第21話 グレイと土産話
私達はついに結ばれてしまった…。
ノアさんは普通に愛してくれたし嬉しかった。
ベッドで腕の中に包まれていると
「ヴィオラのウエディングドレスを買いましょう…きっととても綺麗に違いないので…誰もいない教会で私達2人で式を挙げましょう…」
「うん…楽しみだわ……料理が作れなくてごめんなさい……私の料理は人を殺める寸前料理だし…いい奥さんになれなくてもいいの?本当に?」
どうしよう、私これ捨てられないかな?本当に。ダメなとこばっかり!!
「ヴィオラ…料理なら全部私が作りますし家事も全部私が!生きがいのようなものですから気になさらずお世話されてください!!世界で一番愛して…」
と言いかけ、ノアさんは止まった。
「どうし…」
と問いかけたらモガっと口を塞がれノアさんは窓を見て冷や汗を掻いて停止している。
そちらにギギっとゆっくり首を振ったら…
なんと言うことか!!
窓からなんとあのグレイが!?覗いている!!
私もギョッとしてもはやちびりそうになった!!
おい、甘い空気どこいった!!?さっきまでいい感じだったのに、恐怖しかない!!
この後グレイが室内に乗り込んで拐われて魔石を胎内に!?いやもう魔力あるし!!
その生物はジッとそこから動かず私達も石みたいに動けず時間がコチコチ過ぎてグレイと私達は見つめあったままだ。
ていうかグレイ一体いつから見てたんだ!?
…まさか最初から!?
…あれの中身館長じゃないよね?
館長だったとしても怖い!ここ2階だし!!よじ登って行為を見る変態じゃないか!!
どうしよう!!
と思っているとグレイは次第に透けてきてフウっと消えた!!
「ひっ!!」
と私は思わずノアさんにしがみ付いた。
のそりと下着を履いたノアさんは窓にゆっくり近づいて確認を始めた。
そろりと窓を開けて見渡すが誰も居なかったみたいだ。
「いません…なんらかの魔力も感じない…普通の魔力持ちなら感じますがアレは何も感じませんでした…」
「じゃあ…やっぱりグレイ…」
「知りません…何かです…」
とノアさんはガクガクと震えた。私の所に戻ると毛布ごと抱き寄せた。
「ヴィオラ…あまりアレの研究はしないでくださいね?アレは解明できませんから!」
と言う。
「う、うん…辞めとくわ…何か言い知れぬ恐怖しかないわ。関わったら私達解剖されそうだもの」
「怖いこと言わないでください!」
「うん、もうここに旅行に来るの辞めましょうね」
と私もノアさんに縋り付いて私達は震えながら眠った。
その後なんか眩しい光りがチカッと発光して遠ざかって行ったのを布団の隙間から2人で眺めてまた恐ろしくなった。
*
転移魔法で床に模様が現れてどうやらご主人と従者が戻ってきたみたいにゃ!!
アタシはタタっと駆け寄った。
「ミラ!!ただいま!!」
「ご主人!!従者!!お帰りにゃ!!」
とアタシを抱き上げるご主人はいつも以上に異常にモフる。ちょ、激しくないかにゃ!?何か恐ろしいものでも見た時みたいに執拗に触られる。
すると従者も
「ヴィオラ!わ、私も早くミラちゃんを触りたいです!!」
とか言い出したにゃ!?なんにゃこいつら?一体何があったにゃ!?従者はお嬢様呼びじゃなくなってるから2人はついにやったにゃ!?それはいいにゃがなんにゃ?
従者もアタシを可愛がるのがもはや尋常じゃないにゃ!!何か怖いものでも見たように時折震えているにゃ!!
「何かあったにゃ!?」
と聞くと2人は真っ青な顔になった。
「き、聞きたいですか?」
「本当に??ミラ…」
何なんにゃ!?
「化物でも見たかにゃ?」
と言うと2人とも
「「ひっ!」」
と言う。
そしてご主人達はポツリとグレイとやらのことを話始めたにゃ…。
話終わると…
袋から首輪を出して
「これよ…これがグレイ…」
と首輪に付いてる頭が大きい昆虫みたいな目玉の化物を震えながら指した。
「ヴィオラそんなの買うんじゃ無かったですよ!」
「その時は面白いかなって思ってたのよ!!でも…あれがまさかだって…窓の外から覗いてるとか…!」
「ああ、もう辞めましょう怖くなるので!!」
と従者も怯えた。
「そんにゃ化物従者の魔力でぶっ飛ばせばいいにゃ?」
「いや、あれは魔力とかのレベルでは倒せないと思います!私の中の何かがアレと関わるなと告げてきたので!!」
「もうやだ!怖い!」
とご主人も震えた。思い出したくないのにゃね。
「それより良かったにゃ!2人ともようやくくっ付いたにゃ!!」
と言うと今度は赤くなったにゃ!判りやすい奴らにゃ!
