第2話、道具袋覚醒!

ポチー!

俺は力の限り叫んだ


ワン!

えっ、ポチなのか…

ワン

消えたんじゃなかったのか

ワン

あ、イヌみたいな形になって

もしかして、お前もレベルアップしたのか

ワン

よかった。

ワン


その日の閉店時間になった。


「はい、今日もお疲れさん」


「店長、あの…」


「どうした?」


「このお金で、道具袋売ってください」


えっ!


「そうか。自分の稼いだお金で買うんだな」


「はい」


「一番上のはほこりが着いてるから、二枚目のヤツだな」


えっ…


俺の下から一枚抜き取られた。


そりゃあないだろ。順番守れよ!


「あっ、ほつれがあるな。やっぱり、一番上のやつだ。

多少ほこりがついてるけど払っておくから大丈夫」


パンパン


いてえよ、クソ店主!


「じゃあ、これな」


「ありがとうございます」


「礼を言うのはこっちだぜ、ありがとうございました」


こうして、俺は買われた。

買い主は、目の見えない店員アミちゃん



チャラリラリン♪


これは、期待して良いんだよな…

裏切られるのが怖い気もするが…


ステータス!


********************

名前:同情で買ってもらえたアミの道具袋

職業:道具袋

LV:5

材質:綿100%

HP:25

MP:10

スキル:物理的収納+

形状:ひも付き

魔法:サーチ

特技:思考

    魔力の調教師

従魔力:ポチ+


********************


何だよ同情って。アミの道具袋でいいだろ!

おっ、魔法が使えるじゃん…って、魔法使うとポチ消えちゃうんじゃね?

怖くて使えねえって…

ポチ+って、形が変わったからかな。

収納+って、何がプラスされたの…


俺は紐で口を締められ、アミの腕に通された。

ハンドバッグのようにぶら下がっている。


カッカッカッという音は杖かな。


「すみません、いつものお願いします」


「あいよ。

はい、パン6個で銅貨2枚ね」


俺の中にパンが6個紙袋に包まれて入ってきた。

まだ暖かい。

・・・

カッカッカッ


「すみません、いつものお願いします」


「あ、アミちゃん、今日はまだ容器が戻ってないんだよ」


「えっ」


「しょうがないから、別の容器にいれてあげるけど、明日もってきとくれよ」


「はい、すみません。

じゃ、これで…」


俺の中に素焼きの容器が入ってきた。

コルクで栓をされている。

チャプチャプいってるけど牛乳かな?



「ただいま」


ダダダダダッ


「ご、ごめんなさい…」


「あー、やっぱり割っちゃったの…」


「「うん」」


「怪我はなかった?」


「うん…」


「次から気を付けてね。

はい、パンと牛乳。明日の分もあるんだからね…」


「「うん!いただきます」」


「ちょっと、お姉ちゃんはお店に行って来るから」


「「いってらっしゃい」」


兄弟か、声の感じからすると、5才前後くらいで男の子と女の子。

パン6個で二人の一日の食事、いやアミは店で食事をしていない…

パン6個で3人の一日分かよ…


あ、しゃがみ込んだ。

泣いてンじゃねえかよ。声を出さないようにして…


「お母さん…」


って、親いねえのかよ…


「もう…、ムリだよ…、瓶がないと牛乳も買えない…」


おい!そこまで厳しいのかよ。


「こないだ、袋が破けて瓶を割っちゃったから…、やっと袋買ったけど、また瓶が割れちゃうなんて…」


そっか、杖をついてるから、袋がないとパンと牛乳買えないもんな…


「大丈夫だ、私!二日くらい食べなくても我慢できる!」


おいおい、お前だって15才くらいだろ。

育ち盛りだろう!


「お店に行って、瓶代待ってもらわないと…」


どうやら、来た道を戻っていくみたいだ。


ドン 

「バカヤロー、ボケッと歩いてンじゃねえ!」

バキッ


「あっ、杖が…」


おいおい、どうすんだよ…


「おやおや、ひどいヤツがいるもんだねえ。

ほら立って、杖がないと歩けないだろう。

ほう、これなら…

おじさんが連れて行ってやろう」


何がコレナラなんだ…、おいアミ、付いていくんじゃないぞ!


