呼び出し

 店内の9割5分は女性客だ。


 俺の他に男性客は居ない。


 そんな場違いだと感じる所に俺が来ているのは、目の前で座っているこいつのせいだ。


 彼女の格好はラフではあるが、店の雰囲気に合うお洒落なもの。


 対して俺はジーパンに半袖のシャツ。


 思わず睨み付けると蠱惑こわく的な笑みが返ってきた。


 その笑みに惑わされるように出された白い太腿ふとももに目がいく。


 座らないんですか? という彼女の言葉に、持ってかれていた意識を呼び戻した。


 座りながらもう一度彼女の表情を見ると、俺に向かって何かを期待している顔を浮かべている。


 これはまた、逃れられないな……。


 観念して店員さんを呼ぶ。


 彼女はもうケーキ選びに夢中だ。


 でも時折、ドキッとする顔を向けてくる。

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