呼び出し その2

 テーマパークの入口に俺は立つ。


 今日はおしゃれを少し意識した。いつもは地味な格好だから驚くだろう。


 不安の混じった声で呼ばれる。


 振り向くと驚いた顔で固まるあいつが居た。


 動き出すと早口で何事かを捲し立てる様子に、つい笑ってしまう。


 知りませんと背を向けて歩いていくのを俺は追いかける。


 あいつは何かを言っていたのだが聞き取れなかった。




 どうして誘われたのか。


 裏を警戒していたのだが今の所ただ楽しそうに遊んでいる。


 というか、いつもよりずっと楽しそうだ。


 手を引かれてあちこち回っていく。


 時間を忘れて、過去を忘れて、今を遊ぶ。




 あっという間の時間だった。


 並んで座る電車でもたれ掛かって呟かれる。


 俺には返す言葉がなかった。

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