第1章 魔法少女が見ている夢。04話

えちる「……可愛かったね……」


あさひ「そうだな」


知久「惚れたか?」


あさひ「そんなわけないだろ」


あさひ「家族と仲いいっていうのは好感が持てるけど」


あさひ「……まぁそれぐらいかな」


知久「あさひってけっこうあっさりしてるよな」


あさひ「そうか?」


あさひ「普通だと思うけれど」


えちる「……うん……」


えちる「あさひくんは……優しい……」


えちる「朝も……起こしてくれるし……」


知久「まぁえちるには優しいよな」


知久「俺には優しくなけど」


あさひ「モーニングコールでもしてやろうか?」


知久「あさひの声で目覚めても嬉しくないな」


あさひ「だろ」


知久「そもそも俺の方が早起きだし」


あさひ「それもそうだな」


いつものような雑談。

あさひと知久は特に転校生への関心もなく。

しいていうなら……。

ああいう風に質問攻めされたら大変なんだろうな。

と転校生とその周りの人達の会話が耳に入りつつ……。


あさひ「転校生が気になるのか?」


えちる「え……」


えちる「……私?」


あさひ「うん」


あさひはえちるに言った。

えちるはいつものように見えたけれども。

たまに転校生の顔を見ていることに気がついた。

えちるが他人に関心を示すのは珍しいことで。

だから思わず聞いてしまった。


えちる「うん……」


えちる「ちょっと……知ってる人……かもだから……」


あさひ「えちるの知り合い?」


そうは言いつつ。

あさひはぼんやりと疑問を持つ。

えちるとあさひは幼馴染で。

ほとんどの知り合いは共通だったから……。


えちる「知り合い……ってわけでもなくて……」


えちる「……もしかしたら……」


えちる「違う……人かも……しれないし……」


えちる「でも……」


えちるはたどたどしく喋るのが癖になっていて。

そうやってしか喋れなくて。

そういうのが気に障る人もいるみたいだが。

あさひと知久は特に気にもせずにえちるの話を聞いた。


えちる「えっと……その……」


えちる「一緒に……お話を……してみたい……なって……」


あさひ「そっか」


言いながらあさひは転校生の席を見る。

まだ質問攻めにあっている。


あさひ「昼休みになれば一段落つくだろうから」


あさひ「その時がいいかもしれない」


あさひ「なんなら俺が……」


えちる「……ううん」


えちる「私が……声を……かける……」


えちる「2人で……話したいことが……あるから……」


あさひ「そっか」


あさひ「それなら昼休みに一緒に食べようって誘えばいいかもな」


知久「俺もそれでいいと思う」


知久「見た感じ、みんなでわいわいって感じでもなさそうだし」


知久「まぁあさひは寂しがるかもだけどな」


あさひ「んなわけないだろ」


あさひ「話したいなら俺は気にしなくていいからな」


えちる「うん……ありがとう……」


えちると転校生。

2人がどういう関係なのかはさっぱり分からない。

聞いた感じだと知り合いの知り合い。

みたいな雰囲気があるとあさひは思う。

でもまぁいいことだよな。

そう結論づけた。

ちょうどその時……。


円「知久はいるか?」


がらっと扉が開いた。

扉のところで教室を見回す女子生徒。

生徒会長の円。

身長が高くてきりっとしていて眼鏡が似合って。

男子はもちろんのこと女子からも人気の高い人物。


智久「いますよー」


そんな円に知久は憧れていた。

人間的にも、恋愛的にも。


知久「昼休みに話し合いですか?」


円「そんなところだ」


円「遅れないようにな」


知久「了解です」


それで2人の会話が終わり。

円は扉をゆっくりと閉めて。

自分の教室へと帰っていくようだった。

とても短い言葉と時間。

しかし……。

最初は来ても来なくてもいいと言われてたが。

今ではこうやって教室まで来てもらえる。

その変化を3人とも嬉しく思っている。


知久「ってなわけで」


知久「俺は生徒会室に行くことになったから」


あさひ「そうみたいだな」


知久「本当に寂しくないか?」


あさひ「寂しいわけないだろ」


あさひ「俺はそこまでデリケートにできてないからな」


知久「それもそうだな」


今日は学食でなんか食べるか。

そんなことを考えつつ。

えちるも知久もうまくいくといいなとあさひは思った。

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