「ノアさんが…どうしても結婚してって言うからぁ…」
「え?ヴィオラから言いませんでした?」
「何言ってるのよ、私がそんな恥ずかしいこと言うわけないでしょ?貴方が床に這いつくばってお願いしたのよ!」
「ええ!?なんかよく解りませんがそんなことになってる…ことでいいですよ…」
と従者は折れた。
どこまでもご主人に甘いにゃ。
「他にもミラちゃんも食べれる美味しい海産物のお土産もありますよ」
と従者はコトリとマジックポケットからお土産を出してくれた!
「やったにゃ!従者スキにゃ!!」
と喜んだ。そして……今度はマジックポケットからなんと傷ついた雄猫を取り出した!!
「にゃ!?なんにゃ!!そいつっ!!どっから持ってきたにゃ!?」
もはやグレイの話より驚いたにゃ!
「今朝方帰ろうとしたところ喧嘩したのかボロボロになって路地裏に倒れている所を私が拾ったの。この子も飼おうと思ってね」
にゃにいいいい!!?
「ヴィオラの頼みなら私も断れなくて…ミラちゃんすみません。とりあえず軽く手当てはしますが、この後獣医に連れて行ってきます」
と気絶した猫の手当てをして従者は転移魔法で獣医に行ったようにゃ。
「飼うとはなんにゃ!?ミラに黙って!!ミラは用無しかにゃ!?」
「何よ、別にそんなこと言ってないじゃない!怪我をして倒れていたのがたまたま目に着いたから放っておいたら死んじゃうと思って…」
「野良にゃよ?そういう運命だってあるにゃ!全く考えなしはこれだから嫌にゃ!とんだ土産にゃ!ミラの食糧もヤツに分けなきゃいけなくなるにゃ!しかもナワバリもこの家はほとんどミラのものなのに!!アイツが目覚めたら誰がボスか教えてやるにゃ!!」
とアタシは息巻いた!!
従者は再び戻ってくると茶トラのそいつは首に傷口を舐めないようにする器具をつけられて滑稽な姿で眠っていたにゃ!
プッ!
目が覚めて惨めな自分を恥じるといいにゃ!!
「この子名前何にする?ノアさん…あ、この子にも翻訳魔法かけておいてね」
「解りました。ヴィオラ…。名前はこの子が元々あるかもしれないので本人に聞いてみるといいでしょう。では私は昼食でも作りますね」
そう言うと従者は惜しげもなくチュッとご主人にキスして、もはや完全に甘ったるい空気にゃ!
ご主人も従者がキッチンに行くとだらしない顔になりでへへと言ってるにゃ。溶けたスライムみたいな顔にゃよ。
茶トラはまだ眠っているにゃ…。
「ノミとか寄生虫とかいないにゃ!?野良はいろんな病気持ってるにゃ!?」
と心配すると
「大丈夫よ…ノアさんが魔力でサッと綺麗にしてくれたわ。ノミなんかいないわよ!」
と言ったから一応は安心した。移されたら大変にゃ!
チラチラとアタシは茶トラの様子を見るがまだ眠っているにゃ。死んだんじゃないにゃ?
ちっ!早くここのボスを教えてやらないとにゃのに!猫社会は厳しいにゃ!!
「ミラ…そんなにこの子が気になるの?ふふ、ミラも夫が欲しいって言ってたもんね!」
「なっ!違うにゃ!こんな野良なんてお断りにゃ!従者!ちゃんとミラの旦那は血統書付きのにするにゃ!冗談じゃないにゃ!!」
と剥れた。
「ミラちゃんがそう言うなら…」
と従者が言うと…
耳がピクリと動き、ようやく茶トラは目を開けた。
黄色い目でいかにも野良にゃ。
「…………俺…ここは…」
と喋り見渡した。知らない家に知らない人間にアタシを見て匂いを嗅いだりをしていた。そして首についているものに気付いた。
「ふっ!滑稽な姿に気付いたかにゃ?アタシはミラにゃ!この家のボスにゃ!うちの主人がお前の命を助けたにゃ!存分に礼を言うにゃ!」
と言うと茶トラは無視した。そしてまたクタリと眠った。
なっ!なんて失礼にゃ!!
