愛の逃避行

 こんな所まで来ちゃいましたね。


 腰まで届きそうな程髪を伸ばした彼女が、目を合わせながら悪びれた様子もなく言う。


 間延びした声で話すのは達観しているからだろう。


 笑って彼女は言った。


 あなたが悪いんです。あなたが私をあれほど求めるから。だから、殺されるまでの愛の逃避行、お願いしますね。


 彼女が手を重ねた。照れながら彼女を見る。


 微笑むが今までと変わらない態度。


 選ばれたのに愛されているのか不安になる。


 それを見透かしてか彼女は肌を積極的に触れ合わせている気がした。


 簡単に不安になるが、簡単に彼女の色香に溺れてしまう。


 視線が下から上へスライドする。彼女の魅力、デリケートな部分から目が剥がせなかった。


 そして目が合う。


 熱くなる頬に後押しされて顔を近付ける。


 微笑を崩すことがなかった彼女が表情を変えた。


 照れているのかは分からない。


 赤く見えるのは日差しのせいかもしれない。


 それでも唇を重ねる。


 日の光の下で互いに求め続けた。

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