interlude 5

「あ」


 ん。どこだここ。


『どうも。沼の姫君』


「うわっ」


 なんかでかくておおきくて変なやつがいる。


『ここは神域で、わたしはこの世界の神です』


「あ、ども」


 神か。異世界転生だから、なんでもありなのか。


『ようこそ、この世界にお越しくださいました。同人の神よ』


「は?」


『あ、いや。ここにね。見てこれ。戸籍謄本なんだけども』


「え」


 戸籍謄本あんの。


『あなたね、なんか現実世界で同人誌に金を落としまくって凄まじい貢献したらしいじゃないですか』


「あ、はあ、まあ」


 買って読んでただけ、だけど。


『それなのに親族も仲間もなく』


「え、それ関係ある?」


 同人以外、なにもなかったってだけですけど。


『夭逝なさって』


「あ、死因は何だったんですか?」


『寿命、とありますが。その若さでなんともいたましい』


「へえ。天寿まっとうしたんだ私」


 なんかうれしい。


『というわけで、あまりにも不憫なので、こちらの異世界で引き取ったというわけです』


「そうなんすか。あざす」


『現在の生活に満足ですか。不自由はありませんか』


「あ、はい。なにひとつ不自由なく、幸せですはい。同人さえあれば、ぜんぜん」


『ああ、これは重傷ですね』


「重傷?」


『わかりました。では、ちゃんとあなたには幸せになっていただきます。ご意見ご協力、ありがとうございました』


「あっ、ちょ、待っ」


『同人界隈のあなたへの感謝は延々と語り継がれて伝説になってので、どうぞ今後とも、この異世界をお楽しみください』


「うわあ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る