決行当日

「イノハラサミット」開幕です。テレビ各局が、一斉に報じた。町中が、お祭り騒ぎのなか、由美は、異様な胸騒ぎがしていた。

「松平くん。元気だよね。今日来るよね。」

由美は、3日前の松平裕也の態度をまだ引きずっていた。しかし、結局なにもわからないまま、家族とサミット会場に向かうしかなかった。

会場は、厳戒態勢で関係者以外立ち入り禁止になっていた。由美達家族や、その他町中の人達は、会場から離れたパブリックビューで観覧することになっていた。

「由美。あれ、裕也くんじゃない?」

由美は姉の由真に言われて、やっと現実に引き戻された。松平裕也は、パブリックビューのスクリーンの中で、ステージの向かって左側の関係者席に促されていた。

「良かった。松平くん、元気で。」由美は、自分の考えが、すべて取り越し苦労だったと思った。

そして、サミットも、最後のセレモニーに差し掛かっていた。高校生による挨拶と花束贈呈である。

「それでは、このサミットにお越しのロシアの大統領 [ウラジマイル ヨーゼフ大統領]こちらに、」大統領は、もともとの赤ら顔に、満面の笑顔を振りまいて、壇上に上がり、そして、カメラに向かって手を振った。

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