第24話 スリュートダンジョン 2日目.3

 大蛇を倒した後は特に問題なく地上まで戻ることができた。

 

 今はダンジョン受付近くにある休憩所で食事を取っているところだ。

 宿で待っているツヴァイにはパンと水を置いていっているので大丈夫だろう。

 

 アインスは大きな肉にかぶりついている。

 最初は遠慮していたが、ご褒美だと告げると感謝の言葉を告げて食べ始めた。

 俺は飲み物と軽いつまみだけだ。

 特に腹は減っていない。

 それにステータスを確認しないとだからな。


 アインスは自身のレベルと槍士スキルのレベルが上がった。

 予想はしていたが、他のスキルは身につかなかった。


 重要なのは、俺の称号がパワーアップしたことだ。

 『無能』が『無能王』になった。

 まさか称号の『無能』まで上があるとは思わなかった。

 無能王って、無能よりも酷い人間ってことで、もうゴミとかクズとか言われる人間なんだろうか?


 そんなくだらないこと考えてる場合じゃない。



 『無能王』

 指定した支配下のレベル上限を解放

 指定した支配下のスキルレベル上限を解放

 指定した支配下の取得経験値を10倍にする。


 

 これはすごいな。

 レベル上限解放のスキルが手に入った。

 支配下というのが、どういう存在なのか分からないが……


 俺は『無能王』に意識を集中すると、アイテムボックスと同じような四角の画面が出てきた。

 その中に白い文字でアインスとツヴァイの名前が縦に並んでいた。


 俺は試しにアインスを選択した。


 すると、アインスの名前の色が赤く変わった。


 食事中のアインスがビクッと反応を示した。


 「ご主人様、今のは……?」


 「ここは人が多い、宿に戻ったら説明する」


 アインスは俺が急かせたと思ったのか、目の前の肉を手品のように一瞬で消えさせた。


 「お待たせいたしましたご主人様」


 「ああ、行こうか」


  別に急ぐ理由などないが、もうすぐ夕陽が傾く時間なので宿に戻ることにした。

 

 移動する前にアインスのステータスを確認すると称号が1つ増えていた。



 名前:アインス

 レベル:16

 魔法:なし

 スキル:〈槍士LV6〉

 称号:ゼントの奴隷

    ゼントの配下new


 

 この称号が俺の支配下に入った証拠なのだろう。


 ツヴァイも選択しようとしたが出来なかった。

 近くにいないと選択できないのかもしれない。

 

 まぁ、称号の実験は明後日にするつもりだ。

 今日のことでアインスも疲れてるだろうし、ツヴァイにも休ませることが必要だろうと思い、明日は休日にする予定だ。

 ツヴァイはレベルが低く、鍛えてるわけではないので体力がなさすぎる。

 俺は自然回復LV10のおかげですぐに回復するからな。

 どんなに疲れていても数時間寝ていれば全回復する。

 それは野営のときに確認済みだ。



 それにしても今日のアインスは妙に張り切っていたな。


 もしかしたら、ツヴァイを奴隷にしていこう、

 ツヴァイを俺の隣で寝かせて、自分は床で寝かされていることを怒っていて、その八つ当たりかもしれない。


 そろそろもう一回抱いてやった方がいいかもしれない。


 でもな〜、あのメロンのような大きさのマシュマロを抱いていると気持ちが良いんだよな。

 あの味はアインスには生まれ変わりでもしない限り出せないものだ。


 ツヴァイを抱かないのは魔法の勉強があったのと、アインスの見てる前でツヴァイを抱くのは何か抵抗がある。

 それが何か分からないが、圧を感じるんだ。


 抱かない理由はそれだけじゃない。

 ツヴァイがいつも小さく震えているんだ。

 あんな状態の女を抱く気にはなれない。




 宿部屋に着くと、ツヴァイは机に伏した状態だった。

 机の上には魔法書が広げられていて、魔法陣や文字がビッシリ書かれた紙が広がっていた。

 溢れて床に散らばっている程にだ。


「ご主人様少々お待ち下さい……ご主人様が戻られたのにも関わらず眠り続けているあの愚か者に罰を与える時間をお貸しください」


「別に構わない、ツヴァイも勉強で疲れたんだろうーーアインスも疲れているだろ、ベットで横になって休んでもいいぞ」


「いえ、私は先程休ませていただいたので大丈夫です」


 そうなると、アインスには今日はもうして貰うことがなくなってしまう。


 とりあえず、俺はベットに腰掛けてアイテムボックスの中にある伯爵の持ち物を整理することにした。


 アインスはいつものように入り口あたりで門番をしていた。

 ただ、視線はツヴァイを睨みつけている。

 

 これはまずいな。


 ツヴァイが起きたときにどんな怒られ方をするのか……

 あまり想像したくないな。

 前世の辛い記憶が蘇ってしまう。



 そうだ!


 アインスにも背徳感を味合わせればいいんだ!

 

 俺はアインスを手招きする。


「お呼びでしょうか?」


「ここに座れ」


 俺は自分の膝をポンポンと叩く。


「ご主人様ーーそれは……その……」


「早くしろ」


 アインスは戸惑いつつも体が勝手に動くように俺と向き合うように腰掛ける。


「俺はアイテムボックスの整理作業がある、動いて邪魔をするなよ」


「でしたら、離れた方が効率が良いのではないですか?」


「片腕が使えれば問題ない、だからそれ以外の相手を頼むな」


 俺は右腕でアイテムボックスの整理作業をするフリをしながら、左手ではアインスの背中にまわし抱きしめる。

 実際には思考するだけでアイテムボックスの整理はできるのだが、これは建前だ。

 こうやって仕事のついでにやっている感を出すのだ。

 

 それにこの状態でも俺の仕事ペースを落ちたりなんかしない。

 これは前世でながらレベル上げで培ったプレイヤースキルだ。


 利き腕の右腕でマウスを操作して、左手でスマホやもう一つのパソコンのマウスを操作したりするなど、両手で別のゲームをやってたりしていた。


 ネットで異性に抱きついた状態でゲームする奴を見つけたとき爆発しろなど思っていたが、やってみるといいもんだな。


 女性の肌は男の癒しになると聞いたことがあったが、これで証明された。

 今後もながら作業をする時はアインスかツヴァイを側に置いておくといいかもしれない。


 この状態を続けること1時間弱。


「ぅ……ぅん……」


 ツヴァイが目を覚まし、起き上がった。


「…………!ーーすみません!ゼント様が戻られたのにわたしーー」


「あぁ、構わない疲れていたんだろ。ご苦労だった」


「……ありがとうございます。それと……あの……」


 ツヴァイが顔を紅くしながら口籠る。


 俺とアインスの状態をみてのことだろう。


「お邪魔でしたら部屋の外で待っていますが?」


「必要ない、アインスには少し相手をして貰っていただけだ。お前にもいずれやって貰うことになるからな」


「はい……?わかりました」


 おそらく分かってないだろうが、

 ま、経験してもらえば分かるなと放置した。


「もう離れていいぞ」


「はい」


 アインスはゆっくり離れて立ち上がった。

 顔は俯いたままで誰とも目を合わせようとしなかった。


 相当恥ずかしかったようだな。

 計画通りだ。


「これから飯を食いに行く、準備しろ」


 すでに太陽が落ちきっていて辺りは暗くなっていた。


 ツヴァイは床にまで広がった紙を拾い集める。

 アインスは槍を取りに行くがその足取りはおぼつかなかった。


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