騒々しい少女
この土地はいい。耳障りな騒音、雑音、人間関係で悩むことはない。例外はいるが。
すぐ近くにため池があってそのまわりを一周するのが老犬との散歩コースだ。
午後二時ごろ、二十分かけてようやく折り返し地点。気温は二十度近くまで上がっているとの天気予報だ。
「…地球大丈夫か?」
そんな小言をきくのは犬一匹。平日に人だかりのないベットタウン。
一般的に会社で働いているだろう時間にこの男はいったい何をしているかというと
世界平和を祈っていた。
冗談だ。
ようは都会の喧騒が嫌になって祖母の家に転がり込んでいたのだ。
姉(きょう)弟(だい)の姉は大阪に、弟はここ、香川で暮らしており亡き両親の家に家族で住んでいる。独り者の男にとっては祖母の家が落ち着くのだ。
「のど乾いたなぁ。コンビニでも寄って帰るか。おい、犬行くぞ。」
「へいへい。」と犬は後をとことこ軽快な足取りでついてくる。
さらに十分ほど歩いたところで近くのコンビニに立ち寄った。
犬を近くの手すりにつなぎ中に入った。二月なのでさすがに冷房はしていなかった。
雑誌を読んでいる女に出会った。この女を俺は知っている。
二軒隣の娘だ。
俺のことを見るなり、すぐに大きく手を振ってきた。
「先生!こんにちは!」
礼儀正しいのはいいが、少々ボリュームが大きい。年はそうだな…
あの不愛想な三軒隣の娘くらいか。小柄だが元気がよく人懐っこい性格のようだ。
「奇遇ですね!先生とここで逢う(あ)のは初めてじゃないですか?」
「いや、たいがいコンビニで会うぞ。」
「てへッ☆」
あざとい。この生物にはあまり関わりたくない。疲れる。
「じゃ、俺はこれで。」
そそくさと飲み物を購入し立ち去ろうとする。
「待ってください!先生!今日こそ稽古をつけてください!」
うるさい。またに聞こえそう(・・・・・・)に(・)なるだろが。
「わかったから。また今度な。じゃあな。」
「はい!ではまたお会いしましょう!」
男は振り向きもせず手を振り、そそくさと歩き出した。
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