第3話 転生した
そこは森の中だった。
転生する場所の話を聞いていなかったが、まさかこんな場所だとは思わなかった。
太陽の位置からして昼間あたりだと思うが、よくわからない。
なんか気温が高い気がする。
俺は自分の姿を確認する。
16歳と設定したからか、体つきが高校生の頃のようだ。
7年若返ったことになるな。
運動部には入ってはいなかったし、鍛えてもいなかった。
平凡な少年ということだ。
顔も当時の通りだとすると期待はできない。
さすがに見た目までは祝福をもらえなかったということか。
服装は死んだ時のスーツというわけはなく、上は麻で出来たシャツに皮のベスト、下はカーキー色のズボンに皮の靴だ。
おそらく女神様がこの世界の文化の服装に合わせてくれたのであろう。
武器や防具などのアイテムは何も持っていない。
初期アイテムぐらい持たせてくれてもよかったのに。
じっとしていても何も起こらないようなので、適当に歩いてみよう。
街か村の近くならいいが、どこに向かえばいいか全くわからない。
開けた道もないので、草むらの中の進んでゆく。
ゲームだと簡単に進むが、現実となるとこれは歩きにくい。
それでも立ち止まるわけにもいかず進んでゆく。
1時間程歩いたが、未だに森の中だ。
水や食料の心配もしなければならない。
川がみつかれば、水と魚が確保出来ると思うのだけど見つからない。
音も聞こえない。
ん!
5m程先の開けたところに兎を見つけた。
ただ、額に角が生えていた。
明らかに元の世界にはいない生き物だ。
異世界に来たという実感が湧いてくる。
大好きなゲームの世界に入った気分になってテンションが上がってきた。
迂回することも考えたが、自分の強さを試すいい機会だ。
俺はステータスと思い浮かべると、四角い画面が出てきた。
本当にゲームみたいだ。
名前:ゼント
レベル:1
年齢:16歳
性別:男
種族:人間
魔法:なし
スキル:なし
称号:無能
どこがチートなんだよ!
俺は頭を抱えて唸った。
レベル:1 だし、魔法やスキルもない。
しかも称号が『無能』って、
なんの祝福なんだよ! あのクソ女神め!
人を助けた褒美がこれって、
ここでも俺は無能のまま生きろってのかよ。
ふざけんな!
あーあーと唸っているといつのまにか、角兎が近くまで来ていた。
そして、俺に向かって突進してきた。
咄嗟に避けようとしたが足がかすってしまった。
痛い!
普通の異世界転生話ならこんな敵に苦戦なんてしないのだろうが、今の俺にとってはこの角兎が化け物に見えている。
また角兎が突進してきた。
今度は横に跳んでちゃんと回避できた。
よく見ると、角兎は突進した後ブレーキをかけて無防備になる時間がある。
作戦は決まった。
角兎が3度目の突進をしてきた。
俺は完全に回避し、無防備になった角兎に飛びかかった。
角兎は暴れるが俺は体重をかけ左腕で捕まえながら右手で殴った。
何回も何十回も殴った。
そのうち角兎は動かなくなった。
「勝った……勝ったんだ!俺は勝ったぞ!」
初めての戦闘で勝利した。
とても嬉しかった。
強敵だけあって厳しい戦いだった。
すると、頭の中にピンッと何かを感じた。
もしかしたらと思い、俺はステータスを確認した。
名前:ゼント
レベル:2
魔法:なし
スキル:〈闘士LV1〉new
称号:無能
レベルが上がった。
それにスキルも獲得した。
きっとあの角兎はこの森のボスのような存在なのだろう。
1匹倒しただけで、レベルが上がったんだ。
それだけ強敵だったのだろう。
スキルを得たのはあれだけ殴ったからだろうと解釈した。
腰を落とし、一息つく。
右手と右足から痛みが出てきた。
殴ることに集中していて気付かなかったが、手に痣などが出来ていた。
骨折はしていないだろうから打撲かな。
足からは少しだか血が出ていた。
痛いし早く治らないかなと思っていたら、また頭にピンッと感じる。
名前:ゼント
レベル:2
魔法:なし
スキル:〈闘士LV1〉〈自然回復LV1〉new
称号:無能
またスキルが増えていた。
何故だろう?
なんか微々たる感じだが、痛みが引くような感じがする。
スキルってこんな簡単に手に入るものなのか?
謎が増えるが考えるのは後だ。
まずは目の前の角兎をどうするか考えよう。
火はないから調理はできない。
生で食えるとも思えない。
俺はしょうがなく、近くあった蔓で角兎を運ぶことにした。
少し重いが折角見つけた食料だ。捨てるにはもったいないからな。
名前:ゼント
レベル:2
魔法:なし
スキル:〈闘士LV1〉〈自然回復LV1〉〈運搬LV1〉new
称号:無能
新しいスキルが手に入ったがもうどうでもよかった。
早く人に会いたい。
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