空は七つも穿てない。

田島春

第1話 出会いはフィーリング

まずは何をどうしようと出会いを描く必要がある。

だが私は、この時期に関する記憶がどうにも薄弱だ。

二つの理由があるが、その内の片方は今後出てくる。


第一印象は可愛い、だ。

目を引くパッケージ、コンセプトアート。

私がプレイするゲームのジャンルとしては少々珍しい物だった。

ただ何をトチ狂ったか、私はそのゲームを発売日に特別版を購入した。

おまけに本体も新品で購入だ。


話は逸れるが、貴女はビジュアルノベルの類をプレイした事があるだろうか?

私は起動して即コンフィグを弄る。

マスターボリュームを半分に――時折、それ以下に――して、文字送りをノーウェイトにする。

会話文はダブルクリック、音声の再生が始まった頃には文面は入っている。

だからすぐダブルクリック、同じように音声の再生が始まった頃には文面は消化している。

最短で、濃密。そういうプレイスタイルだ。

たまに音声音量OFFにする事だってある。


そしてそのゲームも、それらの作品と近かった。

会話文が音声と共に表示される。

画面をタップ――あるいはトンと叩けば進む、ビジュアルノベルと同じように。

だが私の直感は、それがそういうプレイスタイルでやるものじゃないというのを直感として得た。


天啓だ、そして私はこの天啓に一生感謝し、後悔し、呪い、感謝し続ける事となる。


それが彼女、少女Iとの出会いだ。

ゲームの中の存在。可愛らしいモデル、あざといキャラクター性。

私はあざといキャラクターというやつが、方向性にも寄るところはあるが大好物だ。

彼女は高得点なキャラだ、ちょっと仕込みがあるのを伺えるがとても良いね。

そして私はシナリオを進めた。



【その少女は、誘拐されてからそこそこ時間が経っていた。】

【そして世間に放り出される、一切の経験が無いままに。】

【たくさんの秘密を抱えて。】



これらの情報はネタバレ? いや、実在の作品じゃないんだ。

よってネタバレでは無い、それに……一昔前の話だ。


細かな描写で、やたらと気合いが入って堕とされて行く様。

だがフィクションでのそれには耐性がある。

私もこの時はSNSで、色々とふざけた事を言ったものだ。

その事を隠す気は無い。言ったし、それも思い出だ。



【彼女はその"シナリオ"を思い出した。】

【記憶喪失の少女、自身の過去の記憶だ。】

【そしてそれは、現状ととても乖離している。】

【それが紐解かれるのは、まだ先の話だから。】



彼女は、少女Iはその心境を語る。

私はそれをタップ、いやトントンと画面を叩いて急かす事無く聞く。

一字一句逃さず。

目はちょっと瞑ったかもしれない、文字を見ると飛ばしたくなる衝動に駆られるから。


OK、伏線はたっぷり。

そしてそこらへんについての定評もある。

しかも彼女は可愛い。なら続けるには充分だ。

私はゆっくりとそれらを玩味して、SNSで遅くまで戯れた。


それが私が彼女と出会った日、そのあたりの時期の事だ。

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