第25話 スリュートダンジョン 2日目.4

「では、今日の成果を発表する」


 俺はアインスが今日倒した魔物とレベルアップしたことをツヴァイに告げた。


「レベルってそんなに上がるのが難しいのですか?」


「そんなことも知らなかったのですか?」


「すみません。上限があったりなどは知ってますが……レベルをあげようなんて考えてこなかったもので……」


「はぁ、仕方ありませんね……普通レベルを上げるには自分と同等か上の相手を倒すと高い経験値を得られ、下を倒してもレベルは上がるが、得られる経験値はが少なく時間がかかるのです」


 へぇー、そうだったんだ。

 俺も初めて知った。

 

 なんとなく、ゲームでよくあるそんな感じかなと思ってたけど、当たっていたようだ。


「次にツヴァイだ」


 俺はツヴァイのステータスを開く。



 名前:ツヴァイ

レベル:5

魔法:〈水魔法(下)LV2〉new 〈地魔法(下)LV1〉new 〈光魔法(下)LV3〉up

スキル:〈料理LV4〉〈礼儀作法LV2〉

称号:ゼントの奴隷




 魔法スキルが増えていた。

 これは嬉しい誤算だ。

 渡した魔法書全てを1日掛けて読んで理解しまったのか。

 

「すごいな、武器の扱いのセンスはからっきしなのに、魔法の才能は抜群だ」


「あ、ありがとうございます」


「次のダンジョン攻略では前より期待できるな」


 ツヴァイの顔が青ざめていく。

 

「あのー、明日もダンジョンに行くのですか?」


「いや、明日は休日にするつもりだ」


「そう……ですか」


 休みだというのにツヴァイの顔色は良くならない。

 これは戦うこと自体に問題があるな。

 たとえ実力を持っていても、本人の意識が低ければその真価を発揮することはできない。


「そういえばツヴァイには俺の目的を話してなかったな」


 俺は廃墟でアインスに話したことと同じことを伝えた。


「ーーーー」


 ツヴァイは口は開けているが、驚きで声にならない声を上げた。


「ゼント様はどうしてこの国を敵にするのですか?」


「!」


 アインスの耳がピンッと反応した。


「ツヴァイはアインスの正体に気付いてるか?」


「正体ですか?白髪の獣人は珍しいとは思いますが……他は特に……」


 それに何の関係が?という感じだ。

 これはツヴァイは世間に鈍いせいなのかもしれないので一般とは違うと思っておこう。


 俺はアインスが魔王の幹部フェンリルの末裔だということを伝えた。

 証拠の印を見せてだ


 さすがにツヴァイでも魔王のことは知ってるだろう。

 この世界で魔王のことを知らないのは俺ぐらいだろうな……

 

「フェンリルって……え?……」


 困惑してるな。

 これが普通の反応か。

 

 アインスは目を瞑り何かを感じている。

 やっぱ、俺が特別なんだな。

 知らないから恐怖もない。


「勘違いして貰っては困るが、アインスは末裔というだけで別に悪行を働いていた訳じゃない。それどころか王国の騎士団に入りお前ら国民のために働いていたんだ、にも関わらず、この国はアインスを追放したんだ。とても許せる行為ではない」


 ツヴァイは口はを開けたまま呆然としている。

 

「……俺自身もこの国に対して恨みがあるがそれは今は話す事はできない」


 危ない、忘れるところだった。

 俺の理由はアインスを追放した事だ。

 それとアインスの正体を明かした奴を殺すことだ。

 アインスは別に理由があると思ってるんだよな。

 何か考えとかないとそろそろやばいかな?

 

 国を敵にして滅ぼす存在って、選択肢全然ないよな。

 

「では、ツヴァイの過去を聞かせてくれ」


「私のですか……?」


 ボロが出る前に話を変えよう。


「あぁ、お前には過去は捨てろと言ったが、別に思い出を無かったことにしろとは言った訳ではない。俺の奴隷として新しい人生を歩めという意味で言ったんだ。奴隷の事を知っておくことも主人の責任だからな」


「私はそんなゼント様やアインスさんに比べてお粗末なものです」


 俺なんてゲームのように楽しんでるだけだ。

 1番酷い理由だと思う。


「構わない、話してくれ」


「これは私の母と仲が良かった給士に聞いたのですが、私の母はアルタイナ男爵家で給仕をしていました。そこで一緒に勤めていた執事と恋に落ち、母は私を身篭りました」

 

 職場結婚なんて羨ましい。

 俺なんて眺めるだけだったいうのに。


「ですが、私が生まれてすぐにそのことはスリュート伯爵様に伝わりました。伯爵様は私達親子を伯爵家に招待すると言ってまして、不審に思った男爵様でしたが、男爵様は伯爵様の派閥に属していまして逆らうことが出来ませんでした」

 

 政治家同士の派閥争いなんて面倒くさいとしか思えない。


「最初は父が先に出向きましたが、道中、賊に襲われて殺されたと報告がありました。その後別の日に母が呼ばれました」


 うわー……

 それって絶対伯爵が殺してるな。


「それから数ヶ月後、母が自ら命を絶ったと聞かされました。幼い子供だった私は頭が真っ白になりその場で倒れました。後に分かったことですが、母は自殺ではなく伯爵様の趣味趣向のための玩具にされ殺されたと聞きました」


 ツヴァイが伯爵に囚われた時を思い出した。

 拷問部屋みたいなあの様子は、そのまま伯爵の趣味趣向を表に出した部屋だったのか。


 つまり、あのままツヴァイを放って置いたら殺されていた可能性があったのか。


 早めに行って正解だったな。


「私は男自体が怖くなり、身体を触れるのが嫌になってしまったのです」


 俺を極端に怖がっていたのは、そのせいか。

 てっきり殺人鬼だと思っていると思ってた。


「俺と一緒に寝るのは嫌じゃなかったのか?」


「はい、怖いときはありますが……アインスさんからゼント様が伯爵様から私を救うためにと聞いていて……それに….」


 ツヴァイは黙ってしまった。

 あー、なんとなく言いたいことは分かる。


「安心しろ俺は無理に強要なんてしない、ツヴァイの意思を尊重するつもりだ。俺は自分が愛を注いだ物を傷つけたりなんかしないさ」


 ツヴァイは俯いたままで反応が見えない。

 アインスにアイコンタクトで何も言うなと伝えた。

 

 今日の報告会はそんな感じで終了だ。

 

 だが、本番はこれからだ。


「ただ、俺だって男だ。欲望だってある……その捌け口は必要なんだ。それは分かってくれ」


 俺はアインスを抱き寄せる。


「見たくなきゃ部屋を出ろ、現実を受け止める覚悟があるなら見ていけ、それでおまえにどう思われようが構わない」


 アインスの服を脱がしながらも、俺も服を脱ぎお互いに肌を晒していく。


 ベッドに移動して愛撫しだす。


 ツヴァイは顔を真っ赤にしながら手で顔を覆う。

 時折手を外しこっちを見るが、また覆うを繰り返す。

 部屋から出て行く気は無いようだから俺は続ける。


 アインスは呼吸が乱れて色っぽくなって行く。


 さぁ、ここからはアインスに集中する。

 ツヴァイが見ているし、アインスもダンジョン攻略を頑張ったからな、優しく包み込むようにリードして行こう。


 結局、日が昇り始めるまで続けてしまい、倒れるように安らかに眠りについた。

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