第11話 奴隷商

 

 ギルド前での勝負の後、その足で宿屋を探した。

 途中で焼き鳥と言っていいのか、鳥の翼の形をした焼物を打っている屋台を見つけた。


 少し小腹が空いていたので買うことにした。


「おやじ、それはなんだ?」


「こいつはレッドバードの羽に塩をつけて焼いたものだよ。少し骨が多いが美味しいよ」


「じゃあ、それを2本くれ」


「まいど!2本で鉄貨6枚だ」


 俺は焼き羽?を受け取ると1本をアインスに渡した。

 アインスは肉を食べときは美味しいそうに食べる。

 思わず買って良かったと微笑んでしまう。


「おやじ、この近くに奴隷連れでも泊まれる安い宿はあるか?」


「それなら『龍の寝床』がオススメだよ。料理も美味しいし、部屋は防音機能が完備してるいい宿だぜ」


 ラブホテルを紹介されている気分だが、その通りなので紹介してもらおう。


 屋台のおやじから聞いた道を進むと、『龍の寝床』と書かれた看板を見つけた。


 裏路地ではなく普通の通りにあった。

 中に入ると、受付に二十代後半ぐらいの女性がいた。


「いらっしゃいませ、宿泊希望ですか?一泊なら銅貨1枚、朝と夜の食事つきなら2枚です」


「7日間食事付きで頼む。奴隷もいるが問題ないな」


「はい、奴隷には宿泊費はいただいてませんが食事代は一食ごとに鉄貨5枚いただきます」


 奴隷はもの扱いなので宿泊費はいらないということか。

 懐には優しいが、聞いてて気分の良いものじゃないな。

 俺は銅貨14枚を払い、部屋の鍵を貰った。


 案内された部屋は8畳程の部屋でベッドが1つと机と椅子が置いてある質素なものだった。

 水浴びをするには追加料金が必要とのこと。


 ほとんどの道具はアイテムボックスの中なので部屋に置いておくものはない。


 こんなところに置いて盗まれる可能性もあるからな。

 この部屋を使うのは夜が本番だ。


 宿も確保したし、俺たちは質屋に移動することにした。

 受付の女性に聞いてこの街で有名な買取をやっている店を教えてもらった。


 なんだか、わらしべプロトコルをしているような気分だ。

 交換しているのは金と情報だけどな。



 受付の女性に聞いた買取屋は大きな看板に『アヌビス商会』と書かれていた。

 この街で1番の商会で信用度も高い安全な取引が出来ることで冒険者などから重宝されている。

 ここでは特に問題もなく買取をお願いすることができた。


 買取金額の合計が、


 金貨4枚、銀貨8枚、銅貨5枚だった。


 これで合計所持金が、

 金貨8枚、銀貨16枚、銅貨9枚、鉄貨27枚だ。


 これだけあれば、奴隷も買えるだろうか。

 商会の人に聞いた奴隷商に行ってみよう。





 俺とアインスは奴隷商会に来た。

 商会の場所は分かりやすく表通りに看板を出していた。


 この国で奴隷制度が完全に認められている証拠だった。


「ようこそいらっしゃいませ、奴隷商のマンダです」


 こういう所の商人は小太りの眼鏡をかけた男というイメージだが、目の前にいるのは20台後半ぐらいに見える好青年にだった。

 これでここの責任者というのだから異世界とは不思議なものだと感じた。


「俺の奴隷とは今仮契約の状態でな、正式な契約を結びたい」


「かしこまりました。契約だけですと銀貨2枚頂いてますが、こちらは初めてご利用ということで半額の銀貨1枚で契約させて頂きます」


 俺は銀貨1枚を奴隷商に渡した。


「ありがとうございます。奥へどうぞ」


 建物の奥の部屋へ案内されるが、途中奴隷などは1人も見なかった。


「すみませんが、こちらの皿に血を貰えますか?」


 皿には焦げ茶色の液体があった。

 俺はアイテムボックスからナイフを取り出し、指先を切り血を入れた。

 奴隷商が用意したナイフを使わないのは念のためだ。


 奴隷商は血を混ぜると、続いてアインスの奴隷紋に上書きするように塗っていく。

 塗り終わると、小さな声で呪文を唱える。


「うっ!」


 奴隷紋が光り、アインスがうめき声をあげる。

 少し苦しいのだろう。

 十数秒後、光りは収まりアインスは落ち着きを取り戻す。


 名前:ゼント

 レベル:42

 魔法:〈火魔法(下)LV6〉

 スキル:〈剣王LV3〉〈槍士LV3〉〈闘士LV8〉〈投擲LV7〉〈隠密LV8〉〈自然回復LV10〉〈運搬LV8〉〈奴隷契約〉new〈鑑定〉〈アイテムボックス〉

 称号:無能


 名前:アインス

 レベル:14

 魔法:なし

 スキル:〈槍士LV4〉

 称号:ゼントの奴隷


 アインスの称号から(仮)が取れた。

 これで正式にアインスが俺の奴隷になったということだ。


「これで契約は完了です。もし宜しければ我が商会の商品をご覧になっては貰えませか?旦那様の奴隷を見るにとても状態が良く、こんな方に私の商品を買われたいと思っています」


