寒空の下で

 目の前の女の子が振り切った手を下ろした。荒い呼吸が彼女の肩と胸を上下させている。


 右の頬がヒリヒリと熱い。


 綺麗な長髪は多少乱れているものの、普段の手入れが行き届いているからか美しさは損なわれていない。ムスッとした唇は怒っていてもなお惹かれる輝きがある。


 コートの襟を引っ張られた。夕日が照らす公園がぼやけて、端麗な顔が視界いっぱいに広がる。


 彼女の瞳は水気を帯びていた。先程まで怒っていたのに今度は泣きそうになっている。


 細身な体をゆっくりと抱き締めた。震えているのを全身で感じながら寒空を見上げる。


 軽い衝撃が胸に走った。髪の質感が薄手のコート越しに分かる。


 首筋から髪をくと彼女が睨んできた。笑うと包んでいた腕を解いて頬をつまんでくる。


 平手打ちをされた痕は痛むけど、優しくつままれているのが分かった。


 手をそっと彼女の耳に添える。先程までしていたマフラーでは守りきれなかったんだろう。冬が手にじんわりと広がった。

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