今と明日

 夕暮れの世界をトンボが飛んでいる。


 見上げた空。散らばる雲。


 1人、公園の中でたたずんでいた。


 音が無い。


 規則的に鳴り響く金属音と、時折通り過ぎる走行音。


 全くではないけど、無音が広がる時間。


 だからなのか。


 隣で鳴いているブランコ。


 人の居ないそれに、胸が締め付けられた。


 止めようとは思わない。


 今、この時間のこの空間、この瞬間が良い。


 ブランコの動きは段々と小さくなっている。


 止まったら動かそうと決めた。


 この時間を続けたい。


 終わるのなんて。


 人の足音に反射的にそちらを向いた。


 分かっていたことなのに、落ち込んでしまう。


 どうしても期待を持ってしまう。


 持っていいわけないのに。


 でも。


 雲から顔を出す太陽を目を細めてじっと見る。


 夕暮れも終わりが近付いていた。


 影が濃くなりつつある。


 目に映る景色に暗がりが増えていく。


 暫くすれば真っ暗だ。


 でも、選んだことに後悔はない。


 街灯が少しずつともり始める。


 夜は世界を包むけど、必ず光は差すから。

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