第5話 救出作戦

 

 深夜、作戦決行の時間が来た。

 雲もなく月が出ていて多少明るいが問題はないだろう。

 ちょうど今夜は満月だ。

 

 建物の中がまだ明るい。

 あいつらが寝静まるまで待とうかと思うが、人質が心配なので中断はしない。


 見張りは夕方とは別の男2人がしていた。

 まずは隠密スキルを使って、建物の影を通り見張りの男達に近づく。


「今日の儀式が成功すれば、俺たちも組織での株が上がってうはうはだな」

「あぁ、捕まえるのに苦労したがあの女の命も今日までだ」

「見た目はいいから、殺す前にヤッてみたいな」

「バカ、そんなことしたら親分に俺たちが先に殺されちまうよ」


 

 どうやら人質の命のタイムリミットは近いようだ。

 急がなければ。

 それに組織だっての行動というと、なんの組織だろう。

 人を誘拐するから盗賊か何かだろう。

 となると檻に入れられた人は一般人ではなく、重要な人物なのだろう。


 盗賊達にギリギリまで近づくと、そこから素早く闘士スキルを使い戦闘不能にする。

 叫び声も上げさせない。


 闘士スキルが上がり自分がどう動けばいいかが分かる。

 急所を突くのも容易くなってくる。


 盗賊から剣を奪い何回か素振りをする。


 名前:ゼント

 レベル:15

 魔法:なし

 スキル:〈剣士LV1〉new〈闘士LV7〉up〈投擲LV4〉〈隠密LV6〉up〈自然回復LV7〉〈運搬LV5〉〈感知〉〈鑑定〉

 称号:無能


 よし、予想通り剣のスキルが手に入った。

 レベルも上がった。

 

 ここで俺は覚悟決める


 盗賊の喉元に剣を突き刺した。

 人を殺したという感覚が剣から手から伝わってきた。

 だが、ここで怖気付く訳にはいかない。

 もう1人の盗賊にも剣を突き刺した。


 名前:ゼント

 レベル:18

 魔法:なし

 スキル:〈剣士LV4〉up〈闘士LV7〉〈投擲LV4〉〈隠密LV6〉〈自然回復LV7〉〈運搬LV5〉〈感知〉〈鑑定〉

 称号:無能


 人を倒すより、殺したほうが経験値が稼げるというのは予想していたが酷い設定だ。


 人質を救い出すのに殺す必要はないかとう考えがない訳じゃないが、後々のことを考えると殺しておいたほうがいい。


 俺は一度入り口から離れて、ある道具を準備する。


 道具をおもいっきり教会の窓に投げつけた。

 角兎の死体だ。


 ガラスが割れた音と共に教会の中から慌てた様な声がする。

 感知スキルのおかげで中の人物が窓に近づく人と入口方向に進んでくる人がいるのが分かる。

 俺は入り口に回り込む。


 盗賊の1人が慌てて出て来るが、俺は素早く盗賊の首を切り裂く。


 後ろから2人盗賊が斬りかかって来るが、剣を避け、1人の首を裂き、もう1人は胸に突き刺す。


 中を確認すると、

 敵の残りは5人。


 下っ端が3人、3人とも武器は剣のみだ。

 大柄な奴が1人、大きな斧を持っている。

 杖を持ってフードを被ってるのが1人

 人が入った檻を囲むように配置している。

 檻の下には魔法陣があり、まさに術式の途中といったところだ。

 フードを被った人は魔法使いなんだろう。

 魔法を撃たれたら厄介だな。

 こっちはまだ魔法スキルは0だというのに。


「誰だ!キサマ!」


 大柄な奴が叫ぶが、俺は返事なんてしない。

 頭の中がそれどころじゃないからだ。


 大柄なヤツと一緒に下っ端3人が襲いかかって来た。

 上手く連携が取れているせいで中々反撃出来ない。


 すると、急に盗賊達が左右に別れて移動した。


「ファイヤーボール!」


 奥から直径1mぐらいの火の玉が襲ってきた。

 慌てて真横に飛び込むように緊急回避する。


 びっくりしたー!


 今のが魔法か、初めて見たが恐ろしいな。

 後ろの方でボォ!っと音がしたが気にしてる暇はない。


 俺は体制を整えて、敵の陣形が戻る前に下っ端2人を切り裂き、魔法使いへ迫る。


 呪文を唱えているが、俺の剣の方が早く体を貫く。


 後は2人だ。


「てめぇ!」


 大柄な男が斧を担いで迫るがスピードは速くない。

 ここで俺はあることを気付き、試すことにした。


「ファイヤーボール!」


 

 先程の魔法使いよりも大きい火の玉が大柄な男に命中し倒れた。

 あちこちで火傷しているが死んではいないだろう。


 やっぱり魔法を会得していた。

 こんな状況でも魔法を覚えられるなんて、『無能』は素晴らしい称号だ。



 もう1人の下っ端は慌てて入り口に向かって逃げるが俺はすぐに駆け出す。

 下っ端に追いつき、頭を強打させて気絶させる。


 その後は簡単だ。

 2人の喉元に剣を突き刺しておしまい。


 これで戦闘は終了だ。

 あとは鍵を見つけて、檻に入っていた人を救出するだけだ。

 そう思うと急に緊張感が抜け、吐き気が襲ってきた。


 そこら中で血だまりが出来ていた。

 腹に溜まっているものがないため、胃液ぐらいしか出ない。


 人を殺す感覚が改めて襲ってきた。

 とてもじゃないが気持ちのいいものじゃない。

 今夜はもう何も食べれそうにない。

 ただ水は欲しいな。


 名前:ゼント

 レベル:35

 魔法:〈火魔法(下)LV3〉new

 スキル:〈剣王LV1〉up〈闘士LV8〉up〈投擲LV5〉up〈隠密LV6〉〈自然回復LV8〉up〈運搬LV5〉〈感知〉〈鑑定〉

 称号:無能


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る