「ミラ、きっと傷口が痛いのよ…静かにしてあげて」
「そうですね…。お腹が空いているかは解りませんがちゃんと用意しておきましょうね」
とご主人達は労った。こんな失礼なヤツに!!
ふん!ミラはもう知らんにゃ!!
それからもご主人たちはイチャイチャしたりして結婚式がどうとか話し合っていたにゃ…。
茶トラはその間ピクリともせず眠っていたにゃ。
*
次の日、私は愛しいヴィオラにキスして
「では行ってきます!ヴィオラ!」
と職場の人に渡す土産を持ち転移魔法を発動させる。
「い、行ってらっしゃいノアさん!お仕事頑張ってね!」
と可愛らしい笑顔で私を見送る!!天使っ!!
と思いつつ、幸せを噛みしめた。
ルンドステーン邸に転移し、お土産を持ち私は休暇明けに使用人達にそれぞれ土産を渡していく。
「ノアくん!休暇明け待っていたよ!仕事また溜まってるけどよろしく頼むよ!!」
「はぁ…」
少しはやって欲しい!!
「ああ、でも珍しく旦那様が頑張っててちょっとだけ楽になってますよ…?」
「え!?アクセル様が仕事したんですか!?そんな!!」
と私が驚いていると使用人の休憩室にアクセル様が現れた!
「おお!ノア!戻ったか!!ここ教えてくれよ!」
と書類を持ってきた!!なんと言うことだ!!本当に!!
「アクセル様…仕事を!ついに!!」
と感動していると
「もういいよ!お前が休暇に出て使用人達が全員そんな反応だよ!俺だって仕事するわ!!」
と膨れた!
アクセル様にもお土産を渡す。世界の美女の絵画特集だ。
「おおっ!これはいいな!!よくやった!ノア!」
「奥様に見つからぬように」
と笑う。
他の使用人には女性には主に石鹸や髪紐…裁縫道具などだ。お菓子もたくさんある。
シェフには異国の調味料を贈り喜ばれ、庭師の弟子には洒落た靴を上げた。前からずっとお洒落な靴を欲しがっていましたしね。
庶民でも洒落た靴を履いてるとモテるらしい。
久々にアクセル様が仕事を頑張り、奥様も上機嫌だ。来月には茶会を開きご婦人会を開く予定だ。奥様も私にこの1週間でアクセル様と今まで以上に仲良くなれてお礼を言われた。
「ノアがあの人に言ってくれないと私本当に貴方と浮気してもいいかと思っていたわ…」
「それはご遠慮します」
とキッパリ言うと
「ノアも上手くいったようね?私判るのよ。童貞じゃないわねもう」
と見抜かれた!!
なんなんだこの女の勘というのは。恐ろしいですね。
「まぁおかげさまで…」
と少し赤くなる。
「ならいつ結婚するのかしら?呼んでいただけるわよね?」
「いえ、それは…2人きりで挙げたいし、彼女もきょ…極度の人見知りで人に会いたくないとのことで」
と誤魔化すと
「まぁ転移でもいつか会わせて欲しいものだわ…」
と言われる。困ったな。会わせたら逮捕されるかもしれない。
そんな私にアクセル様は声をかけた。
「もういいだろう?エルサ…お仕事が終わったらじっくり相手をしよう!待っててくれハニー!」
と人前で熱烈キスし、
「よし、仕事だ!ノア行くぞ!」
と執務室に連れられる。
「凄いやる気ですね…」
「まあな、ひと仕事した後にヤルと物凄い快感になることに気付いたんだ」
仕事終わりの酒みたいに言うな!と思ったが黙っておく。
「なぁ…ノア…仕事の前に少し話をしようか?」
書類の山を分けながら私はアクセル様がどこかニヤリとしていることに気付いた。
「話とは?」
「お前の女のことだよ…。そいつって…例の行方不明になった元俺の婚約者…ヴィオラ・ロニヤ・ハーグストランド伯爵令嬢だろ?」
と言い、笑う。
一瞬ビクリとしたが直ぐに平静を装う…。
「なっ…何のことでしょうか?」
「腹割って話そうぜ!ノア!俺のことはアクセルと呼べ!困ってんなら相談くらいしろよな!昔から薄情な奴だお前は!友達じゃないか!」
と言う。
私は…はぁ…と息を吐いた。
もう…ここまでか…。
私はアクセルに全てを話した。
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