第5話 第一村人発見
よし、落ち着こう。だいたいわかってきた。
部屋に戻り、あちこち探った。机の引出しは空っぽ。ベッドの上に革製のリュックがあった。中に銅貨が10枚入っている。
自分のパラメータを確認。たしかに持ち金「10G」となっている。これ、とりあえず店を探して、通貨の価値を確認したほうが良さそうだ。現実の場所が元になっているなら、近くにコンビニがあるはずだ。そこまで行こう。
コンビニまで歩いているとわかったのが、現実の世界とまったく一緒ではない。家が少なすぎる。おそらく七割ほど間引きされている感じだ。
これ東京とか、どうなってんだろな。興味はあるが、調べるすべがない。
歩いて10分ほどでコンビニに着いた。
おお! 石造りだ。小さな四角い形は同じだ。ただし、こちらは石造りの中世風。入り口は西部劇の酒場みたいな両開きの扉になっている。雰囲気あるねぇ。
木の看板に「よろず屋」と書かれている。
中に入ってみると、木の棚に商品が並べられていた。日用雑貨みたいだが、まるで骨董品屋にいるようだ。
木のカウンター横には現実の世界ならタバコだが、そこにはパイプとパイプ草が置かれていた。タバコは吸わないが、パイプなら吸ってみようかな。金ができたらだけど。
食料は奥のようだった。天井から吊るされた鶏まるごとが見える。
行ってみると食料の棚には竹で編んだザルがあり、中に竹皮に包まれた「おにぎり」が入っていた。
おにぎりかよ。中世風にするなら、パンとかじゃねえのかよ。これじゃ時代劇だ。
視界の右下に「?」マークがあるのに気づいた。焦点を合わすと、おにぎりの解説が出た。
名前:おにぎり
効果:体力+10
価格:1G
ということは、1Gは百円って感じか。お金の相場がわかった。現在の所持金は10Gだから……
千円? うわぁ、人生で一番貧乏かも。
店内をまわると「麻の服」を見つけた。価格10G。今、自分が着ている服がそうだ。おれは千円の服を着ているわけか。ユニクロも真っ青の低価格だな。
ナイフ! 100G! 高え! でも攻撃力が+20だ。
ははあ、これなら一撃で、さきほどの野良犬をやっつけられる。
とりあえず、今の所持金で買うべき物はないな。コンビニ、いや、よろず屋を出た。
あっ! さっきの店員に話しかければ良かった。この世界での記念すべき第一村人だ。村人の言葉はAIが自動で作っているはずだ。「こんにちは」ぐらいなら返すだろうが、例えば「昨日の巨人勝ちました?」なんて質問には答えるのだろうか?
まあ、島に人がいて良かった。異世界化した小豆島に一人だけだったら怖い。
しかし、あれだな。この世界に果てはあるのだろうか?
「ラスティ・アース」はグーグル・マップをそのまま中世にした世界だ。果てなどない。だが、おれが転生したのは、本当にラスティ・アースなのか? それとも、何か偶然にできた幻想の世界なのか?
ちょっと海まで出てみるか。意外に世界はそこで終わり、現実に戻れるかもしれない。
おれは近くの砂浜に向かって駆け出した。
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