第30話 スリュートダンジョン 4日目.3

 ボス攻略だが、俺も加わり3人で挑む予定だ。

 と言っても、俺は主に援護だけをして2人にメインで戦ってもらう。

 でなきゃ、ここに来た意味がない。


 勝てそうなら2人にやらせるが、多分無理だろうな。


 

「…………ん……」


 

 子供奴隷の目が覚め、上体を起こす。


「大丈夫、痛いところはない?」


 ツヴァイが優しく話しかける。

 

 ちなみにアインスは武器の手入れをしている。


 子供奴隷は目をパチクリしながら周りを見渡している。

 混乱しているのか。


「ごみ……生きてる?」


 ごみ?


 昔テレビで観たウル○ラマンダ○ナにごみの塊みたいな怪獣がいたが……

 関係ないか。


「ごみってなんだ?」


「ごみは名前……です」


 酷い名前だ。


 俺のネーミングセンスも良くはないが、これ程じゃない。


 ごみはないだろ。


 あの男達の誰かが付けた名前だろうが、扱い方を見れば名前の通りだが、安直過ぎる。


「ごみのごしゅんじんさまはどこ?」


「あいつらなら死んだぞ」


 殺したとは言わない。

 余計な情報は与える必要はない。


 こいつもあんな主人を失って喜んでいるはずだ。

 ごみ扱いする主人なんて、ごみのように消えてしまった方がいい。


「…………」


 そうでも無さそうだ。


「何を落ち込んでいるんだ、お前を殺そうとしたんだぞ、死んで良かったじゃないか」


「ごみにごはんくれるひと……いなくなっちゃった」


 言葉が出なかった。

 この世界の奴隷はその日のご飯も確保するのもやっとの生活を送っているんだ。

 主人がいなくなった奴隷がどうなるかなんて、少し考えれば分かることだったな

 

 あいつらから助けたなんて少し思ったが、こいつにとっちゃ飯をくれる奴を殺されたと思っているのか。

 

 命と飯、どっちが大切か。

 永遠のテーマだな。


 俺だったらどっちも欲しい物は両方手に入れる選択肢を選ぶ。


「ゼント様……」


 ツヴァイが見つめてくる。

 言いたいことは分かる。


 だが……


「こいつを奴隷にして何のメリットがある?」


 救ってやりたいなんて感情は少しあるが、少しだけだ。

 別に俺がやる必要はないだろ。

 アインスとツヴァイを奴隷にしたのは目的があり、メリットがあったからだ。

 

 しかし、目の前のゴミを奴隷にしたところでデメリットしかないだろう。


 戦えもせず、ただただ逃げ回ってた奴に何ができる。

 性奴隷としても使えないしな。


 一応こいつのスキルを確認してみるか。



 名前:ごみ

 レベル:3

 年齢:9歳

 性別:女

 種族:獣人

 魔法:なし

 スキル:〈人化〉

 称号:奴隷



 使えねー。

 マジでごみだな。

 名前の通りだ。


 特別なスキルがないか少し期待したが全然ダメだ。

 人化って多分獣人が人の姿になるだけだろ。

 耳と尻尾が隠れるみたいな。

 それが戦闘や生活の何の役に立つんだよ。

 本当にごみのようだ。


 このレベルでダンジョンに来てよく死ななかったな。

 あいつらの最後は酷かったが、本当は扱いが良かったんじゃないかと疑いたくなる。


「この子はどうなるのですか?」


「地上には連れて帰るが奴隷商にでも売るとかしようか」


 ごみは黙って聞いている。

 変に騒がれるよりましだ。

 

