刺さる棘 その2

 微睡の波が寄せては返す。私の意識は浮き沈みを繰り返していた。手が思うように動かない。手だけじゃなくて足も口も。反応の乏しい、力の入らない体。これは、言うなれば魂の束縛。

 なんてね……。私は今意識を持っている。起きれるかな。

 動く思考と動かぬ体。指先が僅かに震えるだけだった。

 ま、そうだよね。今日は何曜日……今日は何月の何日……だろう。

 頭の中は霧に少しずつ侵食されていく。考えていることを長く保つことはできない。でもせめてと瞼に力を込める。日付ぐらいは確認することは続けたい。もうこれ以上落ちるのは嫌だった。

 音が鳴る。何度も、同じ音が鳴っている。

 この音、なに……時間切れかな。

 辺りで足音がした。光が満ちる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る