第5話

♦️新崎智樹視点


あの後、なんとか復活した宇佐美さんと一緒に帰り、自宅の自分の部屋に入る。


デスクチェアに座り、教科書が入ったリュックを乱暴にデスクの上に置いてしまう。


そして今日、自分が仕出かした事を、すでに真っ赤になった顔をしながら、思い出す。


まずは図書室での事を。


(そう!!!彼女の指を咥えたんだ!あの細い指を!きめ細かい肌の指を!柔らかい指を!!大事な事だから何度でも言う!!俺は奈々の指をパックンしたんだーーーーー!!!!!)


椅子に座ったまま両手を握り締めそのまま天高く突き上げ、ガッツポーズをする。


(更に帰り道、赤い顔をしながら俺の腕に抱き着てきた奈々が、上目遣いをしながら、「だめかな~?」は最高だった!)


(勝負の事なんて頭の中から既に無かった、可愛くて可愛くて仕方がなかった!だからつい頭を撫でて「奈々は、いつも可愛いな。」と言ってしまった!素直な気持ちがそのまま出てしまった、あぁ~最高だった)


「可愛かったな~~。」との言葉と共に【ボン】と体を真っ赤にし、両手で顔を隠し悶えた。




♦宇佐美奈々視点


「ふにゃ~~♡」


奈々は自分の部屋でベッドに座り指を見詰めていた。


「この指、智樹君にパックンされちゃった♡」


顔を真っ赤にし、うっとりした目をしながら、思い出す。


図書室で指を咥えられた事、帰り道で腕に抱き付いた事、勝負に出た、上目遣いで「だめかな~?」は会心の出来だと思ったのに。


まさか、返して来るなんて。


(頭をナデナデは気持ち良かった~その後の「奈々は、いつも可愛いな。」は、卑怯です!)


あれを出されたら確実に負けちゃいます。


(・・・・・だけど、また言って欲しいなぁ~)


と考えていたら、自然にパックンされた指を唇に当ててしまった。


【ボン】体まで真っ赤にし、慌ててしまうと同時に口を開けてしまう。


「あ!」


と思ったが遅かった、指をパックンしてしまった。


布団に倒れこみ伏臥位ふくがいのまま枕で顔を隠し、足をバタバタさせ悶えた。


※伏臥位、腹臥位とも表記され、俗にうつぶせと呼ばれる、また会陰委えいんいとも呼ばれる、ウィキペディア調べ。


勝負ナシ 両者悶え死

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