11月 猫村さんはヲタになりたい
猫村は気質的、性格的には間違いなくオタクタイプなのだけど、マンガとかアニメのようなカルチャーの熱心な愛好家という意味での「オタク」ではありません。
マンガは、子どもの頃から読んでいませんでした。ゲームやアニメは、小中までは人並みに楽しんでいましたが、高校受験くらいで離れてしまいました。
いまはゲームもしませんし、フィギュアもキャラクターグッズも円盤も買いませんし、コスプレもしません。かといってそれら以外のジャンルのコレクションなども特にしてません。
継続的に見てるアニメは「エヴァ」くらいでしょうか。
成人後にマンガは読むようになったのですが、数はわずかです。漫画雑誌は読まないし、いま単行本が出るたびに買っているのは、浅野いにおさんの「デデデデ」だけかな。
今思えば、これは、十代後半くらいに、いろんなコンプレックスみたいなもののせいで、オタク的カルチャーを避けて通っていたからだと思います。
ただでさえ内気で、ぎこちない人間関係しか作れないのに、この上みんなからオタクと思われたら……みたい気持ちも、正直ありました。
でも、そうじゃない自分もあり得たのかもしれません。
最近になってそう思うのです。
たとえば地元の共学の高校に行って、絵は下手でも漫研が何かに入ってたら、もうちょっと早く人づきあいの経験も積めただろうし、多少は恋愛っぽいこととかも、無くはなかったかもしれません。
学校帰りに異性の友だちと自転車に二人乗りして本屋に行ったり、とかね。たとえばそんなの。
生来の気質は変わらないだろうけど、少なくとも人格形成の道筋は、ずいぶん違っていただろうと思います。
でもけっきょくわたしは、どのジャンルにもはいれませんでした。オタクにもなれず、他の何にもなれず、そして、まったく、ほんとうに、なんでもない人間のまま大人になりました。
多少なりともまともな人間みたいになるために、少しずつ、ひとつずつ、その遅れを取り戻そうとしてきたのが大人のわたしです。小説とか、こんなエッセイを書くことも、そのプロセスのひとつなのでしょう。
わたしの人生、失敗かなあ。
考えてみれば、人生におけるいろんな選択ミスや過ちはほとんど全部、ことごとく、わたし自身の臆病な性格に原因があったんだよね。あれも、これも。
でもまあ、今さら別の自分に生まれなおすわけにもいかないし、生きてる間はこれでいいことにしましょう。時間はかかっても、そのせいで損をしたとしても、いろんなことが手遅れで、取り返しがつかないとしても、今さらだけど、自分なりに、本来あるべきだった形に少しは近づいてきてると思うし。
◆ ◆ ◆
「ちょ、猫村君、スピード出しすぎ!」
「猫村さん、もっとしっかり、両手でつかまって」
「……こ、こう? でも猫村君、いやじゃない? わたしなんかと……」
「いやじゃないよ。むしろその逆って言うか……//// ほ、ほら、そんなことより猫村さん、今日は『超法規的魔法砂委員まぬる☆はにー』の新刊発売日だよ」
「いっけなーい! 忘れてた! よーし、このままマヌル堂書店へGOよ、猫村君! 急いで急いで! ほらもっとペダルこいで!」
「わっ、あぶない、猫村さん、さっきと言ってること逆……」
「だってだって、初版限定でマヌルンのグッズがついてるんだよ! 猫村君もマヌルン推しでしょ?」
「いや僕は、特にマヌルン推しというよりは、基本的に眼鏡萌え属性で……」
「眼鏡……萌え?」
「あっ、いや、いやいやいや、二次元の話、あくまで二次元の話だから」
「だ、だよねー。わ、わたしみたいな三次元の眼鏡ブスじゃ萌えないもんねー。あは、あははは」
「ね、猫村さんは、ブスなんかじゃないよ! むしろ…そ、その、逆って言うか……////」
「えっ? や、やだもう、からかわないでよ猫村君……////」
なんてね、そんなこと言いながら、この世界には存在しなかった、可能性過去世界の猫村さんと猫村君は、ママチャリの二人乗りで県道を駆け、遠く平成の彼方の光の中へと去って行くのでした。
◆ ◆ ◆
【おまけ】
今回のテーマにちなみ、自分がいつもやらないことを試みてみようと思い、イラストを描いてアップしてみました。下記のURLの近況ノートから、リンクを開けばご覧いただけます。
(URL)
https://kakuyomu.jp/users/nkdmnr/news/1177354054934973438
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