第3話、ヘンタイ道具袋と盲目の美少女

『おい、勝手にエピソードタイトルを書き変えんじゃねえよ』

『えーっ、こっちの方がぜったいいいです』

『ふざけんな!ヘンタイ道具袋ってなんだよ。美少女って誰だよ』

『さあ?』


********************************


『さて、どうするかな』


『うちに帰る』


『その前に服を買え。破られて着られねえだろう』


『うん。でも、あのお金、使ってもいいの?』


『服を破られたんだし、痛い思いをしたんだ。当然の権利だ。

だが、この町ではどこからバレるか分からない。

明日の朝いちばんで勤め先に断りを入れて、器の代金も払って引っ越そう。

小さい家を買って、弟と妹が大きくなるまでひっそりと暮らせばいい』


『はい、本当にありがとうございました。

杖を折られた時は、本当に死んじゃおうかって思ったんです…』


『ああ、分かってるさ。

だが、俺がいなくなっても身を守れるように、落ち着いたら特訓だぞ。

この世界って、ダンジョンとか魔物とか冒険者ギルドとかあるのか?』


『聞いたことはありますけど、どんなところかは…』


『よし、冒険者になって、独り立ちするのが目標だ』


『はい』


『おっ、武器屋は開いてるな。あそこで杖を買おう。

できれば、刃物を仕込んだやつがいい』


『はい』


『女性用の服を売ってるようなら、それも買っておこう』


『はい』


カラン


「いらっしゃいませ」


「仕込み杖ってありますか?」


「はい、ご予算は」


「普通はいくらぐらいのものなの?」


「金貨1枚前後が相場ですね」


「軽くて、刺殺用がいいんだけど」


「こちらなんて如何でしょう」


「もっとシンプルで木の杖に見えるやつ」


「こちらは如何ですか」


「いくら?」


「金貨1枚です」


「それと、女性用の衣類はある?

靴、下着、短パン、シャツ、二組もらいたいけど」


「お客様でしたらスモールサイズですね。

これとこれと…こちらで如何でしょう」


「あとは、水入れと鍋、火を起こす道具。全部でいくらになりますか?」


「金貨2枚ですね」


「値引きは?」


「そうですね、銀貨2枚では?」


「ではこれで」


金貨2枚を渡し、おつりをもらう。


「包みますか?」


「いえ、収納がありますから」


「えっ…品物はどこに行ったんでしょう」


「いくらでも入る袋があるんです」


「そ、そんなものが存在するんですか!」


「迷宮の奥で見つけましたの」


「もし、お譲りいただけるなら、金貨100枚出します!」


「もう一つ見つけたら持ってきますよ」


「ぜひお願いします」




『あと、弟たちに食べるものを買ってもいいですか』


『お前も夕食を食べてないだろう。

好きなだけ買えばいい。

ほら、そこの串焼きなんか旨そうだぞ』


『お肉なんて、食べたことありません…』



「おじさん、串焼き10本でいくら?」


「10本ならおまけして銅貨8枚でいいよ」


「じゃあ、それください」




「ただいま」


「姉ちゃん、どこ行ってたんだよ」


「遅くなってごめんね。

これ、お土産」


「「えっ」」


「お肉だ…」


「いっぱい買ってきたから、遠慮しないで食べなさい。

私も食べるから」


「なんで、こんな贅沢を…」


「新しい仕事を見つけたの、あちちっ、お肉って美味しいね」


「あぐっ、うめえ!」


「うん、おいしい…」


「泣かないの…、これから、お姉ちゃんが一生懸命働くから、もっと美味しいもの食べようね…」


「ね、姉ちゃんだって泣いてるじゃないか…」



「ゲフッ、姉ちゃん…買いすぎだよ」


「もう、食べられない…」


「そうね、明日のごはんにしようか」


『クリーン』 『クリーン』


「ね、姉ちゃん、まさか見えてるのか…」


「目を開けてないのに見えるわけないでしょ。

でも、分かるようになったの。さあ、寝ましょ。ろうそく消すよ」


「「おやすみなさい」」



神様よう、感謝するぜ。

絶望的だった姉弟がこんな幸せな時間を過ごせたんだ。

襲われたって事実は残ったが、それでもこいつにとっては良かったんじゃないかって思う。

こいつらも、教会に行って神様に感謝するように言うからよ、ありがとな。



チャラリラリン♪


なんだ?


