その時

「この国の若者を代表して、松平裕也くん。挨拶と、花束贈呈よろしくお願いします。」

司会者の声に、松平裕也は、凛とした表情に変わった。

「はい。」彼の手には日本をイメージした花束が施されていた。

「ウラジマイル ヨーゼフ大統領。私達は、あなたをお迎え出来たことを誇りに思います。ここに、日本の若者を代表して、花束を贈りたいと思います。松平裕也。」松平裕也は花束を手渡し、そして右手を差し出した。「日本型パンドラ12号。今だ」ドミニーク大尉は、テレビの前で大きく叫んだ。

彼の右手には、VX ガスの入った毒針が仕込まれるはずであった。

松平裕也と大統領は握手を交わした。町中に歓声が響きわたった。

「日本型パンドラ12号。日本型パンドラ12号。どうした?何が起きたのだ!!」

ドミニーク大尉は、座っていた椅子を蹴飛ばし、天井を見つめながら膝から砕けおちた。

「軍曹!! 12号を抹殺せよ!!」

それから、数日後、東京湾に、少年の死体が上がった。

そして、ロシアのクーデターの記事が新聞にあがる事は一度も無かった。

松平裕也がサミット後、行方がわからないまま11月になり、黄色に染まった坂道を、由美は、相変わらず遅刻常習犯として、遅刻の言い訳を考えながら走っていった。

                終わり

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