第2話 記憶と運とお金がない男

 さてこれからどうしようかと思索する。王都にきたのはいいけれど、お金もなく記憶もない、ましてや運がないのが、僕だった。


 「まずは、何とか働き口を探さないと、まずいですよね……」

 

 といっても、知り合いなんているはずもなく、厳密にいえばいるかもしれないけど覚えてないので頼ることもできないだろう。

 

「というか、ハロリアさんがいってた、サーミラ城ってあれのことですかね」

 

いい考えが浮かばず、王都の景色を眺めていると、遠くに立派な城が見える。王都の立地が関係しているのか、どうやらサーミラ城は王都の中心の高台にあるようだった。

 

「よし、ひとまず片っ端から当たりに行きますか!

大丈夫、王都は広いらしいし、こんな僕でも雇ってくれる人はいるはずです。」

 

そういって、自分を鼓舞する。こうして僕の就職活動が幕をあけたのであった。


             王都 昼

 「くそっ…!!、みんな僕をばかにしやがって!!!!」


近くにあった噴水がある公園のベンチに座る。結果言うまでもなく惨敗だった。力仕事もできず、そして、物事の常識を知らなかった僕は色んなところで厄介払いをされてしまったのである。


 「いろんなところを、歩き回ったせいで、お腹も空いてきたし、このままだと本当にまずいですよね…」


 正直言えば楽観視していたのだ、ハロリアさんに助けてもらったことがあったからなのか、王都にもいい人がたくさんいると、淡い期待を抱いていたのだがこの結果だ。

 「まだ、昼ぐらいだし、がんばりますか!」

 

新たな希望を胸に立ち上がろうとしたが、なぜか力がはいらない。やっとの思いで立ち上がり、一歩、歩こうとした瞬間、頭が真っ白になる。やばい貧血だぁ!思考がゆっくりになり、地面に倒れこむ。頭を打ち付け僕は気を失った。

  

 



 どうして記憶をなくしたのだろうか?そもそも記憶というのは失くせるものなのだろうか、本当は思い出そうとしている記憶はハナからないのではないだろうか。

   もしくは、最初から記憶は失ってはないんじゃないか?

 僕は知る必要がある。なぜ記憶を失ったかをそして、なぜ、あんな場所で目覚めたのかを


 「ちょっと、アンタ、ねぇ!!起きなさい、ねぇ起きなさいってば!!!」


 誰かの声が聞こえる。僕を呼んでいるのか、意識がはっきりしない。どうにか眼を開ける。僕を呼んだ声の方を見ると、赤髪で赤目な女の子がいた。ミディアムの赤髪で血のように赤かった。キリッとした赤目で僕を心配そうに見ていた。

 

「あの…えっと…助けてくださりありがとうございます?」


 やっと、思い出してきた。そういえば僕は立ち眩みがして、そして、倒れたんだ。ということは、この子が僕のことを介抱してくれたのだろう。またしても僕は人に助けてもらったのである。しかも、僕より年下の女の子に助けてもらうとか不甲斐なさが極まってるなと、内心自分に嫌気がさした。


 「なんで疑問形なのよ!!、というか別に助けてないし!!たまたま通りすがっただけだからね!!」


 僕がガッカリしたのを気づいてか、何ともぎこちないフォローをしてくれる。買い物中だったのだろうか、紙袋に果物などがたくさん積んであった。


 「もう大丈夫なら、アタシはもう行くからね!!、もう行き倒れないようにしなさい!」


 そういって、立ち去ろうとする女の子。急いでいるのか、ものすごい速足で歩く。

 その時、僕のお腹が悲鳴を上げた、食べ物見たせいか、それとも時間が立って空腹を思い出したのかどっちかわわからないが


 「っつ!!、はいアンタこれ上げる!!」


 腹の音が聞こえたのか、さっきの女の子戻ってきて、果物を差し出してくれる。女神がここにいる。ハロリアさん、女神がいました。


 「いや、さすがにもらえないですよ。助けてもらった上に食べ物をもらったら、僕は男として何か失ってしまいます」


 でできたのは、感謝の言葉じゃなく、僕のちっぽけなプライドと意地だった。


 「どうせ、アンタお金もってないんでしょ、王都で生き倒れるし、第一お金持ってなさそうだし!!見栄なんてはっても、腹はふくれないでしょ…」


 僕のプライドは呆れられたような、女の子の一言でズタズタにされる。たしかに、ここで意地をはっても、僕が飢え死にするだけだよな


 「本当にありがとうございます。この恩は一生忘れません!!」


そういって、彼女から果物をもらう。とっても赤くてみずみずしい果物だった。


 「じゃあ、私は本当の本当に行くからね!!、もう倒れても助けてあげないからね!!」


 僕が果物を受け取ったのを、確認すると、そそくさとこの場を立ち去ろうとする、女の子。本当ならお礼をしたいのだが、無一文なので、心の中で感謝していよう。というか、恩返しをしなくちゃいけない人が増えていってるな。女の子を見送り、もらった果実を食べる、なんていう食べ物だろうか


 「ものすごく、甘くて、おいしいですね、これ!」


腹が減ってるのもあるのか、はたまた、親切にされたからなのか、この赤い果実がとても甘くておいしい。僕は涙を流しながら食べ続けた。


 「よしっ!!、今度こそ職を手に入れて見せる、そして、あのおいしい果実をたくさん買えるようになろう」


 やるべきことが決まった、そしてやる気もある。男は堂々としてないとハロリアさんにも笑われてしまう。


こうして、第二開戦のゴングが鳴ったのである。

 

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