 ちょうど奴隷がもっと欲しいと思っていたところにこの言葉だ乗せてもらおう。

 アインスに待機を命じて奴隷商と一緒に商品があるという二階に行く。


「お前のお世辞にのってやるんだ、少しはまけてもらえるんだろうな」

「これは手厳しいですね。善処させて頂きます」



 そんな会話をしていると少しボロついた扉の前に止まった。


「すでにこちらの部屋に奴隷を用意させています」


 中に入ると従業員にらしき人物を先頭に十数人の女性が並んでいた。


「旦那様の気にいるであろう商品を用意しました」


 全員が女性なのはそういう目的を持って買われると思われているのだろう。

 戦闘よりは料理など生活面をサポートしてくれる奴隷が欲しい。

 もちろん性奴隷としても優秀であって欲しくはある。


 戦闘もできるといいんだが、そこまでの願望はない。

 野営して分かったが、俺もアインスも料理では焼く以外の選択肢がない。

 これではいけない。

 ちゃんと料理のできる奴隷がいないとダメだ。


「性奴隷としてもそうたが、料理スキルがある者が良い」


「かしこまりました。こちらで厳選いたしますのでよろしければ1人1人見てください。今回は特別に多少触って確かめていただいて構いませんよ」


 料理スキルを持っていたのは7人だった。

 人族、獣人などの種類がいるが気になる点が出てきた。


「エルフはいないのか」


「すみません。エルフは大変入手が難しく、あの種族はズュートラニカ国から出ることが滅多になくてですね…」


「いないならいい」


 そのうちズュートラニカ国に行ってエルフを手に入れることにしよう。

 南にある国だったな。

 やはり異世界物でエルフは欠かせないよな。

 ここまで来ると、もう普通の仲間ではなく奴隷として欲しくなってくるな。


 俺は右から順番に見て行く。

 年齢も様々で上は20代後半、下は一桁代もいた。

 奴隷商が説明をしてくれるが、いまいちで気にいる人がいない。


 その中で1人、最後尾にいた少女に目を奪われた。

 奴隷達の服はアインスが最初に着ていた服に近く、胸部と臀部を最小限に隠している格好だった。


 俺が目を奪われたのは、その驚異的な胸部だった。

 アインスとは比べるのもおこがましいと言えるレベルだった。


 高校生ぐらいの顔で、髪は茶髪のショートヘアー、身長は160ぐらいか、胸は詳しくは分からないが、ぱっと見でF以上はありそうで爆乳と呼べるんじゃないかと思える程だ。

 他の奴隷と比べても1番と言える大きさだった。

 腕や足や尻は細くはないが太っているわけでもなく標準的な大きさでそれがより胸部の大きさを表していた。


 この奴隷を最後尾にしたのは、他の奴隷は引き立て役でこの奴隷を良く見せて買わせる為かもしれない。


「そちらの奴隷は以前とある貴族の給仕をしていたのですが、主人が体を求めた際に拒みそれが怒りに触れまして奴隷として売られて来ました。元々借金のある身でしてその返済として奴隷になりました」


「少し触るがいいな?」


 少女は目をつむり、体をこわばわせる。

 俺は右手で少女の肩を触り鑑定スキルを発動させる。


 俺は童貞ではないが経験が多いわけじゃない。

 いきなり胸を揉んだりなんかしない。

 そういうのは場所を選ばないといけない。



 名前:ナーヤ

 レベル:3

 年齢:15歳

 性別:女

 種族:人間

 魔法:なし

 スキル:〈料理LV4〉〈礼儀作法LV2〉

 称号:奴隷


 本人のレベルよりスキルのレベルが高いことがあるんだな。

 それだけ、料理に重きを置いていたのだろう。

 これは期待できるな。


 夜の営みを拒んだのもポイントが高い。

 処女を元から買うつもりでいたらかな。

 股の緩い女なんて嫌だ。


「こいつは…その……処女なのか?」


「はい、もちろんでございます。健康状態も良く病気も持っていません」


 保証書もちゃんとありますと、従業員に取りに行かせるように言うが、そこまでしなくていいと伝えた。

 俺の中でこの少女を買うことをもう決めている。

 後は今の所持金で足りるかどうかだな。



「こいつはいくらなんだ?」


「はい、金貨5枚になります」


 所持金で買える値段だが、予想より高いな。

 所持金の半分以上使って買うかどうかとなると考えてしまう。

 収入が安定していないままで奴隷を増やすのもリスクがあるな。

 冒険者ギルドで騒ぎを起こしてしまったため、この街での魔物買取に問題が出る可能性がある。


 だが、よく考えてみればここで永住するわけじゃないんだから問題はないな。

 危険はあるが野営しながら旅をすればいい。

 俺のレベルなら戦闘で特に問題は起こらないだろう。



「ずいぶんと高いな」


「この年齢でこの容姿ですから、さらに処女で病気も持っていないとなるとどうしても高くなってしまうんです」


 今回の目的は奴隷契約と奴隷契約魔法を覚えることが目的で奴隷を買うことが目的ではないんだよな。


 しかし、目の前の少女を手に入れなければ後悔するような気がする。

 こういう感は良く当たったりする。


「キープはできるのか?」


「金額の1割ごとに7日間のキープは可能です。購入されない場合には前金はお返ししてますが、期間を過ぎてのお返しはしていませんのでご注意ください」


 俺はアイテムボックスから金貨1枚を取り出し奴隷商に渡す。


「ありがとうございます。14日後を楽しみにしています」


 とりあえず今日はキープして、宿でアインスと今後のこと話し合ってから買おう。

 アインスがどうしても嫌だというなら仕方なく諦めよう。

 その可能性は低いだろうが、確認もせずに突っ走るのも危険だったりするからな。


 もう日が暮れる時間だ。

 アヌビス商会にもう一度行き、金貨1枚分の服や日用品、回復薬など戦闘や野営で必要となる物を買い揃え宿に戻ることにした。

 馬車や荷車なども売っていたが、今の所持金では到底買えない金額だった。


 アイテムボックスがあると荷物の量を気にしなくていいから楽でいいな。

 

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