第56話 女子の会話は姦しい
フィーアとの話から一夜明けた。
俺達は馬車の旅を続けていた。
道中、広くはないが綺麗な川を見つけたので休息を取ることにした。
食事と洗濯、それに馬の手入れをした。
食事はツヴァイとフィーア。
洗濯はアインスとドライ
必然と俺が馬の手入れをすることになった。
食事も洗濯も俺は不得意だ。
洗剤を入れてボタンを押すだけなら俺にも出来るが、洗濯板を使ってなんて服が取り返しのつかないことになるのは明白だ。
馬の手入れについては一応アインスとフィーアから教わってはいたので問題はない。
食事も水も特に問題はなかった。
タール村の商人から馬の道具を貰っていて、その一つのブラシを使ってやるととても喜んでいた。
馬だっていつまでも汚いままは嫌だよな。
ブラシを置いて撫でようと手を伸ばすと馬の方から掌に顔を押し付けてきた。
嫉妬したのかもう一頭の馬も顔を寄せてきた。
結果、2頭の馬に両手を差し出して遊ばれてる感じになってしまった。
こうして見ると可愛いな。
1頭は前世でよく見た栗毛に黒い立髪で、もう1頭は青鹿毛に黒い立髪だ。
愛着というのはこうして湧くんだな。
こいつらの名前を考えてみよう。
馬車だから車の名前からつけるか。
栗毛がアウディ
青鹿毛がポルシェ
車はアニメで良く見ていたから、なんとなく有名な名前は覚えてた。
それぞれ名前を呼んであげたら喜ぶように鳴き声を上げた。
気に入ってくれたみたいだ。
一方その頃、
アインスとドライが川でみんなの服を洗っていた。
人数が多くなるほど量が増えて大変になる。
二人がかりでも時間がかかってしまう。
「ねぇ、あいんすー」
「あなたはそろそろ発音をちゃんと学びなさい、文字だってまだ読めないでしょ」
「べんきょう……にがて」
「そのままだと、ご主人様に見放されますよ」
「いや……ごしゅじんさまともっといっしょにいたい」
「なら、ちゃんと勉強してご主人様の奴隷として相応しくなりなさい」
「はーい」
「返事もちゃんとしなさい、ところで何かあったのですか?」
「あ、これ!」
ドライが両手に持って突き出したのはゼントのシャツだった。
「ご主人様の服がどうかしたのですか?」
「ごしゅじんさまのにおいがするの」
ドライはシャツに顔を埋めるとクンックンッ
と嗅ぎだした。
堪能するとこの笑顔である。
「あいんすもする?」
アインスは若干の興味があった。
裸で抱き合ったときにゼントのニオイを嗅いではいたが、主人の手前大胆に嗅いだりなどは出来なかった。
「誰にも言っては駄目ですよ」
アインスはドライからシャツを受け取ると、暫しそのシャツを見つめた。
今までもチャンスはあった。
だが、すぐ側にゼントがいたりツヴァイがいたりしてこんなことは出来なかった。
だが今側にいるのは子供のドライだけ。
ゼントもツヴァイもフィーアもこっちを見てはいないはずだ。
アインスは周りを確認した後に、ゼントのシャツに顔をうずめた。
スッと通った小さな鼻先から感じるニオイがアインスの身体を微かに興奮させた。
アインスの中で奇妙な感覚が緩やかに駆け巡った。
持ち主の身体程に感じることはないが、鋭さを持った目を閉じて、主人の姿を想像した。
まるで目の前にいるような不思議な気持ちだ。
狼の獣人であるアインスは普通の人間よりもニオイには敏感だ。
だからこそ、より深く感じ取れた。
身体の奥底が熱くなり、持ち主を求めている。
このニオイでも満足出来るが、もっと強く感じれる存在がすぐそこにいる。
あー、今すぐにでも飛びついて擦り寄せたい。
「そこの変態狼さん、さっきから何をしているの?」
ビクンッ!
