第5話
民俗学者の息子として、この手の話はいやというほど聞かされている。
今だけは非科学的なその話が
そんな彼の目に
「父さん……父さん!」
ミソギ少年は声と力を振り
「――ミソギ?」
父はふと顔を向けた。ミソギ少年はほっと胸をなで下ろす。
されど悲しいかな、希望はつかの間の夢だった。
「――気のせいか」
父はそっと顔を
暗くとも見えよう、遠くとも聞こえよう。なのに父の歩みは止まらない。
とうとう息子に気づかぬまま、父は人里へ向けて二股道を通り過ぎてしまった。
「そんな……!? 父さん! 待ってよ父さ、あっ――!?」
ミソギ少年は走り
「つっかまーえた」
背後から告げられた決着の一言により、彼ははたと思い知る。立ち上がれないほど体が重いのは、ランドセルもろともユウキに乗りかかられているからだと。
「ミソギったらずるいよ。鬼さんこちらって、一回も言ってくれないんだもん」
「ユウキ……!」
「次はミソギが鬼ね。あっ今度はぼくが目隠ししてあげる」
「もう、いいだろ……それに暗くなるまで遊んでたら、父さんにだって」
「怒られないよ。だってきみ、もう誰にも気づいてもらえないからね」
「――え?」
ミソギ少年は我が耳を疑った。
なぜを問われるまでもなく、三日月を思わせる口元からさらなる言葉が
「見た目、弱り目、ひどい目――古来より目は人の様子や性質、ときには体験をも意味する。それを隠されたんだから、気づかれなくて当然だよね」
「うそだ!」
「でもだいじょうぶ。きみの目を隠したのはぼくだから、ぼくだけはきみを見つけられる」
「……うそだ、そんなこと……」
今にして
孤立すれども
「きみをひとりにはしないよ。ぼくがこれからもずっと《目隠し鬼》で遊んであげるからね?」
「いやだ、助けて…………父さん……」
少年の
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