本時間

 薄暗い黄昏時の空間。


 受付台で本のページが色の薄い指に捲られた。


 そばに鎮座する呼鈴が触れられて呟く。


 音は僅かに開いた窓の外へ吸われていった。


 紙が揺れる。


 本棚の間を風が吹き付けた。


 埃が幾度も床に円を描く。


 棚に垂れる栞紐も静かに踊る。


 風を受けとめた終点。そこから漂う匂いに彼女が顔を上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

400ss 笹霧 @gentiana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