アインスは驚いて、シャツから顔を離して声のした方を向いた。
そこにはこちらを見下したような目をしたフィーアがいた。
「もうすぐご飯の用意が終わるので様子を見にくれば何をされているの」
「えー、これは……その……」
アインスは何とかこの場を乗り切ろうと言葉を探すが全く出てこない。
「服のニオイを嗅いで感じているなんて、そんなに何がいいのですか?」
アインスの顔が真っ赤に染まるが、フィーアは関係なしとまだ洗っていないゼントのシャツを一枚取り出すと顔を寄せた。
「これは……いや、そんな」
フィーアはバサっとシャツに顔を埋めた。
深呼吸するように、スーハーと二回繰り返して顔を離した。
「貴方達だけずるいですよ、次から私も参加させなさい」
アインスは最初何を言っているのか分からなかったが、変な対抗心がで出来た。
「フィーアには食事という仕事があるでしょう、こっちは私に任せてください」
「アインスのような変態狼には任せられないわ」
「人の事が言えるのですか、ムッツリ女」
二人の視線がぶつかり火花を散らしていた。
それを消化するのは意外な人物だった。
「アインスさんもフィーアさんもドライちゃんを見習ってください。洗濯をちゃんとしてるのはドライちゃんだけですよ」
ドライは二人から少し離れたところで黙々と手を動かしていた。
「ゼント様も待っています。早く終わらしましょう」
主人が待っているという言葉にアインスとフィーアは『こんなことをしてる場合じゃない』と同時に俊敏に動きだした。
結局四人て手分けして終わらせることになった。
衣服は近くある木の枝にかけて乾かした。
ただ、ツヴァイが途中でゼントの服のニオイを嗅いでいたことをアインスとフィーアは見逃さなかった。
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遅かったなと少しゼントからお叱りを受けたが、一番バレたけないことは隠すことは出来た。
四人ともそれぞれ相手の弱みを握ったため、暗黙の協定が結ばれた。
食事中にドライが口を滑らそうになった時に三人で全力で止めた。
ドライはその時の三人の睨んだ目を一生忘れることは無かった。
ゼントからの提案で今夜はこのまま川の近くで野営することにした。
先へ進まないのかと質問を受けたが、特に急ぐ旅ではないので、問題ないと返した。
前に進んで、野営するところを考えるよりは、今丁度良い場所があるんだからここでいいや。
それにゆっくりしたいという感情もあった。
たまにはこういうのんびりする日があってもいいと思った。
「水浴びでもするか」
アインス達が食事の片付けをしている最中、不意に呟いた。
毎日タオルで身体を拭いてはいるので、最低限の清潔を保ってはいた。
ラノベやアニメでこういと時に水浴びしてる主人公達がいるのを思い出してやってみたいと思った。
「どらいみずあびしたい!」
ドライが運んでる食器を落としそうな勢いではしゃいだ。
「そっか、お前らもいいか?」
アインス達からも黄色い声が聞こえてきた。
「もし食器を割ったら水浴びは無しだからな」
ドライは急に静かになって、慎重に恐る恐る食器を運んだ。
冗談のつもりだが、こいつをコントロールするのは簡単で助かる。
いつまでもそのままでいてくれ。
片付け後に着替えるのだが、異世界には当然水着なんて魅力的なアイテムは存在しなかった。
水浴びするときは肌着でするそうだ。
幸い周りには人も魔物の気配はないので、見られて困ることはなかった。
確認済みだが、異世界で前世のようなブラにパンツがあるわけがなかった。
上はタンクトップに近いもので、下はズロースとかいうカボチャパンツのようなもので見ていて色気とかは感じなかった。
下着とか作れたら良かったが、そんな技術が俺にあるわけない。
服とかを作ったり、そういう技術があるやつ会う機会があったらやらせてみるか。
ネットの写真とかでしか知らないが、見ていていいものだというのは分かっていた。
アインスとフィーアは淡々と服を脱いで川に入った。
ツヴァイは恥ずかしがっていたが、ドライに手を引かれて行った。
俺もパンツ一枚になって川に入った。
