第6話 砂浜

 家から徒歩10分ほどにある砂浜は、そのままあった。


 波打ち際で海水をさわる。感触は同じだ。瀬戸内海の島々も見えた。


 海まで出れば、そこで世界は終わり、現実へ戻る方法があるかも? という甘い予想は外れた。


 砂浜に座った。これからどうするか? と考える。


 ちょっと、ため息をついて空を見上げた。空は青空で、所々に雲があった。


 これ、スタート時の設定が辛すぎんぞ。最初の村から出て、スライムにやられるパターンだ。


 自分の他に、千人のテストプレーヤーがいるはずだ。その人たちも転生されたんだろうか? だとしたら、はたして、このスタート状況から何人生き残れるのか。


 遠くの岩場に、ざわざわと動く小さな生き物が見えた。おそらくフナムシだ。


 待てよ。両手で輪っかを作って交差させた。


「アナライザー・スコープ!」


  名前:フナッシー

  体力:1

  魔力:1

  攻撃力:1

  防御力:1

  水晶:1


 うわあ、名前、どっかのキャラクターとかぶってる。


 それより「水晶1」とある。これ、お金の換金システムと考えていいだろう。モンスターを倒したら、お金と経験値、これは初代ドラクエから変わらない基本システムだ。


 岩場に行ってみた。


 おお、そこらじゅうにフナッシーだ。


「水晶1」が、いくらになるのかは解らないが、1Gにはなるだろう。1G=100円。そう思うと、百円玉が無数に転がっている光景に見えてきた。


 近くの丸い岩を掴む。さあ、小銭を稼ぐぜ!


 夕方近くまで、フナッシーを潰しまくった。潰すと、その死骸の上に小さな水晶のかけらが出てくる。それをリュックに入れた。


 潰して拾う、潰して拾う、という作業を延々と続けた。


 三百匹は殺しただろうか。ふいに気分が悪くなり、波打ち際に走る。げえ、と吐いた。朝から何も食べてないので、胃液の酸っぱい味が広がる。


 持っていた岩を投げ捨てた。砂浜に向かって歩く。


 考えると、ガキのころでも、こんなに昆虫を殺した事はない。短時間に小動物を殺しまくるというのは、かなり精神衛生上に良くない。


 砂浜に沿った道に、海の家のような建物があった。看板を見ると「氷屋」と書かれてある。いいね。おそらくカキ氷だろう。行ってみる事にした。

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