第27話 おあずけ
俺とツヴァイはアヌビス商会で新しい魔法書を入手できないか聞いてみたが、置いていなかった。
商会に入荷しても、貴族連中にすぐに売られてしまうそうだ。
つまり、この街で入手出来る魔法書はあの3冊が全部だった。
次の街に行ったら、また探してみよう。
そのあとは、特に用事もないのでまっすぐ宿に戻った。
「お帰りなさいませご主人様」
ドアを開けると、すぐにアインスが出迎えてくれた。
俺が椅子に座ると、アインスはいつも通り門番に戻った。
「ツヴァイ、紅茶をくれ」
「かしこまりました」
この世界に紅茶があることは驚いた。
アヌビス商会で売っていて、少し高かったが即決した。
コーヒーはなかったが、それはいい。
俺はどちらかと言えば、紅茶派だ。
実験道具のような物があるので、部屋で火を扱うのも問題ない、多分。
火事になったら、なった後で考えよう。
「お待たせいたしました」
この世界の紅茶が俺の世界と同じか気になったが、香りはこっちの方が強いな。
味は変わらないな。
今回は砂糖もミルクも無しで入れてもらったが、美味しい。
「美味いな」
「ありがとうございます。入れ方は母に教わりました」
「そうか、いい親を持ったな」
紅茶が美味いと気分がいい。
特に種類にこだわりはないが、この紅茶は好みに合っていた。
「ツヴァイこっちに来て、ここに座れ」
俺は自分の膝を叩く。
ツヴァイは顔を真っ赤に染めていた。
足取りは重く、ゆっくりだ。
ようやく俺の前まで来たが、そこから動こうとしない。
早くして欲しい。
待たせるのいいが、待つのは好きじゃない。
俺はツヴァイの手を引っ張り、無理矢理座らせる。
片手でツヴァイの背中を支える。
顔はよく見えないが、体が固くなってるのが分かる。
アインスに目を向けると、目をつぶってこちらを見ないようにしていた。
「アインス……見たくないなら、部屋の外に出ていいぞ」
「はい……宿の裏で訓練をしてきます」
失礼しましたと出て行ってしまった。
まぁいいや。
今は目の前のことだ。
ツヴァイは変わらず、固いままだ。
「男に触れられるのは嫌か?」
「すみません……」
今日は随分ツヴァイと話し合って、打ち解けたと思っていたのだが、まだまだのようだ。
「この状態も嫌なら離れていいぞ」
「いえ……これなら、でも……昨日のアインスさんのようなことは……」
俺はツヴァイから体を離す。
「無理強いするつもりはない、時間を掛けて慣れてくれ」
正直、ここからのおあずけとか拷問レベルだが我慢するしかない。
そりゃあ奴隷なんだし、命令すれば何でも言うことを聞かせられるが、短期を起こす場ではない。
長い目で見ようと思うことにした。
「実は……母との約束があるんです」
「やくそく?」
「こういう行為をする時は結婚したその夜までとっておくようにと……」
なんだそれ、
結婚初夜まで処女を守るとか、どこの部族の決め事だよ。
日本だと付き合っていなくてもするやつがいると言うのに、結婚するまで待てとか少数派だと思うぞ。
でも仕方ないかー。
無理強いをしてしまったら、それこそ俺の嫌いな奴になってしまう。
それは絶対にいやだ。
「分かった、美味い紅茶の礼だ。お前の母の意見を尊重しよう」
「!……それは、その……」
「お前の体は求めない、ツヴァイの方から誘って来るまで待ってやる」
「ありがとう……ございま、す」
涙を流し始めた。
なんでだ?
女心は分からないな。
でも、この高まった気分を消化しなければならない。
まぁ、吐口はいまところ1つしかないが。
「アインスを呼んで来てくれ」
帰って来たアインスは汗だくだった。
短い時間だったと思うが、どんだけ訓練してたんだよ。
ツヴァイはなんか変に機嫌がいいし。
それに伴ってアインスの機嫌が悪くなる。
喧嘩ではないだろうが、面倒な連鎖だ。
アインスを呼び、情事をし始めるがなんか乗り気ではなかった。
ツヴァイと事を成してないことを伝えると急に乗り気になり激しくなった。
女心とは複雑で分からない。
男だから、無能だから仕方ない。
そのせいで夕食が遅くなってしまったのも仕方がない。
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