第28話 スリュートダンジョン 4日目.1
朝早く俺達はダンジョンに来ていた。
昨日の内に道具などの準備は終わらせていた。
すでに3階層に来ていた。
俺は手を貸していない。
アインスだけでも8階層まで行けたんだ。
そこにツヴァイの魔法が加われば、倒すのも簡単になってくる。
1日目のように実戦で魔法を使うのを戸惑うかと思ったが、容赦なくホーンラビットに魔法をぶつけたのを見て安心した。
昨日のツヴァイと打ち解けたのが大きかった。
アインスは機嫌が良いし、ツヴァイもやる気があって、順調すぎて怖くなってくるな。
そんな不安は的中することはなく、5階層を攻略して階層途中にある階段の踊り場のようなところで休憩を取ることにした。
2時間以上は戦闘していたんだ。
疲れが出て当然だ。
ツヴァイは特にレベルが低いんだから。
レベル……?
そういえば、無能王の能力で取得経験値量が上がっているんだった。
「お前らレベルはどうなってる?」
昨日の夕食の後、ツヴァイも支配下に置いた。
俺程じゃないが、レベルが上がりやすくなっているんだ。
どれぐらい上がるようになったのか気になる。
名前:アインス
レベル:17
魔法:なし
スキル:〈槍士LV7〉up
称号:ゼントの奴隷
ゼントの配下
名前:ツヴァイ
レベル:8
魔法:〈水魔法(下)LV3〉up〈地魔法(下)LV2〉up〈光魔法(下)LV4〉up
スキル:〈料理LV4〉〈礼儀作法LV2〉
称号:ゼントの奴隷
ゼントの配下
おぉ!
以前とはまるで違うレベルの上がり方だ。
アインスはあの大蛇を倒してようやくレベルが上がったというのに、
雑魚と十数回戦闘しただけで上がった。
俺は戦闘はしていないので、特に変化はない。
やってることと言えば荷物持だな。
2人が怪我をした時に回復薬を渡したり、今みたいに水と食料を渡している。
怪我はツヴァイの光魔法で治す方法もあるが、魔法は体力や体内の魔力?を使用するらしい。
俺は特に気にしたことがないので分からないが、回数制限があるなら序盤で使う必要はないな。
それこそ戦闘中に使うようにすれば、ツヴァイの訓練になるだろ。
これじゃあどっちが奴隷か分かったもんじゃない。
他にも冒険者がいて時折視線を感じるが、アインスの正体に気付いた様子もないし、自分達に危害を加えなければ放っておこうと思う。
そんなこんなで、なんかまた同じ8階層でこの前と同じような大蛇を相手に戦っている。
今回はアインスとツヴァイのコンビだ。
だが、戦況はよろしくない。
土魔法で壁を作るにも、ツヴァイでは俺みたいにポンポン出せない。
水の攻撃魔法も偶にしたか当たらない。
攻撃力も高くないので、鱗が傷つく程度であまりダメージは与えられていない。
この後も戦闘が控えているだ。
俺は前と同じように水魔法で大蛇を真っ二つにした。
「ゼント様すごいです。私の魔法とは比べ物になりません」
「ご期待に応えられず、すみません」
「気にするな、ツヴァイは魔法の戦闘は今日が初めてなんだ、それにしては良くやっている。アインスもよくカバー出来てるぞ」
アインスの動きは後方のツヴァイを気にしているのか、攻めてはいるが大蛇を近づけないような戦い方をしていた。
ちゃんとツヴァイを仲間と認めているようで安心した。
「そうですね、序盤では私に向かって魔法を打ったりしてまして……、私ごと倒そうとしているのかと思っていました」
「それは……その……すみません」
あれは危なかった。
蟻の魔法と戦闘中、ツヴァイの水魔法がアインスに向かって飛んでいた。
咄嗟に俺が剣でブロックしなければ、本当に危なかった。
波乱万丈でなによりだ。
この後は俺も戦闘に参加した。
分かってはいたが、このダンジョンは俺には楽勝すぎる。
俺1人でも何の問題無いくらいに。
8階層を突破して、9階層も難なく進んで行き、大蛇の時と同じ大きな広場が見えてきた。
戦闘をしている音が聞こえる。
中を覗くと、3人の男達がカメレオンのような魔物と戦っていた。
男達は剣盾•槍•弓とバランスがよさそうな組み合わせだが、見るからに劣勢だ。
至る所から血が出ていて、武器も防具もボロボロだ。
「こんなやつに勝てねーよ!」
「もう矢がなくなるぞ!」
「しょうがねぇ、逃げるぞ!」
男達は俺たちのいる方へ走って来た。
こっちが入り口だから当然か。
すると、1人の男が壁の方へ外れて行く。
そこにはフードを被った子供?がいた。
男は子供を持ち上げると、魔物の方へ投げた。
「お前が殿だ!ちゃんと役目を果たせよ!」
まさか⁉︎
子供を囮に逃げるつもりか!
さすがの俺でも驚いた。
俺は隣を通ろうとする男を手で捕まえた。
「おい、仲間を見捨てるつもりかよ」
「お前には関係ないだろ!それにあいつは奴隷だ……俺達の役に立って死ねるんだ、あいつも嬉しいだろうよ」
ザンッ
俺は迷わず目の前の男の首を斬った。
切断まではいかないが、出血量からして死んだだろう。
「……え」
「ひぃ!」
他の2人が驚いたような怯えた声をだした。
俺は残り2人も切り裂いた。
「ゼントさま……なぜ?」
ツヴァイが青くなった顔で聞いてきた。
「あいつらの行動にイラついたからだ」
俺の目の前で自分の物を大切にできない奴には容赦しない。
それが例え奴隷であろうとだ。
多少の折檻は仕方ないと思っているが、命まで取ろうとするのはおかしい。
それよりも今は……
囮にされた子供は魔物から必死に逃げていた。
「あいつを助けるぞ」
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