ステータス!


********************

名前:神を崇拝するアミの道具袋

職業:道具袋

LV:7

材質:魔力コーティング綿100%

HP:100

MP:50

スキル:物理的収納++

     空間収納

     形状変化

形状:ひも付き

魔法:サーチ

    身体強化

    治癒

特技:思考

    魔力の調教師

    視覚同調

    生体保護

    念話

    各種障壁

    自己修復

従魔力:ポチ++


********************


障壁や修復の必要な状況になるってことか…

考えても仕方ねえよな。

ポチ、特訓だ!

ワン


ごめんなさい、ウソです。

ポチとじゃれていただけです…


翌日、雑貨店と牛乳屋さんに挨拶しに行った。


「今まで、ありがとうございました。

なんとか、別の仕事につけそうなので…」


「そうか、頑張るんだぞ」


牛乳屋さんには、瓶代銅貨4枚を支払い今日の分を入れてもらう。

一度家に帰り、引っ越し先を探しにいく。


『王都に行くんですか?』


『ああ、まず冒険者ギルドで登録しよう。

それで、家を買うにはどうしたらいいか確認する』


『この姿でいくんですね』


『そうだ、名前をどうするかな』


『表面の色は青ですね』


『ブルーか、いやダークローズでどうだ』


『ダークローズって、どういう名前なんですか』


『色なんだが、ダークは闇でローズはバラだ』


『えっ、バラ…』


『ああ、闇の中のバラだ』


『バラってトゲがあるんですよね…』


『ああ、手を出すと痛いぞって意味もある。

だが、お前は胸を張っていい。弟妹のためにお姉ちゃんとして頑張っているんだからな』


『…そうでしょうか…』


『だからこそ、神様は俺をお前の前に出現させた…、んじゃないかな…と思う』


『そこ…、自信もっていうところじゃないんですか?』


『いや、あんまり自信ないんだ』


『プッ、何ですかそれ』


『だってよう、神様に直接会ったわけじゃないんだぜ。

ちょっと待てよ…、なあ、多少不幸な出来事ではあったが、それでも人間として生きているお前と、突然死んでしまって、道具袋に生まれ変わった俺…

どっちが不幸だと思う?』


『うーん、おじさんかな…』


『おじさん言うな!死んだときの俺は、17才だったんだぞ!』


『えっ、うそ、一つしか違わない…』


『お前、16だったのか』


『ううん、18才。そっか年下か、じゃあ今日からお姉ちゃんって呼びなさい』


『18…、そういやあ、胸もあるし、ケツもでけえな』


『なんか、年下に全身を触られてるって…、やだ、急に恥ずかしくなってきた!』


『触ってねえよ!いや待てよ、俺の前面は袋の内側なんだよな…、てことはだ、なあ、ものは相談なんだが…』


『やだ』


『まだ、何も言ってねえだろ!』


『裸で着てみろっていうんでしょ!』


『な、なんでわかった!』


『おじさんの考えそうな事だから』


『いや、17才だし』


『今度そういうこと言ったら、袋切るからね』


とはいうものの、俺はアミの変化に気づいていた。



「名前はダーク・ローズさんで、ジョブは魔法剣士。年齢は18才で、はい登録完了です。

こちらが冒険者カードで、登録証発行が銀貨5枚になります」


「ありがとう。それと家を借りたいんだがどこに行けば借りられるかな」


「でしたら、2軒隣の商業ギルドに行ってみてください」

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