第19話 スリュートダンジョン

 冒険者ギルドでは特に騒ぎとかは起きなかった。

 こっちを見ながらヒソヒソとする奴は何人かいたが、話かけられることはなかった。


 受付では青い顔をした女性がダンジョンの許可証の処理をしてくれた。


 料金は銅貨2枚で1日、最大で5日間だ。


 これは新人が深追いしすぎないように定めるもので期間を定めれば往復の時間を考えて行動してくれるからだ。

 さらに、報告のあとは休息の期間がありその間ダンジョンへの進入を禁止している。

 これも無理をしてレベルアップをしようとする初心者の為の規則だ。


 それに期間を過ぎての報告は罰金やダンジョンへの進入禁止などの罰が与えられる。

 例外もあり、冒険者のランクが上がれば期間が伸びて無期限などの許可が下りたりする。

 俺には関係ないけどな。


「それじゃあ、ダンジョンへ向かうぞ」


 この街の近くにあるダンジョンは門を出て、南へ10分程歩いた近くにあるらしい。

 何故こんな近くにあるというと、ダンジョンが見つかったから、監視の意味を込めて近くに街をつくったらしい。


 ダンジョン内では魔物が湧いて、定期的に討伐しないと外に溢れ出ることがあるらしい。

 何十年か前にはダンジョンの発見が遅れて、近くの村に魔物が何十体も押し寄せて村が滅んだこともあったらしい。


 全部アインスから聞いた話なんだけどな。


 まぁ、そんな訳でダンジョンは冒険者ギルドが管理することになっている。



 ダンジョンの入り口で受付をしてる人にメダリオを提示すると書類にサインと注意事項の説明を受けたあとは簡単に中に入ることができた。


 注意内容は獲物を横取りしたり、トレインをしないようになど、ゲームの時と似たようなことだった。


 このダンジョンは10層と浅いダンジョンで、低レベルの冒険者でも安全に魔物を狩れる場所だ。

 深いダンジョンだと、100層もあるところがあるらしい。

 ダンジョンでは深くなるほど魔物のレベルが高くなる。

 10層だとレベル20以下の魔物しか出現せず、初心者向けということだ。

 もちろん1番奥の部屋にはボス魔物もいるとのことだ。


 今の2人ではボスには勝てないだろうが、ツヴァイをレベル10以上にはしたいところだ。

 制限もあるだろうからしょうがないところもあるが、10以上にはなってくれないと困る。

 特に戦闘向けのアインスにとっては、20までレベルアップしてくれると嬉しい。




 ここのダンジョンは洞窟のような丸型の通路で、縦横ともに広く此処でも戦えるが、広場のようなところもあり、こっちの方が戦いやすい。


 魔物は何処から現れるか分からないので、常に警戒していないといけない。

 ただ安全エリアと呼ばれる場所もあり、階と階の間にある階段のようなところは魔物の縄張りの間にあるらしくそこに現れることはない。


 俺たちはアインスを先頭にツヴァイ→俺へと続く。

 俺が危険とされる後ろにいれば、不意を突かれることもないし、前で戦闘をしているアインスやツヴァイの援護をしやすいという考えだ。



 お!

 さっそく魔物が現れた。

 ホーンラビットが3匹だ。



「2匹はアインスが倒せ、残りはツヴァイにやらせろ」


 俺が指示を出すと、アインスは颯爽と1匹を一突きにし、もう1匹もすぐに刺し倒した。

 相手はおそらくレベルが相当低いだろうから、レベル14のアインスには楽勝だ。


 問題はツヴァイの方だ。

 たったレベル3だからな。

 いつでも援護出来るようにしてはいるが、ツヴァイがどこまで出来るかも見極めないと。


「なにをしているのです、早く仕留めなさい」


 アインスの言葉に焦って棍棒を振り下ろすが、そんな攻撃が当たる訳もなく簡単に避けられてしまう。


 そのあとも何回か振るが全く当たらない。


 俺は小石を投げてホーンラビットに当てた。

 倒れてはいるが死んではいないだろう。


「動きは止めたからあとは止めをさすだけだ」


 ツヴァイは棍棒を構えるが、振り下ろそうとしない。

 情でも移ったのか。


「ご主人様の手まで煩わせたのです。言う通りにしなさい」


 ツヴァイは目をつぶって思いっきり振り下ろした。

 体が潰れたホーンラビットは動かなくなった。

 やっと倒せたか。

 俺みたいにあの兎を1匹倒したぐらいでレベルアップするとは思えない。


 それに1匹に時間がかかりすぎだ。

 もっと効率の良いやり方はないかと考えるが、手を貸し続けるのは今は良くても闘い方を覚えてくれないと今後がすごく困る。


 時間はかかるが地道にやっていくしかない。

 武器があってない可能性もあるし、これは夜に反省会をして話合わないといけないな。

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