第4話 廃墟


 運搬スキルのおかげで、多少運ぶのに楽はなったが、戦闘して疲れた体にはこたえるな。

 でもじっとはしていられない。

 水と食料の問題がある。


 それに別の動物に襲われるとも限らないからな。

 まぁ、敵はさっきの角兎程ではないだろうけど。


 休みを挟みつつ2時間程歩き、もうすぐ夕方になるんじゃないかという時間だ。


 人も動物も川もない。

 森が続くだけだ。


 このままだと、夜営の心配をしなければならないがどうすればいいだろう。

 木の下で寝るのは危ないから、廃墟でもいいから建物の中で眠りたい。


 さらに歩いていくと、木の間の奥に建物を見つけた。

 しかも普通の家より大きそうだ。

 俺は急いで建物に向かった。

 やっと人に会えると思うと嬉しかった。


 そこは教会のような廃墟だった。

 もう何十年も人が住んでいなかっただろうというのが感じ取れた。


 そこまでならまだ良かったが、

 入り口に剣を持った男が2名見張りをしていた。

 隠れながら様子を伺うが、聖職者ではないのが見て分かる。

 ヤバイところに来てしまったという気分だ。


 名前:ゼント

 レベル:2

 魔法:なし

 スキル:〈闘士LV1〉〈隠密LV1〉new〈自然回復LV3〉up〈運搬LV3〉up

 称号:無能


 また新しいスキルを獲得した。


 どうしよう。

 帰りたいけど、帰る場所がない。

 話しかけてみたら実は良い人で水と食料を分けて貰えたり……

 そんな訳がない。

 持っている武器で攻撃されるだろう。

 最悪殺されてしまうな。

 うん、早く離れよう。


 そんなことを考えていると、見張りの男達が動き出した。

 気付かれたと思い焦るが、男達が向かう先は俺とは逆の方向だった。


 そちらを見てみると、檻に入れられた人を見つけた。

 6人の男達が檻を教会の中へ運ぶ。

 その後ろに大柄な男が付いて行く。

 もう絶対に悪役の人達だよ。


 勇者だったらここで悪役どもを倒し人質を救い出すのだろうが、


 俺は無能だ。


 勇者じゃない。

 だから、誰かを救うことなんてできない。



 そんなわけないだろ!



 俺は作戦を立てる。

 自分の能力と出来ることを考える。

 決行は深夜だ。

 闇夜に紛れて敵を討つ。


 今すぐに敵を倒して囚われた人を救いだせという声も上がるだろうが、今の俺のレベルで正面切って相手を倒せるとは到底思えない。

 それまでに囚われた人が死んでしまうかもしれないが、わざわざ連れて来てすぐに殺されることはないだろう。


 それまでの時間何をするかと言うと決まっている。





 レベル上げだ!






 残念でショックな事と嬉しい出来事があった。


 俺が最初に倒した角兎はただの雑魚だった。


 教会から離れた俺は角兎に10匹以上遭遇した。

 3匹同時に現れたときは死を覚悟した。


 それでも俺は勝った。


 猪のような俺の身長(170㎝前半)より大きかったヤツに遭遇した。

 倒し方は角兎と変わらないが、大きさの割に数発殴っただけで倒せてしまった。


 結果ステータスが次のようになった。



 名前:ゼント

 レベル:14

 魔法:なし

 スキル:〈闘士LV6〉up〈投擲LV4〉new〈隠密LV5〉up〈自然回復LV7〉up〈運搬LV5〉up〈感知〉new〈鑑定〉new

 称号:無能



 3時間ぐらい戦い続けていただろう。自然回復スキルのおかげで体力やスタミナが早く回復する。


 途中で小さな川を見つけられたおかげで飲み水に苦労することが無くなった。


 新しいスキルも手に入れた。


 石を投げていたら投擲スキルを獲得し、倒した角兎や猪を触って調べていたら鑑定スキルを手に入れた。


 感知スキルのおかげで隠れている角兎を簡単とは言えないが見つけることができた。


 鑑定スキルは手にしたもの、触れたものがどんなものか分かるスキルだった。


 スキルレベルがないのは、そういう種類のスキルもあるということだろう。


 このスキルは人にも使えるようで、自分のスキルについても詳しく分かるのだ。

 俺は『無能』の能力がなんなのかが分かった。



 称号:無能

 無限にレベルが上がる。

 無限にスキルを獲得する。

 人の100倍経験値を得る。



 これはすごくいい。

 他人より早く成長出来るということはすぐに上に立てるということだ。

 しかも上限がないというのはすごい。

 もうそれは神にも匹敵する能力を身につけられるということではないか。



 『無能』なんと素晴らしい称号なんだ!



 女神様へクソ呼ばわりしたことを心の底から謝罪した。


 作戦決行の時間まで盗賊達の様子を伺いながら休憩することにした。

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