アザレアとトリトマ

 私のと色違いのランニングシューズがきれいに玄関に並べられていた。


 一緒に買ったのにもうぼろぼろで、色がくすんで土がこべりついている。


 来てくれたことを喜ぶべき、なのに嬉しいとは思えなかった。


 靴を並べて家に上がる。玄関脇の使われていない靴が目に映った。


 学校から帰ると、お姉ちゃんの部屋に男の人が来ていた。


 使い古された日用品。もう何日も主を支え続けた介護用ベッド。


 その傍らで片手を上げて挨拶をする彼。


 腹に力を込めて口角を上げる。


 いつもの、金曜日だ。


 つい吸い込まれていた夕日から目を離す。


 静かだった。


 もう部屋には2人しか居ない。


 姉は窓の外を見つめている。


 儚く崩れ落ちそうな背中。


 抱く気持ちが胸を焦がしていった。

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