お風呂でないのが残念だが、これはこれでいいものだ。
子供の頃に親に連れられて川に連れて来られた時を思いだした。
意味もなくはしゃいだりしてたな。
服を脱ぐ間、ツヴァイとフィーアから視線を感じていたが無視することにした。
アインスとフィーアは体の汚れを落としていた。
ドライは潜ったり、水を掛けたりして楽しんでいた。
ツヴァイもやり返すように水を掛けた。
その度に暴力的な胸が揺れた。
実り豊かな兵器を眺めているだけで幸福をもたらしてくれる。
視線に気付いたツヴァイが胸を隠す動作をするが、細い両手で隠せる程度ではない。
透けた先端部分が隠れるだけで、上、横、下から溢れていた。
「いったい何を食べたら、こんなになるのですか」
いつの間にか、アインス達がツヴァイを囲むように見ていた。
改めて見比べるとその差に驚く。
不意にアインスがツヴァイの胸を鷲掴んだ。
揉んだり、引っ張りたりしていた。
「アインスさん……少し、痛いです」
「アインスさん、嫉妬するのは分かりますが八つ当たりしたら駄目よ」
アインスが手を離すと、ツヴァイは距離を取ろうとした。
その前にドライがツヴァイの胸に飛びついた。
「ドライちゃん⁉︎」
「どらいもおむぬおおきくなる?」
「えーと……」
ツヴァイは何て言ったらいいか分からないようだ。
成長途中のドライが将来どうなるかなんて誰にも分からない。
「大丈夫ですよ。ドライならきっと大きくなれるわ。アインスのようにはならないから安心して」
「それはどういう意味ですか?」
「見たらすぐに分かると思いますが」
ただそこに立っているだけだが、それだけでアインスとフィーアの差は歴然だ。
「ほら見てくださいよ」
フィーアはドライの胸を軽く触れた。
ドライはくすぐったそうに笑いを堪えていた。
「すでにアインスさんと同じくらい……もしかしたら既に負けてるかもしれないわ」
「くぅ、……」
たしかに良く見ると、ドライの胸は膨らみを見せていた。
アインスとの差はそんなに無いとは思うが、若干ドライが優勢だ。
「大丈夫ですよ、アインスさんには他にもいいところが沢山ありますから」
「あなたに慰められるのが一番腹立たしいのです」
またアインスはツヴァイの胸を鷲掴むと思いっきり引っ張った。
アインスは知っていた、主人がこの胸で眠ったときの笑顔を。
その笑顔を自分が作ることが出来ないことを。
「い、痛いです」
「やめなさい、そんなに引っ張ると更に大きくなって貴方との差が大きくなるだけですよ」
アインスが胸から手を離すとツヴァイは隠すように背中を向けた。
見ている分には男としてはいいが、ここいらで止めた方がいいか。
「喧嘩はそのへんにしとけ、身体が冷え過ぎる前に上がれよ」
俺は十分楽しめたので、川から足を出した。
「ご主人様はどのような体の女性が好きですか?」
アインスが助けを求めるかのようにか弱い声を出した。
俺の答えが気になるのか、全員が注目していた。
「俺は全員好きだ、だから俺のものにしたんだ」
好きという言葉が嬉しいかったのか、ツヴァイは赤くなり、ドライははしゃいでいた。
あぁ、ドライ……お前は全く好みじゃない。
あえて訂正はしないが、それだけは間違いない。
フィーアはあんまり反応が見えない。
時間があまり経っていないし、これから中を深めて行こう。
一人の女性を選ぶべきだとは思うが、みんなが幸せになるハーレムエンドを目指したっていいよな。
「ほんとうですか?」
アインスは不安そうに一歩一歩ゆっくり歩み寄って来た。
「当たり前だろ」
俺はアインスをお姫様抱っこした。
初めてやったがこんな感じで大丈夫だと思う。
「今からそれを証明してやるよ」
俺は優しくアインスの耳元で囁いた。
奴隷達に見せびらかすのもいいかもしれないが、ドライに見せるのは良くないな。
少し離れた林に移動してやるか。
アインスは特に身動きせず、腕の中で大人しくしていた。
他の奴隷達から声は上がらなかった。
文句がないならいいか。
ただ一つ気になった事は、アインスが後ろのフィーア達に向かって凄くいい顔をしたことだ。
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