第2話 女神様にあった

 

 そこは白い空間だった。

 辺りには何もない。

 上下左右見ても何も無かった。


 俺の身体も無かった。

 どうやって見ているのかも分からない。


「目覚めたのですね」


 突然目の前に、古代ギリシャ風の格好をした女性が現れた。

 綺麗なお姉さんという感じで、どこか神々しく輝いてるようだ。


「はじめまして、私は女神ディスヴァーナと申します」


 おぉ! 女神とか現実で初めてみた。

 とても美しいな。

 ネットでいろんな二次元的な女神を見てきたが、想像してたよりもすごくいいな。


「突然ですが、青島一真さん……あなたは死んでしまいました。あなたには2つの選択肢があります。1つは元の世界に今より良い見た目になり生まれ変わること。もう1つは女神の祝福による能力を身につけて私達が管理するあなたがいた世界とは別の異世界に転生すること。あなたはどちらを選びますか?」


 混乱する頭で考えるがどうもついていけない。

 というか、頭が無くなってしまったのにどこで考えてるのだろう?


「なんでそんなに好待遇なんだ?」


 なんかこうも良い話には裏がありそうな気がしてならない。

 高い給料に目がくらんでブラック企業に就職してしまった反省からの教訓だ。


「あなたは人を助ける為に死にました。それはとても素晴らしいことです。そこで女神から祝福を与えることにしたのです」


「異世界に転生したら、魔王を倒すなり使命があったりするのか?」


「魔王は既に討伐されました。異世界は平和の真っ只中にあります。特にあなたにやってもらいたいことはありません。ただ私はあなたの行いに対し正当な評価による判断をしているだけです」


 つまり、チート能力を身につけて異世界を満喫できるということか……


 なんと素晴らしいことだろう!


 未練は多少あったが、現世の人生なんてクソゲーだ。

 コンテニューもニューゲームもする気なんてない。


 目の前に夢にまで見た異世界転生があるんだ。

 それに飛び込まない訳ないだろう。


「異世界に転生させてください!」


「わかりました。準備をしますので、異世界でのあなたのステータスを決めますので、これからする私の質問に答えて下さい」


 女神様の質問はこうだ。


 名前

 性別

 年齢

 種族


 俺の回答


 名前:ゼント

 性別:男

 年齢:16

 種族:人間


 名前はドイツ語で千という意味のタウゼントから名付けた。

 いつもゲームで俺が使っている名前だ。

 性別はそのままにした。

 年齢は異世界では15歳で成人なので、とりあえず1つ上にしてみた。

 異世界には獣人やエルフなどがいて、異種族になることを考えてみたが人間のままでいいと思った。

 恋愛対象してならありだけどな。


「魔法やスキルなどは選べないのですか?」


「そちらについては問題がないことが転生後にわかるでしょう。それと言葉や文字については転生後使えるようにいたしましょう」


 説明がないのは不安だがここは女神様を信じよう。


「それでは転生の儀式をはじめ…」

「ちょっと待って下さい」

「なんでしょうか?」


 俺は気になっていたこと聞いた。


「俺が助けた成宮さんがどうなったか聞かせてもらえませんか?」


 薄っすらと成宮さんの顔が思い出される。

 あの泣き顔を忘れることは一生ないだろう。

 自殺なんてもうして欲しくないからな。


「あの後すぐに死にました」


 え!

 女神様から聞いたのは、信じられない言葉だった。


「あなたが助けた後、居眠り運転のトラックがあの場にいた人々を死に至らしめました」


 この世界は残酷だ。


 どこかで聞いたようなセリフがあたまに浮かんだ。

 なら、あの場で俺が成宮さんを助けようが、無駄だったじゃないか。


「彼女の死に方を変えたことは誇らしいことです。自殺と事故死ではその死の意味が大分変わります」


「成宮さんも転生するのですか?」


「それは教えることはできませんが、あなたが気にすることがないように対処することを約束しましょう」


 死んでしまったことは非常に悔やまれることだが、成宮さんの来世に幸せがあるように願っていよう。


「では新ためて、転生の儀式をはじめます」


 足元に半径2m程の魔法陣が展開される。

 白い光が俺の体を包み込んでいき、スンッとその場から消えた。


「あなたの新しい人生に幸あらんことを」

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