「アインスさんはどう思いますか?」


「ご主人様が決めたことなら、私はそれに従うだけです」


 アインスは興味なさげに答えているが、さっきからこっちに目線を向けて気にしているのが丸わかりだ。

 手だって止まったりしているしな。


 俺の奴隷にはお人好しが多いな。


 元騎士と純粋処女だからな。


「分かった、宿に戻ったらちゃんと話して決めるから今は目の前の戦いに集中しろよ」


 まったく我儘になってしまった。

 このままこいつらの意見が通りやすい現状にはしない。


 主人は俺なんだから、俺が絶対だ。






 装備の準備が終わると、俺達は扉の前に並んだ。


 ごみは俺の後ろに隠れている。

 子守は嫌だが、2人が戦闘に集中するためには仕方ない。


 ここが1番安全だろうからな。

 一緒に中に入るのではなく、外待ってもらおうと提案したら、

 ボス戦後はこちらの扉は開かず、ボスを倒した後奥の扉の魔法陣から地上へもどるそうだ。


 ちなみにボス戦では途中退出はできない。

 ボス戦ではボスを倒すか死ぬかの二択になる。


 だから、ボス戦には徹底した準備をするんだ。


 まぁ、今回はそんな構える必要はない。


 このボスはレベルが20を超えるが俺の相手ではない。


 もしもの時は俺が瞬殺すれば終わりだ。


 だから、2人には気楽とは言えないが、死ぬことはないだろ。


 さてそろそろ中に入ろう。


 2人で勝てるか分からないけど、健闘を祈ろうか。

 







 結果から言うと戦闘は簡単に終わってしまった。


 ボスはゴブリンキングで数匹のゴブリンを従えていた。


 俺は一瞬で察してしまった。


 これは2人では無理だ。

 大将は俺がやると伝えた。


 俺たちが中に入ると、ゴブリンキングは子分達に命令して襲いかかってきた。


「フレイムスピア」


 火魔法の槍を何発もゴブリンキングに放った。


 それは高速でゴブリンキングに襲いかかり、避けられるはずがなかった。


 2.3発は耐えたが、5発ぐらいで膝をつき、10発を超えるとうつ伏せに倒れて2度と起き上がることはなかった。


 あとは雑魚のゴブリンだけだが、いきなり大将を失った兵士は混乱状態でたとえ何匹いてもアインスとツヴァイの敵になるはずがなかった。

 

 俺が参加してしまうとただの虐殺だな。

 楽すぎて全然訓練にならないな。


 まぁ、明らかな死地に奴隷を飛び込ませるよりはましだろ。

 ギリギリ勝てると思うなら、やらせたがこれはダメだ。

 

 ゴブリンキング1匹ならよかったが、他のゴブリンを相手にしながらは無理だな。


 せめて、アインスが1人でゴブリンキング、他をツヴァイがやるなら大丈夫だったんだが、2人でゴブリンキングに勝てるか分からないのにこれは無理だ。


 ごみは俺の後ろで涙目で小さくなっていた。

 騒がれるよりましだが、マジでゴミのように使えねー。


 その後は死体をアイテムボックスに回収すると、奥の魔法陣で地上に戻った。

 

 これでダンジョン攻略は完了だ。

 また冒険者ギルドに行って、攻略完了の報告をしないといけない。

 あー、面倒くさい。

 

 2人のレベルが上がった事だし、報告と旅の準備が済んだらこの街を出よう。


 目的地は決まってないけど。




 名前:ゼント

 レベル:60 up

 魔法:〈火魔法(上)LV1〉up〈水魔法(上)LV1〉up〈地魔法(中)LV8〉up〈光魔法(中)LV5〉up

 スキル:〈剣王LV5〉〈槍士LV3〉〈闘王LV1〉〈投擲LV10〉up〈隠密LV10〉〈自然回復LV10〉〈運搬LV10〉〈奴隷契約〉〈鑑定〉〈アイテムボックス〉

 称号:無能王


 

 名前:アインス

 レベル:27 up

 魔法:なし

 スキル:〈槍王LV1〉up

 称号:ゼントの奴隷

    ゼントの配下



 名前:ツヴァイ

 レベル:22 up

 魔法:〈水魔法(中)LV1〉up〈地魔法(下)LV8〉up〈光魔法(下)LV7〉up

 スキル:〈料理LV4〉〈礼儀作法LV3〉up

 称号:ゼントの奴隷

    ゼントの配下


 

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