「イヤッ、離してください!やめて!」 ザワザワ


「騒ぐんじゃないよ」 ドン ウグッ


おい、アミ!どうした!


殴られて、担がれてるのか…


おい、神さま!聞いてるんだろ!

何とかしてくれよ!

こいつは売られても生きていけるだろうが、弟と妹は死んでしまうぞ…


…そうだよな、別にそれほど珍しい事じゃねえよな。

世の中には、もっと残酷な事だっていっぱいあるよな。

この状況で、手も足もでねえ俺って何なんだよ。


「いやぁ、やめて! グッ、いたい、いたい…、やめ…て…」


くそぉ!

絶対にアミの目の代わりになって、非力なこいつをサポートしてやる!


チャラリラリン♪


なんだ?


ステータス!


********************

名前:アミの道具袋

職業:道具袋

LV:6

材質:魔力コーティング綿100%

HP:50

MP:30

スキル:物理的収納++

     空間収納

形状:ひも付き

魔法:サーチ

   身体強化

   治癒

特技:思考

   魔力の調教師

   視覚同調

   生体保護

   念話

従魔力:ポチ++


********************


なんだ、…ホントに目の代わりになれんのか?

あいつの手助けになってやれんのか?

目?

こいつか『サーチ』

おお、周りが見える。

アミ、どこだアミ…

くそお、やられちまったのかよ…だが、まだだ。まだ、生きてる。


『アミ、アミ、聞こえるか』


「いたい…」


『こっちへ来い、道具袋だ』


「どうぐ…ぶくろ…」


『俺を、袋を手に取れ』


「ん、袋に何か入ってるのか?

空じゃねえか、ほらよ」


パサッ


「明日から客をとるんだ、今日は身体をキレイにして寝ろ」


ガチャン


売春宿かよ。


『生体保護』

『視覚同調』

『治癒』


『アミ、聞こえるか、声を出さなくてもいい、頭の中で考えろ』


『はい…どうなって…』


『俺は道具袋だ』


『どうぐぶくろ…』


『目を閉じていても周りが見えるな』


『想像の世界ではなく、これが現実の世界』


『こうやって、俺と一緒ならば見ることができる』


『手が青い布で覆われている…』


『今は、俺がお前の身体を覆っている』


『ここから逃げる前に、お前の能力を確認したい。

ステータスと言ってみろ』


「ステータス」


********************

名前:アミ

職業:雑貨店店員

LV:10

HP:50

MP:100

スキル:気配察知

    闇制御

    飛行

装備:道具袋

   布の服

魔法:氷魔法 LV.1

   闇魔法 LV.1

   身体強化 LV.1

   クリーン LV.5

特技:杖術

   闇の目

   暗転

   影移動

   念話


********************


『これがお前の能力だ。まずは影になっているところを踏んで影移動と念じてみろ』


『こうやって、影移動!』


シュン


『思った通りだ。

ここは影の中で、明るくなっているところが影だ。

すきな所から出られる』


『どこで出るの?』


『その前に、金目のものを頂いていこう。

それと、さっきのヤツが二度と悪いことをしないように懲らしめてやらないとな』


『痛かった…』


『そうだ、子宮の中をクリーンでキレイにしておけ。

こんな事で、妊娠なんてしたくないだろ』


『うん、クリーン!』


『おっ、そこにある金貨を全部頂いていこう』


『どうやって?』


『影の中にあるから、直接掴んでくれ』


『こう?』


『収納!』


『き、消えた』


『俺の本体である、袋の中に収納しただけだよ。

さっ、全部頂いていこう』



『あっ、さっきのヤツだ』


『じゃあ、寝てる側にまわって、直接心臓を凍らせてやれ』


『フリーズ!』


「うぐっ」


5人いたが、全部同じように殺していく。

女の居る部屋は全部鍵を開けて逃がしてやる。


『忘れ物はないか?』


『…パンツ』


痕跡を残さないようにして外へ出た。

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