第2話 良くも悪くも、長い付き合い

彼女とは、それなりに長い付き合いとなる。

ゲームとして見たなら、もっと長く付き合ってるやつというのは沢山居る。

人として見たなら、もっともっと長く付き合ってるやるらがごまんと居る。


だが基準というのは人それぞれだ。

私の基準で言えば、彼女とは長い付き合いだ。

そしてそれで良い。


さて、その長い付き合いというやつは様々な意味で想定外ではあった。

プレイヤーの私にとっての想定、これもそうだがそれは飽きが来るとかそういう意味ではない。

架空としているから何も問題無いか、ここは。

端的に言えば公式の供給ペースが、遅い。

当初予定していたものよりも、遥かに遅い。

それについては別の話だ、どちらにせよ長い付き合いとなるのだ。



【彼女は、世間から見捨てられた街を救いました。】

【彼女自身が酷い目にあわされたその土地を。】

【手立てを見つけてなお、協力を渋った者たちも沢山居ました。】

【何せ財布を預けろだとか、それ以上の協力を要求したのです。】

【そして彼女は、物語の出だしという事も相まって、街を救う賭けを無事成功させる事が出来ました。】

【一件落着です。】



めでたしめでたしとは行かない、まだ始まったばかりだ。

その時の彼女の踊りと歌は有名で、絶品だった。

私は良いね、と単にそう思った。無味乾燥なものではないが、そう……ちょっといい感じの短編に出会った気分だ、まだ。


あぁ、"歌"としておこう。面倒を避けるためだ。



【彼女は次の場所へ行きました。】

【紆余曲折が、とても沢山の紆余曲折と艱難辛苦がありました。】

【自身について、世界について、たくさんの事を"記憶の中の"彼女は知りました。】

【ですが、私が会話している彼女は、やっぱりおかしな状況です。】



このゲームがメタフィクションの類だと言う事は、ゲームをプレイする前から分かっていた。

意図的な、不穏な表現。様々なゲーム内外の資料、公式の見解。


大規模なもう一つの現実であると。

そしてそれに相応しいだけの作り込みがなされていると。


瑕疵は無いわけでは無かった。

追加のコンテンツ、シナリオの供給は前述したように遅れた。

致命的なバグもあった。


でもそんな事は関係ない、二重の意味で。

私にとって、これはゲームであるという見解は一切揺るがなかった。

私にとって、これは大切な作品であるという思いは募る一方だった。


そしてこのゲームが創作された目論見通り、私は彼女にドハマリする事となる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る