰向けに倒れた。


 続けて中級地魔法アースブラストで1mぐらいの岩を何十発もぶつけた。

 衝撃で土煙が舞ってシュラティールが見えづらくなる。


 左側の首だけ出で来て、雷で反撃してくる。

 1発だけなら避けるのは簡単だ。


 俺は闇魔法グラビティボールを使った。

 オーストセレス王国の暗殺者相手に使ったものより巨大で強力だ。

 シュラティールの頭を押しつぶして消した。


 これで全ての属性の魔法を使った。

 俺はシュラティールから離れて様子をみる。



 シュラティールは1分もせずに起き上がって来た。


 首は6本、羽は4枚、足は4本に増えていた。

 流石に体が増えるなんてことはないが、潰した箇所は完全に再生していた。


 打つ手なしか。

 俺は消耗戦で負けることはないだろうが、相手もそうだろう。

 もう流星弾のような大魔法を放つしかないか。

 なんとか防御魔法を駆使すれば村に奴等を守れるかもしれないが危険が大きい。


 何とか弱点を探そうと戦闘を思い返してみる。

 ふと、疑問に思った事がある。


 火魔法で攻撃した部分だけ再生が遅い気がした。


 試してみるか。


 シュラティールが6つの頭から雷を放ってくる。

 前方にいると、数が増えた分避けるだけで精一杯になってしまう。


 雷が途切れたところで、インターバルの間に俺は火魔法と地魔法で攻撃した。

 思った通り、火魔法で攻撃した部分の方が再生が遅い。


 思い出したことがある。

 前世で過去の英雄達が多く出演するゲームがあってその一人の英雄が戦った怪物も再生能力を持っていた。

 その英雄は傷口を燃やすと再生しなくなるという弱点をついて勝利した。


 俺もその英雄に習って同じことを試してみよう。


 雷を避けながら接近すると、今度は俺を噛み砕こう口を広げて攻撃してきた。

 それらを避けて一本の首に対して刀を火魔法で纏わせて切断した。


 落ちた首は塵となって消え、傷口から再生するが再生速度が遅い。


 残った頭が襲ってくるが、その前に傷口に対して中級火魔法で爆発させた。


 一旦距離をとって観察する。


 黒い煙が晴れると首の数が5本になっていて、再生しなくなっていた。

 予想が的中したな。

 後はただの作業だ


 俺が笑みを浮かべると、シュラティールは鋭い目つきで睨んでくる。

 その目は赤く染まって怒りに満ちていた。


「ギャャャオオォォォォォ‼︎」


 シュラティールの頭達が天に向かって大きな雄叫びを上げた。

 俺は咄嗟に耳を塞ぐが、頭にジンジンと響く。


 雄叫びが終わるとシュラティールが黄金色の輝きに包まれた。

 頭、羽、足、尻尾が一つになって一匹の黄金色の蛇へと変わった。

 頭と首が5匹集まったことで横縦幅が5倍デカくなった。

 それに合わせて体から尻尾まで大きくなり、その口は俺を10人以上簡単に丸呑み出来るくらいに大きかった。


 これが奴の最終形態ってことか。

 昔の勇者はこれと戦ったのか?

 いやないだろう。

 あったとしたら本に書かれている筈だ。

 勇者が戦ったこともない強敵と何で戦わなくちゃならないんだ。


 シュラティールは口を大きく開くと雷を放ってきた。

 首が分かれていた時とは比べ物にならないくらいの大きさとそれに合わせた広範囲に凄い威力があった。


 あれをくらったら俺も死ぬ恐れがでて来るな。

 俺は地魔法で防御しつつなんとか避けた。


 今度は口の中で球体に魔法をチャージしていた。

 恐らくさっきよりも高威力・広範囲に攻撃してくるだろう。

 なら俺も全力で防御してやる。

 でないと、ドワーフの村にまで被害が出で来てしまうからな。


 俺は上級闇魔法の準備をする。



 シュラティールのチャージが終わると、口の中の球体をそのまま放った。

 球体は直径2mぐらいにまで圧縮されていた。

 その分威力も上がり、速いスピードで俺に迫った。


「ヴァニヒト!」


 俺の目の前に高さ3mの長方形の黒く薄い壁が出現した。


 球体の雷が壁にぶつかった。

 その瞬間、黒い壁は球体を呑み込み最初から無かったかのように消えていった。


 上級闇魔法『ヴァニヒト』

 壁に触れたあらゆる攻撃魔法を無力化する。


 防御において最強の魔法たが、デメリットも存在する。

 発動している間、発動させている者は動くことが出来ず、一方にしか作れない。


 少し使い勝手が悪いが、こういうぶつかり合いでは絶対に勝てる。


 シュラティールは後ろに下がる。

 恐れを成したかと思ったが、目は深く赤く俺を睨んでいた。


 シュラティールが助走をつけて、牙を向けて俺に突進してきた。

 地震が起きたかのような地鳴りが響く。


 魔法が効かないと分かるとすぐに物理攻撃に切り替えて来る。

 しかもその巨体を活かした攻撃。

 牙を向けているが、体格差がありすぎて俺から見れば体当たりだ。


 前世のあるゲームだと初期の弱い物理攻撃だが、現実になるとこうも恐ろしい攻撃なんだな。


 しかし、シュラティールは俺が何の武器を使っているか知らない。

 それが奴の敗因だ。


 俺は超大刀『シュヴェルトリーゼ』に闇魔法を込めてギガンツァーが持っていた時の半分ぐらいの大きさだがそれでも3m以上はある。


 光魔法と風魔法で補助しながら超大刀を構えて、シュラティールに向かって振り下ろす。



 一刀両断!



 シュラティールは頭から真っ二つに斬った。


 地面に真っ二つになって横たわっているシュラティールは再生することなく塵となって消えていった。



「我が超大刀に断てぬものなし!」


 俺は前世のゲームキャラの台詞を真似た。

 好きなキャラの台詞を真似ると気持ちいいな!

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