第1章 魔法少女が見ている夢。08話

学校からの帰り道。

あさひはずっと昨日のことが印象に残ってて。

なんだかずっと夢見てるみたいで。

いつものように起こしてもらって。

いつものように一緒に学校に行って。

いつものように並んで歩いている。

そんなえちるが……。


あさひ「本当に魔法少女なんだな」


えちる「……うん……」


えちるは小さく頷く。

そう言われると。

昨日のことは本当に現実なんだなって。

あさひは再確認することができた。

あの後……。


桜子「私は家に帰りたいからこれで」


桜子はそう言ってすぐにいなくなった。


円「本当に記憶をあれしなくていいんだよね?」


小悪魔「ソウダナ」


小悪魔「ソイツハナニモシナクテイイ」


えちる「もしかして……知り合い……だったりする?」


小悪魔「…………」


あさひ「いや……」


あさひ「さすがにこんなファンシーな知り合いはいないな」


小悪魔「ダソウダ」


円「ふーん」


円「まぁいいっていうならいいんだけど」


そんな感じで。

あさひは記憶をあれされることなく帰宅できて。

今もちゃんと魔法少女のことを覚えてる。


えちる「でも……」


えちる「……本当に……びっくりした……」


あさひ「俺がいたから?」


えちる「それも……あるけど……」


えちる「……本当は……ね」


えちる「姿を……見られても……わたしって……」


えちる「認識……できないように……なってる……」


あさひ「えちるを知ってる人でもえちるって分からないってことか?」


えちる「……うん……」


えちる「魔法少女のことを……知らない人には……」


えちる「そう……見えるって……」


あさひ「そうなんだな」


なぜ自分は魔法少女の正体が分かったのか……。

あさひは考えてみるけれども。

その答えは全く出てこなくて……。


あさひ「えちるはどう思う?」


えちる「えっと……私も……分からない……かな」


あさひ「だよな」


えちる「ドミドゥ……はね……」


あさひ「それはあの小悪魔の名前?」


えちる「……うん」


えちる「何か……知ってる……みたいだったけど……」


えちる「教えて……くれなくて……」


あさひ「まぁそこらへんは気にはならないかな」


あさひ「別に困ることでもないし」


あさひ「えちるが魔法少女だって知れて嬉しかったからな」


えちる「……いや……じゃない?」


あさひ「嫌なわけないだろ」


あさひ「えちるにぴったり似合ってるしな」


えちる「ありが……とう……」


えちるは小さく微笑む。

本当に嬉しくて。

自分が魔法少女になれた時より嬉しくて。


あさひ「でも……」


あさひ「いつもあんな悪魔と戦ってるのか?」


えちる「いつも……じゃないよ……」


えちる「本当に……たまに……だから……」


えちる「いつもはね……」


えちる「困ってる人を……助けたりとか……」


あさひ「そういうのの方がえちるらしいな」


えちる「私も……そういうのの方が……好き……」


また小さくえちるは微笑んで……。


えちる「あ……」


小さな声を出す。

えちるの先には大きな木があって。

風船が木にひっかかっていて。

その下には男の子がいて。

男の子は風船を気に入っていたのか。

じっと見つめていて……。


えちる「取って……あげて……くるね」


あさひ「え……?」


といった時には。

えちるはあさひの隣からいなくなっていて。

ゆっくり、ふわりと。

木の方に飛んでいった。

まるで無重力みたいに。

軽やかにえちるは風船をつかまえる。

その下では男の子が少し驚いた感じで見ていて……。


えちる「はい」


えちる「もう手を離しちゃ駄目だよ」


えちる「大事なものはね」


えちる「しっかりつかんでおかないと」


男の子「ありがとうっ!」


男の子「もう絶対に離さないっ!」


えちる「うん」


男の子の言葉ににっこりと微笑むえちる。

その表情はとても柔らかくて。

凄く嬉しそうなもので。

あさひはやっぱり。

えちるは誰かを助けてあげることが。

えちるが魔法少女でいることが。

とても似合っていて。

そのことがとても嬉しく思えた。

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