刺さる棘 その3

 

「君が豊本さん」


 男の声がした。初めて聞く声なのに怖くない。辛うじて動く首をほんの少し傾ける。私の部屋の襖は開かれていて、二人が私を見下ろしている。一人はお母さん。もう一人は……誰。


「お邪魔してしまいましたか…………そうですか。ありがとうございます。先生にまた頼まれるのは目に見えてますから、そう言ってくださるのはありがたいなぁと」


 少し馴れ馴れしい男だな。そんなのに寝顔を見られるのは……ちょっと、恥ずかしい。


「起きなくて良いからね。もう帰るから。またね」


 彼はお母さんと何かを話している。楽しそうな姿を久しぶりに見た。

 封筒をお母さんに渡した後に足音が遠のいていく。

 どんなヤツか気になるのに……意、しき。

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