第22話 スリュートダンジョン 2日目.1
まず、武器屋に行きアインスの武器を受け取った。
形状として2メートル程の槍で赤黒い感じが悪者が使いそうな感じカッコいいな。
「にいちゃん好みになっているだろう」
「まるで魔槍のような禍々しい感じがいいな」
「……魔槍なんだけどな」
「そうなのか?」
「ただ鉱石を組み合わせた物じゃなくて、魔物の部位から作ってるんだから魔槍だぞ。にいちゃんの剣だって魔剣の部類に入るんだからな」
俺は自分の剣を鑑定してみた。
名前:レッドベアーの魔剣
補正:切れ味+(中)、対物理上昇
本当に魔剣だった。
アインスの槍も鑑定してみる。
名前:レッドベアーの魔槍
補正:切れ味+(小)、貫通プラス+(中)
こっちも魔槍だった。
この店主の言っていることは間違っていない。
「魔物の素材を使えば何でも魔剣や魔槍になるのか?」
「何でもって訳じゃねぇよ、ネズミのちっこい素材を使ったて魔剣にはならねぇ。魔物自体にある程度の強さやその魔物のどの部位を使うかによって決まるだ」
その後も細かい説明があったが、あんまし理解出来なかった。
まとめると、
•武器になるだけの強さを持った魔物
•素材になるだけの多くの部位、さらに状態の質
•鍛冶屋の腕
以上のことが必要のようだ。
つまりこの店主は魔剣を作れるだけの腕を持つということだ。
前世のときのゲームでも強い武器やアイテムを手に入れる為に何日も掛けたことがある。
こういうの達成感がある行為は好きだ。
周回プレイも嫌いではなかった。
面倒いと感じはするけど。
「この魔槍はアインスに渡そう、励めよ」
「ありがとうございます!ご主人様が与えてくださったこの槍に恥じない闘いをさせていただきます」
武器が強くなれば、多少のレベルが上の敵に勝てることもあるだろう。
俺は安全マージンも気にするが、勝てる相手にだけ戦わせても強くなれないのは知っている。
俺もそうだった。
格上の相手に苦戦しながらも勝利したとき、強くなれると思っている。
俺の持論だけどね。
日々の努力?
そんなことは最低条件だ。
やって当たり前だ。
それだけで強くなれるのは天才だけだ。
魔法も使えない凡才は命がけで強くなるのだ。
リアルの友達や金を犠牲にして強くなるのだ。
前世のことを思い出すと悲しくなってきた。
「金貨1枚で魔剣が1本貰えるとは、魔剣てそこらじゅうにあるのか?」
「そんなわけあるか!自分で言うのもなんだが魔剣を作れる鍛治師なんてそうはいないぜ、本当は追加料金を貰いたいぐらいだが、あんたは近い内に有名になりそうだからな、先行投資だと思ってるよ。今後もご贔屓にしてくれよな」
贔屓にするかは約束出来ないが、魔剣を作って貰えるのはいいな。
自分で作れるようになれば安上がりだと思うが、こういうのは専門家の方がいいだろ。
前世のゲームでは生産職はあまり好きではなかったな。
そういうのは他人任せだった。
餅は餅屋にだ。
広場に行くと人集りが出来ていた。
気になって、俺とアインスはそれを少し遠くから眺めていた。
中心には騎士の格好した人が数人いた。
その中の1人が台の上に登った。
「先日、このスリュート領の領主であるスリュート伯爵の屋敷が襲撃され伯爵が殺されましたーーーー犯人は魔王の幹部である『死神』の仕業です。これは伯爵邸に残されていた映魔鏡に残された記録を見て判明しました」
なんで死神という名前が知れたのか不思議だったのだが、そんな物があったのか。
アインスによると映魔鏡はこの世界の防犯カメラのような物だそうだ。
魔石を設置して、何時間か映像を鏡の中に残す物らしい。
魔石とは魔力を持った石だ。
この世界ではとても貴重な物でとても高価な物だそうだ。
魔石自体の魔力がなくなっても外部から魔力を送り込むこともできる。
王城や有名な貴族は自分の屋敷に設置していることが、当たり前だそうだ。
まさか、防犯カメラがこの世界にあるとは思っていなかったので、心臓の心拍数が急上昇している。
もし俺の顔が写っていたら、終わりだな。
それでも俺が指名手配されていないのは、まだ顔が判明されてないのだろう。
当日もフードと仮面で顔を隠していたから、顔が分かる可能性は低いと思うが、用心はしておこう。
その後も騎士団の演説は続いていたが、俺は早足でその場を後にした。
これ以上あの場にいたくないと本能が体を動かした。
ダンジョンの入り口に到着すると、昨日と同じように手続きをすませ中へ入る。
昼前だと言うのに人が多いな。
アインスの特訓は5階層からの攻略で始める。
途中に他の冒険者が何人かいたおかげで、少ない戦闘で来ることができた。
これまでは2人で戦闘してきたが、ここからはアインス1人で攻略してもらう。
5階層から7階層では昆虫型の魔物が縄張りを持っている。
レベルは10を超えるのが多くいる。
通路を歩いていると、さっそく蟻型の魔物が現れた。
全長2メートルぐらいの大きさだ。
通路は縦横ともに5メートル程あるのでそこまで戦いにくくはないと思う。
「予定通り、ここからはアインス1人で攻略しろ」
「はい!ご主人様の奴隷として恥じない闘いをお見せします」
まぁ、死にそうになったら力を貸すが、多少の怪我をしようが見逃す。
そういうよのも経験だ。
今日はアインスは大きな怪我をしたり、体力的に限界になるまでやる予定だ。
帰りは俺1人で戦えばいい。
この程度の敵ならアインスを担ぎながらでも余裕だろ。
魔法の練習にもなるしな。
さぁ、特訓開始だ。
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